埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

【小説】さんぽ・まち・かんさい――見晴るかすビル

同人誌に、ボーイスカウトのキャンプに、上長が濃厚接触者……と新年早々いろいろ重なりまして、小説をアップするのにかなり間が空きました。

前記事を貼り付けときます。

 

my-butsu.hatenablog.com

これで4話目です。

3月ってことは、今年一年の四分の一がもう終わったのか……。早いな……。

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 東京スカイツリーという建造物がある。

ビルが林立する都心ではなかなかお目にかかれないけど、どこから見ても目立つため歩いて参ろうかと思いたち、歩けどあるけど着かないので何度か挑戦しては断念した思い出がある。

 

それと比べるとあべのハルカスはかなり目立つわりには、近くにあった。

無論、上町台地清水寺からは1.2kmとすぐ行ける範囲なので当然といえば当然だ。

千里のK大メインキャンパスからもあべのハルカスが見えるはず、とは会長の言だった。

梅田の高層ビル群に埋もれてそうだけど、日本一高いビルのあべのハルカスは群を抜いて高いのだとか。高い建物には人を引き付ける魔力がある。それはどこからでも見られるという要素のせいなのかもしれない。

 

周曰く、メインキャンパスのどこか高いビルに登れば、ハルカスだけでなく梅田の外れにある梅田スカイビル(高さ約170m)も見えるのではないかということだった。

会長が話すには岡山や徳島の山からも見える可能性があるそうだ。高い建物は人の心を惹くのだな……と思いきや当の会長はどうやら地ベタをずっと見ている。

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「あの、なんか見えるんですか?」

 正直、せっかくそれなりの料金(1,500円)を支払って高い場所へ登っているのだから地ベタより地平やら水平線の遠くを見たい、と凡人である自分は思ってしまう。

 

「しーっ。アカンて。会長は今、西の方を見てんねやから。」

ニヤリと意味深な笑みを浮かべると、量産型大学生(←いまいちリスペクトが足らない)こと、広報担当の岸里センパイはそう言い放った。

 

西、というと浄土。つまりヘヴン*1

そんなにいいものが映っているのだろうか。

大阪の西は果てしなく……というほどでもないが、海側なので建物はごくわずかで瀬戸内海と四国くらいしか望めないことは、関東人たる自分でもよくわかっていた。もちろん景色はいいのだけど、地べたともなると話は別だ。

 

「なぁ、こっからやったらコー……公喜くんの高槻キャンパスも見えるんちゃう?」

 周は3度目のハルカスにも関わらず楽しげだった。

1度目は生駒山の向こうの実家が見えるかで盛り上がり、2度目はヘリポートに上がって大コーフンだったと聞いた。

3度も同じところに登ってテンションが変わらない、というのは貴重かもしれない。

 

「もういいよ、コーくんで。高槻キャンパスって山の奥だから見えたとしてもわからないんじゃない?」

どうせだったら、場所を交換してほしい。たかつきハルカスとK大アベノキャンパス。

それだったらヒジョーに便利なのにな。

今以上に勉学に励まず遊ぶ学生が増加することは目に見えてるけど。

 

「ほら!あれ絶対そうやって!!」北東の端にある、一面緑色のこんもりした山を指さして周ははしゃいでいた。

うん、もうあそこ一帯が高槻キャンパスでいいよ。

 

真夏のオープンキャンパスで汗を流し、駅から40分ほどかけてようやくたどり着いた山奥のあのキャンパスは「めっちゃアルカス」にでも改名してほしい。

中に入ってからも無駄に広いし。高所にあり、緑が多いから涼しげなのは唯一の救いか(駅から歩きさえしなければ)。

 

「ほぉーっ、まだ夜には早いのに居るなぁ」

「また"飛田"観察ですか」

 会長がずっと西の方を見ていたのには理由があったようだ。いつの間にやらゴツい望遠カメラを持ち出している。

飛田……ダメだ京王線の駅しか出てこない。飛田給。農民に飛びながら田んぼを配給したのが地名の由来、と小学生の頃に聞いてほうぼうに嘘を撒き散らした記憶がある。

*2

 

「そういや飛田、って何があるんですか?」

「あ~、いまそれどころやないから気になるんやったら周クンに聞いてや」

なかなかに冷たい。そんなに惹かれるものがあるのだろうか。

 

「え、ボクですか……?あんまよう知らんのですけど」

「かいちょー、俺も実は詳しく知らんので教えてくださいよ〜」

含み笑いを浮かべながら岸里センパイもわざとらしく同調する。

 

見つめ合うのに夢中なカップルを除き、ハルカス300展望台の他のお客さんから明らかに怪訝そうな目で見られている気がする……。

飛田って気軽に話題に出せないマズいところなのだろうか。

 

「ま、端的に言うとアレやな、遊郭やわ」

平然とした顔で会長は、東京でも吉原とかあるやろ?と続けて言った。

 

たしかに吉原は時代劇にも出てくるので有名だけど、東京都民とはいえ自分は行ったことがない。ましてや日本一高いビルから遊郭が見えるなんて考えもつかなかった。

 

「ここら一体は明治時代までは元々、墓場のすぐ近くで、畑もある田舎やったから、まぁあんまし人の集まらんようなとこやってん。そんなとこに南の大火で商売場所を失った難波新地の遊女を移して……まぁスラムクリアランスの一環やな」

 

日本一高いビルからは新世界、いわゆる大阪のシンボル的な通天閣や梅田のビル群、瀬戸内海を眺められるけど、ここが元々そんな場所だったなんて想像もつかなかった。

しかも、遊郭が未だ残っていてそれを見られるなんて。*3

 

 時計を見るとすでに17時まで残り10分。ちらりと横目で見ると、望遠レンズをのぞき込むのに夢中な会長の様子から悟ったのか、岸里センパイがこのあと合流するサークル仲間に連絡している。どうやら決起集会とやらは延期するようだった。

向こうはむこうでキューズモール内のSHIBUYA109阿倍野店を冷やかしたり、Yogiboに全体重をあずけることに夢中だったようで、18時30分に新宿ごちそうビル前に集まることになった。

 

「ゴメンなあ、女子に会えるの楽しみにしてたと思うけど、しばし天空の景色に酔いしれててな」

どういうテンションのもっていき方なんだ。

 

「運いいとあべのべあに会えるらしいわ」

スマホから今しがた仕入れた情報で岸里センパイがフォローしてくれた。

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きっと壊滅的にフォローが下手くそなだけでいい人なんだろうな。

「あと、あべのべあって星空と夕焼けバージョンもあるんやて。ええよなあ」

スマホから顔をあげてニッコリと笑う岸里センパイに、「はあ」とひきつった笑顔しか返せない自分は、きっと壊滅的にコミュニケーションが下手くそなんだろう。

 

 とりあえず会長と岸里センパイから距離を置くため、展望台の北側へ向かう。

ちょうど周もいるみたいだ。助かった。

すでに展望台を一周してしまっている周はテンションがやや落ち着いたのか、はたまた会長の近くにいたくないのか、天王寺公園の方面をぼんやり眺めていた。

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「んー、いつ来てもハルカスは東西南北、どこも遠くまで見えるなぁ。にしても、こっから見ると通天閣めっちゃ小さいわ」

「あんな小さいのに子どものころ通天閣に登った時は大はしゃぎしてたよね」

 

 ……周は昔から高いところが好きなのかもしれない。

小学生の頃、夏休みに通天閣へ登ったときは周の祖母の家がある生駒山まで眺められることに感動したものだった。

しかし、「通天閣」の約3倍の高さの「あべのハルカス」に登ったら、いかに通天閣の展望台が低かったのか思い知らされる。

大阪万博の象徴である太陽の塔、四国と本州を結ぶ明石海峡大橋、北東に見えるのは京都タワーだろうか?天気が良い日は見られるとあるが、ひょっとしたら本当に京都タワーなのかもしれない。

 

 幼少期の思い出を語り、空を眺める二人がいる一方で会長はひたすら地べたリアンであった。

人は高いところに登ると、世界を手に入れたかのような傲慢さに酔ったり、遠くを眺めて遠い昔を思い出したりする。

でも、ここですべきなのは空虚な酩酊に浸ることじゃない、空を眺めるのは記憶の引き出しを開けるためじゃない……。今……この時を生きるため何ができるか考え、そして未来を切り開くにはどうするか想いを馳せるためなんだよ……!

 

そんな感じのことを言いながら会長はカメラを覗き込み一定の範囲内をウロウロしていた。遊郭覗きというデバガメ根性丸出し行為の瘴気を隠すために、あえてポエミーな言葉を吐いていたのかもしれない。

完全に逆効果だったけど。

 

 会長のすぐ横にいたはずの岸里センパイはいつの間にかいなくなっていた。

後で聞いたところによると、一緒にいると通報されそうなので、頃合いを見計らってヘリポートツアー

www.abenoharukas-300.jpに参加して「ハルカス〜!300~~!(なんのこっちゃ)」と絶景を見て絶叫していたそうだ。

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 高所で何をすべきなのかは人による(なぜか高いところに来ると叫びたくなるのは共通?)としても、大阪湾に沈みゆく夕陽を望めるのはいい気分だった。

 

「今日は夕陽丘行ったけど、なんやかんやビルも多いし“見晴るかすビル”あべのハルカスで沈む夕日を見るのが一番いいかもね」

と笑いながら右横にいる周に話しかけた。

 

返事がない。

 

「え、何なん……?」「こわ……」「行こーや」

 いつの間にか自分の隣には女子高生3人組がいたようだ。

そうだね、3人できゃいきゃい言ってるところに急に笑いながら話しかけられたらビビるよね。周は展望台をまた周遊してるのかな。前世は回遊魚だったのかもしれない。

 

ハルカス300に登り、大阪市内で夕日をみるならココ!という有益な情報と、自分の笑顔はおそらく爽やかな部類ではない、という悲しい情報の2点を得られた。

 

「コーくん、そろそろ行くよ〜。もうすぐ18時10分やし」

「うん……。だね、ここも出禁になったら困るし……」

 幸い(?)アホみたいにゴツいカメラを持ち徘徊する男、と女子高生に話しかける事案発生、という情報はあべのハルカス側に共有されなかったようで、このあとも何回かあべのハルカスには登ることができた。朝・昼・夕・夜……、あべのべあの模様のとおり、時間帯によって違う顔を見せる天空の展望台は、時間に都合をつけられる大学生としては高いけどいい暇つぶしスポットなのだ。

 

 

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「全然こーへんな、会長」

「だから言うたやないですかァ、こっちから迎えに行かないとダメやって」

「アンタ1時間前くらいに、どーせこーへんからAZUl寄ろうて言うてなかった?」

「いや~、たいして時間つぶせへんかったですね」

新宿ごちそうビルはあべのキューズモールから徒歩6分の位置にある飲食店街。

17時集合のはずが18時30分集合となり、時計はちょうど18時28分を指していた。

 

「私たちだけでもお店に先に入ったほうがええですかね?」

 

「うーん、せやんな。入ろか」

「そしたら会長から余計にお金貰いましょ、遅刻代くらい貰わないと割に合わへんもん。そうですよね?副会長!」

「アンタのそーゆーとこ、尊敬できひんけどすごいと思うわ」

「……そりゃ、どーもォ」

 

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ここが新宿ごちそうビル。思い切り壁面に新宿と書かれていてクラっとくる。ここは間違いなく大阪アベノなのだけれど新宿と書かれているのだ。

まあ駅近くに闇市の跡みたいな飲み屋街があって雑多な雰囲気を湛えつつ、再開発によって最新の施設が隣接する様は似ていなくもないけど。

 

「ここ、散歩サークルって聞いたけどそんなサークルにも女子部員いるんだね」

「なんやかんや散歩という目的さえあれば、なんでもできるからかもしれんね」

会長の機嫌を損ねることがないようヒソヒソ声で話す。

 

 壁のようにそびえる新宿ごちそうビルに当初の30分以上の遅れで着いたKKKK男子部員は女子部員からの無言の圧力を感じつつ、地下の某居酒屋個室に腰を据えるのだった。

 

 ああドキドキする。

自分と同じく何も知らずにつれてこられた、という風の新入女子部員と目が合い、思わず会釈する。

周も少し緊張気味だ。男性陣は会長がテキトーだからか弛緩しきった雰囲気だったけど、女性陣は眉間に若干しわを寄せるボブカットの女性(のちに副会長と分かった)を筆頭に若干「怒り」の満ちた雰囲気であった。

 

 とにもかくにも、自分にとって初めてのか゚顔合わせ・入部体験の話は、今になって考えると緊張しすぎにも思えるけど、あまり考える暇もないまま始まったのだった。

 


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・ハルカス300

 言わずと知れた日本一高いビル。東武鉄道東京スカイツリーといい、路線長の長い鉄道会社はランドマークを欲するのでしょうか。

小説中で紹介した通り、ヘリポートツアーをやっているほか、雨の日でもあべのべあ(雨Ver)に出会えるなど工夫を凝らしています。

 

 近鉄百貨店でお買い物→あべのハルカス美術館で絵画を愛でる→展望台で関西一円を眺望→マリオット都ホテルのレストラン・バーで食事を楽しむ

上記これらがすべて一つのビルで完結するというスゴさ(←金欠なので私はマネできません……)。

 

 ふもとには闇市の雰囲気を色濃く残した居酒屋街や、少し足を延ばすと飛田遊郭・あいりん地区のドヤ街もあるなかなかにディープなスポットでもあります。

チンチン電車阪堺電車上町線)の発着駅もすぐ近くにあり、オモシロイです。

 

*1:ちがいます

*2:実際は荘園領主の飛田氏から給された田、というのが由来だという。30%くらいはあたっているのではなかろうか

*3:とはいえ肉眼では飛田新地の様子はハルカスから見えませんが……

はにわ通信 第13号「映画『Love Letter』の感想」

岩井俊二監督の映画『Love Letter』(1995年)を観た。

 

 

岩井俊二監督作品は、大学生のころ映画好きの友人と『リリイ・シュシュのすべて』『PicNic』『FRIED DRAGON FISH』『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観た思い出がある。どれも美しい映像、美しい物語だと思った。

 

最近写真を撮るようになってなんとなく『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』『四月物語』を観て、改めてこの人の映像はすごいぞと感動した。そんな流れで本作を観た。

 

あらすじとしては以下のとおり。

神戸に住む渡辺博子は、亡くなった婚約者の藤井樹に、彼が昔住んでいた小樽の住所へ中学校の卒業アルバムをたよりに「お元気ですか」とあてのない手紙を出す。

すると思わぬことに藤井樹から返信が届く。しばらく文通を続けるうち、相手は藤井樹と同じ中学で偶然同姓同名であった藤井樹(女)と判明する。

樹(女)は文通で藤井樹との中学生時代の思い出を博子に共有する。また博子は藤井樹への思いを振り切るために、友人の茂と小樽を訪れる。

 

手紙のやり取りが続くので書簡体小説のような映画だ。

おもしろいのは渡辺博子と樹(女)を中山美穂一人二役で演じている点。儚げな雰囲気の博子と強気な樹(女)を別人のように演じ分けていてすごい。

 

この作品は藤井樹(男)をめぐるふたりの女の物語なのだが、彼はもう亡くなっている。なので映画の中盤で樹(女)の思い出のなかに中学生の姿で登場するまで謎につつまれている。ちょうど『桐島、部活やめるってよ』で最後まで登場しない桐島の立ち位置と似ている。中心の人物が語られるのみで登場しないことによって物語に引き込まれていった。

 

 

他作品との類似でいえば、偶然から他人同士のコミュニケーションが始まるという点で、濱口竜介監督の『偶然と想像』の第三話「もう一度」と似ている。あちらは元恋人と別人の顔を間違えたという偶然から互いの高校時代の思い出が語られていく。一方で本作の偶然は藤井樹が同姓同名だったことで、ふたりは樹(男)を介して過去の記憶を共有していく。

 

 

私は人と人がコミュニケーションを通じて理解しあう物語が好きだ。そんなことをいったらおおよその物語は該当しそうと言われそうだが、誠実さがポイントなのだ。本作は伝えたいという気持ちと知りたいという気持ちの誠実さが光っている。

 

さて、岩井俊二の映像は本作も素晴らしかった。まぶしい光につつまれる図書室、雪の小樽の風景。ずっと見ていたくなるほど美しい映像の快楽だ。

合わせて音の使い方もよかった。博子に思いを寄せていて樹(男)の友人でもあった茂が、ガラス工房で吹き竿を床に落として博子を驚かせてからキスするシーンは思わずハッとしてしまった。私はこういうロマンティックに弱い。

 

最後に街歩きブログらしく街について述べておきたい。

神戸と小樽という舞台設定が巧みだった。両方とも坂の街で展望が映えるし、文通するふたりに心理的なつながりを与えている。

岩井俊二監督作品は総じて舞台設定がよくて、その叙情的な作風を最大限引き出すようなロケ地で映像が撮られている。『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』のひなびた海沿いの町(千葉県旭市)、『四月物語』の"武蔵野"(幕張と国立)。

 

そのうち小樽に行きたい。

茅ヶ崎と犬

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第一中学校歩道橋。富士山が見える。

 

茅ヶ崎に行ってきた。

叔父が家を買うらしく内覧に同行したのだ。

 

茅ヶ崎にはサザンオールスターズのイメージしかなかった。

行ってみると駅前は美味しそうなごはん屋があって、海岸沿いには屋根の赤い異国風の建物が建ち並んでいた。

 

住んでいる人はみな余裕がありそうで犬を連れている人が多かった。叔父も犬がいる。

昼は犬を連れて入れるレストランで食事をとった。どの犬もぼくより散髪代がかかっていそうだ。

 

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レストランの外で撮らせていただいたよその犬。目力がある。

 

犬を撮るにはコツがいるとわかった。

瞳にピントを合わせないと散漫な写真になってしまうので、瞳オートフォーカスを使うのだ。

ふだんは風景ばかりを撮っているので新鮮な経験だった。たまには人や動物を撮りたい。

 

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ヘッドランドビーチ

 

湘南はもう春を過ぎて夏のような暖かさだった。

夏には人でごった返した江ノ島がニュースで流れるだろう。

 

冬が終わる。

はにわ通信 第12号「放送大学 初めての学期を終えて」

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学生証うp、やってみたかった

こんにちはいそのです。

今までブログに書いていなかったことを告白します。

 

・・・実は私は2021年10月から放送大学で学生をしております。はい。

18歳のときに入学した大学を4年で卒業して、それから就職して、また働きながら大学生を始めたわけです。

 

一度目の大学のときは哲学専攻・宗教学コースでした。今回は「人間と文化コース」で主に文学を学んでいます。え?ほとんど変わらない?バカヤロー、文学が学びたくなったんだ!(←同人誌のだいなもくんの口調を真似したかった)

 

2021年度第2学期に履修した科目は2つでした。

 

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世界文学への招待('16)

「世界文学への招待('16)」はシラバスを読んで知らない国や言葉の文学(現代アラブ文学、クレオール語の文学etc)、興味深い切り口(アメリカ文学と戦争・都市と文学etc)に惹かれて受講しました。

 

これが大当たりで実におもしろかった。

世界文学を読むことは時間と空間を超えた旅で、気軽に海外旅行のできない今こそ読んでいきたいと思いました。

また文学作品は他者への共感を可能にする有効な手段というのも納得で、たとえばアメリカ文学を読んで戦争について考えたり、パレスチナ文学を読んで難民の人の気持ちを知ることができるわけです。

悲しいことに今週24日ロシアがウクライナに侵攻してしまいましたが、もしプーチン氏が世界文学を読んでいれば、少なくとも隣国ウクライナ文学を読んでいればこのようなことは起こらなかったのではないかと思ってしまいます。

 

ヨーロッパ文学の読み方ー近代篇('19)

「ヨーロッパ文学の読み方ー近代篇('19)」は野崎歓教授(フランス文学)が主任講師ということでぜひ受講したいと思いました。

東京大学教養学部が出している『教養のためのブックガイド』という読書案内の本があり、野崎先生はそこで「読む快楽と技術」という文章を書いています。私はこれを読んでもっと知りたいな文学のこと、読みたいな文学作品という気持ちになったのでした。

 

 

全15回の講義はスペイン・イギリス・ドイツ・フランス・ロシア・アメリカを代表する文学作品を取り上げる授業で、大変聴き応えがありました。

 

オーソドックスな文学講義なんて退屈そうと思われる方もいるかもしれませんが、大橋洋一教授(英文学)の熱い語り口、沼野充義教授(ロシア・ポーランド文学)の自由な読み方は知的好奇心を大いに刺激します。

 

単位認定試験ではロシア文学チェーホフの戯曲『かもめ』を読んで、「『かもめ』は悲劇か喜劇か」というテーマでレポートを書きました。私としてはニーナの喜劇ととらえることができると思っています。

 

ドストエフスキートルストイはこれまで読んできたのですが、チェーホフは読んだことがなく、授業で興味を持ちました。実際読み始めるとはちゃめちゃにおもしろく、気がついたら明け方になっていてその日は仕事を休みました。登場人物の語りの魅力、予想のできない展開、多くの謎とすべて語られていない物語。魅力がありすぎる。

 

戯曲3部作はどれも1冊で手が出しやすいです。

 

 

『ワーニャ伯父さん』は映画『ドライブ・マイ・カー』の作中劇ですね。

 

 

 

短編集も素晴らしく、それもそのはずチェーホフは生涯で1000編もの短編を書いている短編の名手なのです。読書体験の原点が星新一ショートショートにある私としてはこのうえない喜びです。

 

表題作「馬のような名字」は電車のなかで読んではいけない

 

というわけで初めての学期を終えました。

単位も無事認定されておりました。

 

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来期の授業、今後の読書が楽しみです。

はにわ通信 第11号「アニメ平家物語(のはずが脱線しまくり)」

みなさん、ごきげんよう
島鉄です。

いきなりですけど、みなさま源平伝NEOって、知ってますか??

あ、はい。知らないですよね。アニメ化もできず、小説も未完ですしね。

そーですよね。下手したら今から約四半世紀前ですもんね。

90年代メディアミックス王(勝手に命名)であらせられるあかほりさとる氏の力をもってしても源平期ブームは起こせませんでした。

 

しかし時は令和、大河ドラマでは『鎌倉殿の13人』
アニメでは平家物語

www.nhk.or.jp

heike-anime.asmik-ace.co.jp


が絶賛放送中

そう……!いまや大中世ブームなのです!!

え?日本史は戦国時代と幕末しか興味がない??
それはもったいない!!

日本史はどの時代も興味深いですが、戦国・幕末と比べて地味〜なイメージの源平期も面白い時代なのですよ。


えー、ここまで書いて勘のいい人ならピンとくるかもしれませんが、絶賛放送中の『平家物語』についての感想というか、雑記です。

あ、冒頭書いた源平伝NEOは歴史ものではなく異能力バトルです。
誰が敵で誰が味方か分からない感じは中世チックでよいです。

 

アニメ『平家物語』とは?


キャラクター原案が高野文子さん。
もう、この時点で私は「えっ?!」と惹かれてしまいました。
この権威主義者!と罵られてしまいそうですが、私は高野先生の短編集が好きなんです。

 

 

個人的には『絶対安全剃刀』に収録されている「田辺のつる」、という話が好きです。
私の親が介護職だからというのもありますが、自分のことを幼い少女だと思っているおばあちゃん(=ツル)が主人公として登場します。義娘(嫁)や息子、孫から疎んじられながらも、年齢を超越した少女性を見せるツル。他人(読者目線)なら可愛いおばあちゃん、なのですが身内ともなると反応は違ってきますよね。


なかなか開けようとしない孫の部屋のドアをノックして、先程まで子供帰りしていたツルが、それまでの人生(結婚、育児、夫の自殺未遂……)で経験したことを思い出しながら呼びかける一コマはグッときます。


閑話休題

 

「800年の祈りの物語」、というコピーも秀逸ですし、国語の授業中ヒマすぎて国語便覧に並ぶ装束や王朝文学・戦記に思いを馳せていた学生時代を思い出します。

ああ、『平家物語』がアニメ化*1されたらどんなふうになるのかしらん。

ちなみに原作は古川 日出男氏訳の河出書房新社刊行『平家物語』です。

www6.nhk.or.jp

 

好きなポイントと主人公


とゆーわけでアニメ『平家物語』には期待しつつ、裏切られたらどーしよー、とゆー恐怖を抱き、ある程度話が進んだ時点で(小心者)視聴しました。

 

……まずオープニング曲と話がリンクするの、卑怯すぎません??
こんなの好きになりますよ!!少なくとも私は。

 


www.youtube.com

 

少し溜めて流れるサビ。ボルテージの上がる曲調はもちろんのこと、歌詞がよい。

“何回だって言うよ、世界は美しいよ 君がそれを諦めないからだよ”

”最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても、今だけはここにあるよ”

 

時代に翻弄される登場人物たち、現代人として結末を知っている悲哀な物語、しかし現代にいたるまでその物語が連綿と語り継がれている事実……。

過去がどうあれ、未来が暗くとも今、この時はたしかに存在している……。

 

このお話の主人公はオリジナルキャラクターの琵琶法師の娘*2びわです。


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元々の『平家物語』は作者不詳。12世紀末、後鳥羽院の治世に信濃前司行長なる僧侶が書いた、とも言われています*3

なかでも「語り本」とよばれるものは琵琶法師による平曲*4、平家鎮魂の唄かつ源平合戦のオーラル・ヒストリーです。

この主人公、びわオッドアイ右眼のみで対象を見ることで未来(さき)のことが分かります。

……!?!?!

未来のことが見える眼……というのは突拍子もない設定のように思えますが、つまりは現代に生きる源平合戦の行く末を知る私たちの視点に限りなく近いわけです。


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現在五話まで視聴したのですが、「いつ死ぬかなー」と思っていた推しキャラの平重盛が四話で退場。
権勢を誇る平家(=清盛一門の伊勢平氏)とそれを疎んじる朝廷、間に挟まれて苦労する平家の次期棟梁たる重盛……。
まさしく中世の武家政権発足の転換期を象徴するのが、この時代。

 

時代(と実の父)に翻弄される重盛はただただ可哀想。中間管理職の悲哀といいますか、父清盛と血筋のいい弟の宗盛、朝廷を代表する後白河法皇の間に立たされるのはキツいですよね。胃が痛くなりそう。


史実と少し異なるところも『平家物語』にはあるのですが、スタンスとしては驕る平家代表が清盛、良心的平家代表が重盛となっています。


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一方、父を平家に斬られながらも、重盛の下で暮らす主人公、びわ。重盛の子供らと遊びながら、琵琶を用いた語りシーンも交えて淡々と諸行無常の中世の世界観を現代に伝えてくれます。


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また、「桜、蛍、紅葉、厳島神社で水に遊ぶ」……と場面で季節のうつろい、時代が徐々に変化していくさまが分かるのも、このアニメの魅力です。美しい絵巻物のよう。


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もっとも、成長していく他の人物と異なり、びわの姿は変わりません。ここも気になるポイントですね。


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徳子を通じて描かれる世界


藤原家が天皇外戚として権勢をものにしたように、清盛も娘である徳子を入内させ、天皇外戚として権力を握ろうとします。

 

劇中で、徳子は”びわ“が姉のように、母のように慕う聡明な女性として描かれています。
徳子の「お父様は私のことを駒としてしか見ていない」という台詞で漫画『応天の門』の藤原高子が基経に反発するシーンを思い出しました。


外戚政治に嫌気が差す女性側の反発といえますね。
また史実はどうあれ『平家物語』で入内した徳子と高倉天皇との間になかなか子ができず、徳子が子を授かっても天皇は側室の子を可愛がる、など二人のすれ違う場面が描かれます。


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幼いびわに向かって「私は、許して、ゆるして、ゆるすの」とその苦しみを吐露する徳子。


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高倉天皇には安息の場所が必要であることを理解している聡い徳子は、それ故に苦しみながらも、父清盛や後白河法皇も含めて許そうと自分に言い聞かせるように話します。苦しみで満ちているこの世界……でも美しい。

 

平家物語』では屋島の戦いの後、「波の下にも都はございますよ」と亡き清盛の妻である時子が語りかけ、幼帝安徳天皇は入水し、徳子もそれに続きます……。

 

作品中の人物では、びわ以外誰もその運命を知りません。

もう現代人たる私としては先の重盛がいつ死ぬのかハラハラしてましたし、後の安徳天皇が「あぶー」とか遊んでる時点で(死なないで……!)と思ってしまうわけです。

 

ちなみに徳子は入水するも救われ、後に出家しています。『平家物語』では終巻にて徳子を後白河法皇が訪ねる場面も。

 

徳子のみならず、陽気に今様を謡いつつも策を練る後白河法皇や、平家打倒を企てたため流刑され一人だけ許されなかった僧俊寛


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初めての戦に震える重盛の息子・維盛


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など様々な人物の思い、視点が交差する群像劇であることも、アニメ『平家物語』の推しポイントです。

 

鎮魂、そして語り継がれる物語

まだ五話までしか視聴していないにもかかわらず、大層な見出しをつけてしまいました*5。でもまあ、『平家物語』が現代まで残っていることは事実です。

 

平家物語』には歴史を伝えるというだけでなく、滅びた平家鎮魂*6のため作られた側面があります。

kusanomido.com

そして山田氏はこのように述べる。

国家にとって『怨霊』が重要な位置を占めていたのは中世までであり、近世以降は民衆の中で恐れられるにとどまった。そして、怨霊が神とされるのは、十世紀以降の菅原道真以降のことである。

『慰霊』は怨親平等思想の拡大とともに鎌倉時代より盛んとなり、室町時代には施餓鬼と結びついて戦乱で亡くなった大量の人の供養が行われた。

以上の2点の指摘を考慮すれば、「平家物語」が成立したとされる時期は、ちょうどまさに「怨霊思想」と「怨親平等思想」のクロスする時代であることがわかる。

仮に「平家物語」の成立に慈円が関わったとして、慈円やその周囲の者の胸中にあったのは「怨霊思想」と「怨親平等思想」のどちらなのか。いやもしくは、その両方であったのだろうか。なかなか難しい問題である。

日本三大怨霊といえば、前述の無念の大宰府左遷となった菅公首塚が未だに恐れられている平将門、武士の台頭を象徴する戦いである保元の乱に敗れた崇徳上皇*7ですね。

 

三大怨霊は神として祀られ、畏れられていました。と同時に「怨親平等思想」があったからこそ、敵方であっても語り継がれた側面もあります。

が、前掲のブログにもあるように時代が下るにつれ、怨霊が畏祀られることは少なくなりました。

中世人は寺院から呪詛を唱えられることを本気で恐れていたのですが、改名するという対抗策を編み出したりしています。

徐々に”まじない“を畏れる意識が希薄化したのですね。

president.jp

アニメ『平家物語』でも強訴する山坊主の神輿に矢を射るな、というセリフがありました。結局命令むなしく神輿に矢が刺さるのですが、その後重盛邸は炎上しており、重盛は神輿に矢を射た罰かとつぶやいています。

この場面は中世人らしいなあ、なんて見ていました。日本史の教科書通りですが、坊さんが神輿を担いで京に降りてくるのは、神仏習合の象徴でニンマリ(全然微笑ましくない場面ですが)してしまいます。

 

さて、では「平家鎮魂(畏れ)」という意識が薄まっていく中でなぜ『平家物語』は時を越えて語り継がれたのでしょうか?

もちろん明確な解があるわけではないですが、私は時代を超越する普遍的な「我々の生きる世界の無常を思い知らされる」要素があったからではないかと思います。

語り継ぐ琵琶法師の存在も大きいです*8

 

天災や戦災は必ず起き、とかく日常はもろく移ろいやすいもので、凡百の庶民から栄華を極める者まですべて等しく時代という大きな流れの前には無力である……。

現代でいうと、コロナウイルスは先進国も途上国も関係なく猛威を振るっています。

 

変異株の登場でワクチンのブースター接種に急ぐ先進国のエゴと、そもそも未接種の途上国、緊迫したウクライナ情勢と平和の祭典たる五輪……現代のニュースを見聞きするだけでも、先のことは分からないので人は翻弄される、と痛感します。

 

先のことについて、アニメ『平家物語』第二話「娑婆の栄華は夢のゆめ」では、びわ白拍子祇王との会話で語られています。


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「いつか、というのは、いい言葉だな。明日、明後日さきのことが楽しみになるの」(中略)「また今度、もいい言葉ね」


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先のこと、を考えると未来に希望が持てる時もあります。

 

一方、徳子の入内で「壇ノ浦の結末」を思い出したびわは徳子を引き留めようとします。

「これからだって会えなくなるわけじゃない。また今度、ね」

と優しく諭す徳子。しかし、びわの目に映るのは激しい潮と、海に沈む徳子の姿でした。また今度、はないかもしれないのです。

 

ここでOP曲の歌詞が頭をよぎります。

“いつか巡ってまた会おうよ 最終回のその後も 誰かが君と生きた記憶を語り継ぐでしょう”

”いつか笑ってまた会おうよ 永遠なんてないとしたら この最悪な時代もきっと続かないでしょう“

 

アニメ『平家物語』の無常観と連綿と語り継がれる物語の重要さ、がこのシーンに詰まっているように思えました。

病の流行、悲惨な二度の世界大戦、関東・阪神・東日本を襲った大震災も多くの命を落とした人がいる中で、生きのびた人がそれを語り、現代に続いています。

多くの人々はまたいつか、を信じて今日も生きているのです。

 

まとまっていないまとめ

散々引用している(JA○RACに睨まれないかな)OP曲「光るとき」の歌詞ですが最後に
”君たちはありあまる奇跡を駆け抜けて今をゆく”
とあります。
 
中世人の価値観は現代人と異なるのですが、物語の中で今に通ずる普遍的な部分があるゆえに語り継がれ、時代に翻弄され散っていった者たちもそのお陰で現代にいたるまで物語の中に生きています。
それはこの時代を生きる私たちもそうなのでしょう。私たちは等しく歴史的存在です。
そして、今この場所にちっぽけでも私たちが存在しているのは奇跡的なことなのです。
 
少し触れるつもりが長々と書き連ねてしまいました。
この文が800年後も残っているわけはないと思いますが(ログインできなくなったmixi日記を消し去りたいです)、時代に埋もれてしまうものを掬いとって受け継ぎたいものです。

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重盛は闇を恐れ、びわは未来(さき)を恐れました。重盛はびわに「闇も未来(さき)も恐ろしくとも……今この時は、美しいの」と語りかけます。
 
冬はその静けさ、活動する生物も減ることから死に近い印象を受けます。しかし、必ず春は巡ってきます。そして雪景色は美しい。
 
たとえ今は苦しくとも、いつか良い日が来ることを祈って、これからを生きていきましょう。
 
 
……あと全然関係ないですが、最近『平家物語』視聴と同時並行で『賭博黙示録カイジ』(限定じゃんけん、鉄骨渡り、Eカードでおなじみ)を読み返しているのですが、こちらは「勝たなきゃゴミ」という非情さがちりばめられているため、脳内が混乱しています。
 
いや、でも鉄骨渡りで「人は勝たなきゃ嘘だ・・・・!俺は敗れた……」と1,000万円のチケットをカイジに託した石田さんに
石田さんは立派に達した・・・・!決して・・・・・・・・決して無駄な人生なんかじゃないっ・・・・!(中略)石田さんの人生は負けじゃない
って言ってたし、人生も単純な勝ち負けではないですよね。
 
あれ?なんの話でしたっけ。
 
とにかく!これからも語り継いでいきましょう、あの時代に確かに存在した者たちの思い、無念、教えを……。
そして、平穏無事な明日を迎えられますように。

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おちゃめな後白河法皇、すき
 
島鉄

*1:映像化自体は大河ドラマあり

*2:でも水干姿で男の子の格好をしている……なんかピンポイントで私の好きなものを狙い撃ちしてる?

*3:吉田兼好徒然草』による。真偽は定かではないです

*4:弾き語りのこと

*5:記事公開時点で六話「都遷り」が関東・近畿広域圏で放送されています

*6:引用のブログでは平家鎮魂も包摂した怨親平等の物語と解釈されています

*7:この戦いで源義朝平清盛が有名になりますが、のちに起きた平治の乱の結果、平家一門が隆盛を極めます。うーん諸行無常

*8:人気演目だから残っている、という側面もあるでしょうけど

はにわ通信 第10号「奥山由之の写真」

写真集『BACON ICE CREAM』を買って読んだ。

代官山の蔦屋書店に特設コーナーが設置されていたのだ。今度新しい写真集が出るらしい。

 

 

著者の奥山由之は映像作家でもある。

米津玄師の「感電」や星野源の「想像」などのMVのほか、ポカリスエットのCMなどを手掛けている。見たことがある人は多いのでは。

 

 

 

 



 

2020年代の文化のなかでこの人の存在はとても大きい。

フィルムの淡い色調やカラフルでポップな色遣いはとにかく映えてエモいし、一度見たら忘れることのできない強い印象を与える。

 

『BACON ICE CREAM』は2015年に出版された。

この写真集からいまのMVにつながる彼の作家性を感じる。

 

色の美しさや光の明暗へのまなざしの鋭さに驚く。

長時間露光で描かれる抽象的な光の軌跡、闇の中でストロボに照らせされて浮かび上がる物の形と色。

 

タイトルになっているBACON ICE CREAMは、表紙の写真のことだろう。

丸くて白いアイスクリームのように見える雲と、四角くて紅白のグラデーションのあるベーコンのように見える光の軌跡。

 

私はこれまで写真に情報や意味をもたせようとして撮っていたけれど、そうでないあり方もあるのだと気づかされた。実際本人はこの本についてインタビューで次のように語っている。

 

何万枚もの写真をネガからプリントし、部屋中の壁に貼って毎日見て、言葉が浮かび上がるものは外していった。

 


言語を超えた感性に訴える写真表現の可能性を探っていきたい。

 

ポンペイ 埋物の都市

上野の東京国立博物館ポンペイ展を観た。

 

 

イタリアのナポリ近郊のポンペイは、ヴェスヴィオ火山の噴火によって地中に埋もれてしまったローマの古代都市。

埋没しているのでこのブログ「埋物の庭」で取り上げるにはピッタリだ。

 

ちなみにヴェスヴィオ火山のあるナポリは、桜島のある鹿児島市姉妹都市の関係にある。

 

鹿児島に旅行に行ったときナポリ通りがあって、不思議に思い調べて知った。

 

姉妹都市は地理や文化の似ている都市同士が結んでいて、意外な組み合わせがあったりするので旅行中はチェックすることにしている。


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トーハクの裏

 

さて、展示は噴火の瞬間存在していた物がそのまま残されているので、当時のパンとか残っていて感動した。


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裕福な人の家にはフレスコ画やモザイク画が飾ってあって、なかにはパンの絵もあった。

当時の人が生活のなかで見て絵にしたものと同じものを実際に自分も見ることができるのはおもしろい。


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猛犬注意の絵を見て現代日本と変わらないと思ったり。


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モザイク画は小さいタイルなどを貼って作られている。精緻で美しい。

 

ナイル川の風景を描いた絵のなかのカバが気に入った。ディズニーアニメに出てきそうなかわいさだ。

 

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肌の色の表現が興味深い。ピンク、オレンジ、赤のタイルと色を少しずつ変えて表現されていて、ピクセルアートと同じやり方なのだ。

古代ローマに転生したらモザイク画職人を目指すことにしたい。

 

(今回の記事はスマホで書いてみました)