埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

尾鷲の雨と火

家の窓の外では雨が降ったり止んだりしていて、山には白い雲がかかっているのが見える。山は雲があるだけでいつもよりも神々しく見えるのはなぜなんだろう。

 

景色を眺めているうちに夏に訪れた町のことを思い出していた。

尾鷲旅行について書きたい。

 

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尾鷲は三重県の南部に位置している。

 

 

和歌山県の新宮は旅行したことがあったが、尾鷲はまだなかったので気になっていた。雨が多くヒノキが特産と小学校の頃に教科書で読んだ。

新宮出身の小説家である中上健次が、新宮が舞台の作品内で

 

いったいその男がどこからやってきたのか、誰も知らなかった。いや、狭い町のことだ。おおよその検討はついた。まず言葉だ。阿田和から木本、せいぜい行って尾鷲あたりらしい訛だった。

中上健次「火宅」『岬』p.77、文春文庫、1978年

 

と書いているので、どうやら新宮からは一帯として認知されているらしい。

調べみると三重県的には「東紀州」という地域で扱っているようだ。このあたりは行政区分と文化的な連続性にズレがあるのかもしれない。最近読んだ『新しい日本地理』が地域区分を批判的に見ていたことを思い出す。

 

kumanokodo-iseji.jp

 

尾鷲へは、京都からだと近鉄で松阪まで行き、松阪からJRの紀勢本線というルートになる。紀勢本線は本数がシビアで、ああ紀伊半島に来たなあという感慨があった。

 

尾鷲駅

 

紀勢線。新宮方面は12時台を逃すと次は15時台…!

 

今回はゲストハウスに泊まって2泊3日を過ごした。追々書くが、人を巻き込むパワーのあるオーナーさんのおかげで尾鷲を満喫することができた。

 

海沿いを歩いていると海上保安庁の船が停泊している。海の水が深い緑色なのが熊野灘ってかんじだ。いやどうだろう、日本海もこんな色かも。

話が飛ぶが先日Xで、『釣りキチ三平』の矢口高雄さんが画で海と川を描き分けているのがすごいと話題になっていた。秋田の横手市増田まんが美術館で原画を見てすごいなあと思っていたのでうれしかった。

 

巡視船「すずか」

 

manga-museum.com

 

海上保安庁のキャラクター「うみまる」「うーみん」が「着けるんやりー救命胴衣」と尾鷲弁を話していた。海の事故が118番なのは知らなかったよ。

 

うみまるとうーみん

 

海を背にして陸側を見ると、すぐ山が迫っているのがわかる。尾鷲の町は山に囲まれているのだなあ。

 

山・雲・鉄塔

 

朝ごはんを食べに喫茶店へ。

川沿いの「Cafe Scale」さん。到着するとすぐに激しい雨が降ってきた。

 

北川と山々

 

土砂降り

 

広々としておしゃれな店内

 

ケニアの深煎りと焼き立てのトースト。美味しかった。

 

小学生以来の尾鷲=雨という観念がますます強化されたのであった。

お店を後にして北川沿いを下っていくと、大きなクスノキが見えた。尾鷲神社である。

 

大きなクスノキ

 

尾鷲神社

 

由緒を読むと、ここ尾鷲神社は熊野古道の難所「八鬼山峠」の近くにあり、旅の安全祈願で人気があったそう。熊野古道は伊勢参りと合わせて「伊勢に七度、熊野に三度どちらかけても片参り」というくらい旅人たちに親しまれてきた。ぼくはまだ伊勢×1の熊野×2なのでだいぶ足りない。またお参りしたいな。

 

町のやや外れにある神社から、ふたたび市街地へと戻ってきた。

尾鷲の町はコンパクトにまとまっている。高台にある駅から海へ向かって紀望通りが坂道になって延びており、そこがメインの商業エリアだ。駅の近くにはこんもりとした中村山公園があり、頂上には天文科学館がある。高いところが好きなので登ってみた。

 

中村山公園。避難場所になっている。

 

尾鷲市天文科学館

 

お盆なので休みかなと思っていたら、なんと開館していた。受付にいた係の方が案内してくれて、とても丁寧に望遠鏡の解説をしてくれた。

 

望遠鏡は360度回転して星を追いかけることができるそう

 

焦点距離の異なる2つのレンズ(ニュートン式とカセグレン式)が備わっていて、天体の距離によって使い分けているとのこと。単焦点レンズのカメラ2つ持ちと同じだ。カメラや星に興味を持つぼくの様子に、係の人の解説もますます盛り上がるのであった。

 

観測日誌

 

ご厚意で屋上にも登らせていただいた。海と尾鷲の町を一望できて素晴らしかった。

あのあたりに中継カメラがあるよと教えてくれた。後日、テレビを見ていて本当に中継されていて、これ知ってる!と感動した。

 

屋上からの眺め

 

そんなこんなで昼食の時間である。ゲストハウスのオーナーさんおすすめのハンバーガーショップ「BAKUBAKU」へ。

 

BAKUBAKU

 

店内はアメリカンスタイルな内装で、軽快なミュージックが鳴っていて、クラフトビールも置いてあった。すごく好みだ。テンションが上がってバクバクバーガーと昼からビールを注文。目の前でパティが焼かれて、テーブルに運ばれるとこのビジュアル。awesome!(オーサム!)

 

ハンバーガーと伊勢角ビール

 

昼からお酒も入ったしこの日はのんびりしよう(ゆっくりして紀勢線を逃したのもある)。そういえば時間軸ズレるけど食べ物つながりで、前日夕食の寿司も美味しかったので紹介しておく。

 

紀望通り沿いの華すし

 

食後の散歩に、駅の裏側の国道42号沿いを歩く。車を想定した店舗が多く、地元の人はこっちによく来るんだろうなという印象だ。

 

国道42号。静岡県浜松市から和歌山県和歌山市までをつなぐ。

 

イオン尾鷲店に入って2階のゲームセンターのソファでぼーっとしたりする。

 

イオン尾鷲店。建物2階の窓が丸くてかわいらしい。

 

くおり亭、名前がいい

 

 

パチンコ店のキング観光

 

国道散歩を終えて駅のほうに戻ってくる。ちょうど紀勢線の車両が見えた。そのレアさを身を持って知った一日であった。

 

紀勢線の車両

 

一休みしようと喫茶店を探して歩いていると、ちょうどいいところに発見。その名前は、「磯」。漢字一文字の潔さ、アールデコ調の直線的なファサード。ただならぬ雰囲気をまとっている。

 

磯

 

店内はまさに海のなか。ほんとうに「磯」だ。あの外観からこの内装は予想できなかった。みんな、町の喫茶店にはどんどん入ったほうがいい。

 

スピッツのアルバムの写真みたいに並べられた貝

 

作り付けのさかなくんたち

 

凝ってて世界観あっていいなあ。よく練られたアイスココアも美味しい。

ちょうど放送中のアニメ『さよならララ』が人魚姫の物語なので連想した。セル画調の画面に少女マンガ的なキャラクターデザインのヒロイン。こんな表現ができるんだと驚いた。滋賀が舞台なのも琵琶湖好きの新米京都人としてうれしかった。話の筋は正直後半かなり重いのだが、人と人との関係の苦いところと、だからこそ光る美しいところを正面から描いていて真摯な作品だと思った。

 

goodbyelara.com

 

さて、宿に帰ってきてくつろいでいると、オーナーさんが話しかけてきてくれた。ここは古民家を改装してゲストハウスにしているそうだ。泊まったアーティストさんの描いた絵が描かれていたり、知り合いの人がリフォームをしているようで、見るところがたくさんあり楽しい。

 

ゲストハウスの階段

 

オーナーさんに気に入ってもらったのか、なんと夜の知り合いとの集まりに来ないかと誘っていただいた。すごい展開だ。こういうときは流れに身を任せて飛び込んでみよう!

 

イントゥ・ザ・ミンカ

 

まさか知り合いのおばあちゃんの家に遊びに行くことになるとは。

家は車でしばらく行った三木浦のほうにあり、めちゃくちゃ広かった。探検ができると言っててどういうことかと思っていたら、ほんとうに複雑な構造で、どこがどうつながっているのか把握できない間取りだった。写真は、ここつながってるの?!と屋根裏を身をかがめて進んでいくところ。家はいちばん多いときで20人くらいが暮らしていたそう。

 

実はこの日はお盆の精霊送りの日。それに参加しに来ていたのだと後で教えてもらった。漁港では火が焚かれている。

 

焚かれている火

 

やがて夜も更けてくると、いよいよ初盆の精霊が船に乗せられて、海へと出航していく。西方浄土へ行けるようにと願いが込められている。

 

精霊を乗せた船

 

西方浄土とは、仏教において阿弥陀仏がいるとされる浄土のこと。浄土にはいくつかの種類があり、たとえば近くの熊野では、僧侶が船に乗って南方の観音浄土を目指す補陀落渡海という信仰があった。仏様の違いはあるが、実践としては両者は似ていると感じる。それは海の向こうとこちらが、あの世とこの世、彼岸と此岸という根源的な観念と結び付きやすいからかもしれない。

 

やがて船が沖のほうに行って見えなくなると、いよいよクライマックスだ。供養の花火が打ち上がった。集まっている人々からも大きな歓声が上がる。お盆に合わせて帰省をしている人たちも多いらしい。たしかにこれは盛り上がるなあ。

 

海と花火


素晴らしい行事に参加させてもらった。誘ってくれたオーナーさんありがとう。

 

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翌日。近隣で行きたいところがあるが紀勢線とバスでは難しそうなので、レンタカーで向かうことに。目的地は須賀利町。尾鷲市の飛地だ。

 

 

以前は尾鷲の町から船で行けたそうだ。小さな漁村の町並みをぜひ見てみたい。

 

到着して営業中のスーパーでかつお節を購入する。店主の方に話を伺うと、昔は夜9時頃でも人が来るほど繁盛していたそうだ。それと比べると最近は静かになってしまったという。ちょうど千葉で豪雨があったばかりで、このあたりは津波が心配だとおっしゃっていた。

 

須賀利漁港から山のほうに続く階段が見えた。普済寺だ。登ってみよう。

 

普済寺への階段

 

階段を登りきると、目の前には絶景が広がっていた。

 

須賀利の町並み

 

湾に面して漁師町の民家の瓦屋根が波のように連なっていて美しい。来てよかった。

眺めていると激しい雨。この流れにもだいぶ慣れてきたぞ。

 

普済寺の本堂

 

彫刻が立派で精緻な作りだなあと感心していると、住職の方が説明してくれた。

この本堂は江戸時代に現在の竹中工務店の祖である竹中和泉が大工棟梁として作ったもので、彫刻は名古屋の彫刻師である二代目瀬川治助の作品だそう。往時の町の繁栄と須賀利の人々の願いに想いをはせた。

 

牡丹の彫刻

 

垂木にも牡丹

 

須賀利の町を存分に歩いて、尾鷲へと戻った。旅もそろそろ終わりだ。昼食をとったら因縁の紀勢線に乗ろう。

目をつけていた黄色い看板の「来々軒」に入る。

 

来々軒

 

チャーシューメンとチャーハンセット

 

ゲストハウスのオーナーさんが教えてくれたのだが、実は来々軒は最近アイドルグループ「i-dle」の楽曲『どうしよっかな (Where Do We Go)』のMVのロケ地になったらしい。そんなことある?!

 


www.youtube.com

 

なんなら今回宿泊した宿の古民家もロケ地のひとつになっていた。メインの漁港は尾鷲の南の九鬼らしい。ぼくはそのへんの事情をまったく知らずに訪れたので、旅先がMVロケ地の「逆」聖地巡礼という珍しい体験となった。MVはすごくいい映像だった。尾鷲を舞台にしようと企画した人は見る目がありすぎる。歌もダンスも引き込まれた。

 

京都に帰ってくると夜に五山の送り火が見えた。送り火には、現世に迎えた精霊をふたたび浄土に送るという意味が込められている。三木浦の精霊送りは海で、京都の送り火は山で。お盆には日本のあちこちで、それぞれの形で祖霊への祈りがささげられている。

 

MVの『どうしよっかな (Where Do We Go)』という問いかけが胸に響く。

ぼくは京都に引っ越してきて、こうして尾鷲にも旅行に来ることができた。したいことをしている。次はどうしようか。どこへ行こうか。そう問う自分に向けて、旅を振り返りながら、日々答えていきたいと思うのであった。

わたしはいざいざ奈良派~後編~

こんに鹿~🦌

名誉奈良県民(自称)ながら、奈良県広報担当Vチューバーである奈々鹿さんのことを存じ上げなかったので、挨拶を真似してみました。

奈良派の島鉄です。

 

鹿あるあるについて募集している奈々鹿さん。

しかしながら、一部の奈良市民以外はそんなに鹿あるある詳しくないのでは……?

 

 

my-butsu.hatenablog.com

⇈前回の記事はこちら⇈

 

さて、予約いっぱいの奈良監獄ミュージアムに分かれを告げ、奈良県立美術館で都を感じつつ、地元の喫茶店で明日の予定を占った島鉄は、情報収集も兼ねて夜のならまちへ出かけました。

 

たしか渋い外観ながら、地元の人が集うお店の連なるアーケード街があったよーな……。

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そう、椿井市場です!

奈良市初の公設市場として1920(大正9)年に開設された歴史の古い商店街。

 

かなり古びた外観ながら、今も現役のお店が軒を連ねています。

カフェや花屋兼バー、昔ながらの町中華……と色々なお店があって歩くだけでも楽しいです。

が!

椿井市場、残念なことにこの日はシャッターが全て降りていました。

前は夜もお店がやってた気がするけれど、それは平日だったからでしょーか。

 

フラフラとそのまま、ならまち大通りまで彷徨い歩く島鉄。

途中の角で曲がり細い路地に入ると、リノベーションしたであろうお店がチラホラ。

観光客も地元の人も一緒に楽しんでいます。

外観は古民家なのに、音楽が漏れ聞こえている!

入口にはライブのポスターやフライヤーが貼られていました。

和風ライブハウス。一本路地に入ってみるだけで意外な出会いがあるものですね。

文化の匂いを感じつつ、そのまま歩いていると見知ったもちいどのセンター街へ戻ってきました。

 

おでんと日本酒のお店*1が気になったものの、あいにく小さな店内は既に人でいっぱいでした。

 

く……。奈良は清い水の湧く酒どころでもあります。

せっかくなので奈良の地酒を飲みたいなぁ……。

なんて考えていたときに日本酒は奈良の地酒しか置いていない(?!)とゆーお誂向きなお店を発見!

 

晴朗邸勝手口さんです。

晴朗邸勝手口

なんとHPあり。

HP内に掲示板もあるとゆー、インターネット黎明期を思わせるサイトに口元が緩みますね。

夫婦で切り盛りされている、家庭的でホッとするお店です。

どん。

メニューを見ると、お店オススメの肉豆腐が目につきました。

折角来たからには食べたい。トロッとした餡と出汁がお腹に優しく染み渡ります。

 

看板に偽りなし、春鹿やみむろ杉を始めとして奈良産の日本酒オンリーです。

嬉(女偏に七が三つ)長、金鼓、風の森……。

美味しい!

スッキリした飲み口のものから辛口なものまで、幅広く取り揃えておられます。

 

飲み比べセットもあるので、そもそも奈良の日本酒飲んだことない、とゆー方も楽しめる親切さ。

 

島鉄が毎年奈良県を訪れていることを話したところ、店の女将さんと奈良のお寺と仏像について楽しいトークができました。

 

・奈良といえば行基さん、大学で私度僧と民衆の信仰について研究してました、と話したところ興味深い本を紹介してもらいました。

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奈良出身、建設省の官僚(テクノクラート)として勤めた著者が河川管理の実務者としての視点から行基集団の治水事業を紐解いた、という内容です。

行基について歴史学者や宗教学者ではない方の視点で触れられているのが、面白く感じました。

 

 

・世界遺産に登録された元興寺、実は2つある。世界遺産なのは本堂の建っていたところだけど、塔の建っていた元興寺はいまクラウドファンディングでかつての寺宝を取り戻し再興を図っている話。

prtimes.jp

 

 

・明日どこへ行こうかまだ決めてない、と話したところ7月18日から奈良国立博物館で開催中の『南都仏画展』でボストン美術館所蔵の仏画が里帰りしている(約20年も協議を続けて今回ようやく企画展として実を結んだとか)ことや、仏像館に展示している国内2番目の大きさを誇る吉野金峯山寺の金剛力士像について「この機会に見に行ったほうがええ!」と紹介してもらいました。

share.google知ってて行かないのと、知らないで行かないのとでは大違いです。

教えてもらって感謝しかありません。

 

この他にも修学旅行で訪れた薬師寺で面白い法話を聞いた……という話から薬師寺管長の高田好胤氏のエピソードや、法相宗の別格本山であり薬師寺と深い関係にある喜光寺*2に「晴朗邸会」と称して有志で訪れ交流した地元ならではのエピソードなど興味深く拝聴しました。

カメラやるなら、行基写真コンテストに応募してみて〜、と最後まで色々と教えてくれる楽しい女将さんと、日本酒に合う酒のアテ*3を黙々と作るご主人のいる素敵なお店でした。いやー、来てよかった奈良。うましうるわし奈良。

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……ちゅーわけで奈良の夜を満喫した島鉄は商店街を抜けてホテルへと戻ったのでした。

アニメグッズショップを発見。自由にやれるのが個人店のよさ、ですね

 

翌日6時起床、休日はいつも二度寝していますが、この日は7時半に猿沢の池を散歩するとゆー優雅で健康的な一日を過ごしていました。

東向商店街を抜けて、奈良国立博物館へと向かいます。

昨日教えてもらった『南都仏画展』を見に行こうと思ったのです。

かつての興福寺の広大な寺領にある奈良国立博物館

奈良の仏画、というと奈良時代に描かれたものなのかな?

と思ってしまうのですが、展示としては奈良時代以降の古代・中世までの仏画も多くありました。

平安京遷都後に南都と呼ばれたかつての都である奈良で、寺社が一定の力を持っており全国の仏画の手本とされていた……などその影響力が伺えるわけですね。

 

展示の目玉となっていたのは、焼損した法隆寺金堂壁画の模写*4や春日大社曼荼羅など。

 

NHKスペシャルで紹介された最新の修復技術力。

鮮やかな彩色と細かな金銀の文様を誇る中世の仏像・仏画師集団の技術力。

現代も中世も、文化を支える技術者集団がいたことに思いを馳せることができました。

 

また明治時代初期の神仏分離政策によって、廃寺となった内山永久寺の仏像・仏画が公開されており、これを見られたのは晴朗邸勝手口の女将さんのおかげです。

なんと世田谷のお寺にある八大童子像も展示されていました。

東京から奈良に来て世田谷にある仏像(元は奈良の古寺に安置されていたもの)を見る……頭がこんがらがってきちゃった。

世田谷観音「不動明王ならびに八大童子」

 

奈良時代から中世そして近現代の荒波を越えて散逸した仏像・仏画が展示されている、そんな悠久の時の流れを感じつつ

隣接する仏像館へと向かいます。地下にあるミュージアムショップやレストランを抜ける途中に写真展示がされていました。いまも残る彩色の跡や衣のひだを表現する木彫と金箔(截金文様)にうっとりしますね。

あと地上に出ないで移動できるのがありがたいです。

 

仏像館には小さな明王像からうわさに聞いた日本で2番目に大きい吉野山金剛峯寺の仁王像まで大小さまざまな時代も地域も異なる仏像が展示されていました。

 

仏像好きなら行った方がいい、というアドバイスに従ってよかった。

前も行ったことあるしな~などと思っていた自分、反省。

 

玉眼の入った像は目が生き生きとしていてイイ!

キュートな狛犬もいます。いやあ来てよかったなあ。

うれ鹿🦌 たの鹿🦌 ディアー🦌すき!

……かなり無理がある締めのコメント。むずか鹿🦌(←味を占めている)

 

個々の地下歩道涼しいので、ずっと真夏中はここにいたい

さて帰りますかね。

行基さんの待つ(?)近鉄奈良駅へと向かいます。

途中すれ違う人はほとんどが外国の観光客(ほとんどが鹿にせんべいを奪われていたし、鹿にお辞儀をしていた)でした。

うーむ、奈良がこんなにも国際観光都市になるとは思わなんだなあ。

 

ホテルの整備や町家を改装したゲストハウスが増えた影響もあるのでしょうか。

www.pref.nara.lg.jp対前年比外国人宿泊者数が38.7%増というすごい伸びを見せています。

全国最下位だった宿泊施設数もいまや過去の話。

news.yahoo.co.jp

わたしは奈良派、という方々が全国的いや全世界的に増える日も近い……?

 

酷暑対策で設置されたミスト噴霧装置の下を離れない鹿と水を舐めまくっている鹿を眺めて「観光客がいかに増えようとも、この気にしなさ、ゆるさが必要やな」と思った島鉄でした。

この堂々とした姿がすき 

まあ、観光客のみならず鹿も増えているので地元住民の目線は違ってくるやもしれませんが。

 

サヨナラさんかく、また来て❝しか❞く。

*1:『酒処 蔵』というお店です。名物の肝焼きが有名

*2:東大寺大仏殿の十分の一サイズの本殿から試みの大仏殿で知られる

*3:スパイシーだけど辛くない甘海老の唐揚げ、甘辛い田楽味噌のかかった焼き茄子、熱々プリプリなタコの唐揚げ、優しい素朴な味の菜っ葉と薄揚げのたいたん……etc

*4:クラウドファンディングで法隆寺境内の収蔵庫の改修と収蔵庫の限定公開が呼びかけられていました

引っ越しと暮らし - 設篇

好みの貝殻を見つけたヤドカリはこんな気分なのだろうか。暮らしやすいなあと、引っ越してきた家に満足して日々を過ごしている。

 

ただ不満がないわけでもない。キッチンが少しばかり狭いのだ。まな板を置いて水切りカゴを設置するとシンク横がいっぱいになる。いったいどこにお玉やフライ返しを収納をしたらよいのか。

 

困ってインターネットの海を泳いでいると、同じような悩みをかかえた人は多いようですぐに解決策がわかった。ワイヤーネットである。

 

ルームクリップ、家具の配置などでも大変参考になった

 

なるほど空間を立体的に使えばよいのか。さっそく最寄りのダイソーに行くとニーズを見越したように必要な材料となるワイヤーネット、ポール、フック、結束バンドを並べて売っていたので買ってきた。組み上げてできあがったものがこちら。

 

 

ポールを2本立てて、ワイヤーネットを結束バンドで固定している。耐荷重は心もとないが、きっとまあこのくらいなら大丈夫だろう。こうしてキッチンの収納問題はひとまず解決し、我が家はまた少し暮らしやすい場所になったのだった。

 

さてそんな一件があった数日後、街を散策していてこんなものを見つけた。

 

 

民家の敷地に設置されたワイヤーネットである。

路上園芸の落ち葉を掃くためだろうか、熊手やちり取りが掛けられている。ちょうど自分がワイヤーネットを設えたばかりだったので、同じことしてる!とうれしくなった。

 

ところでワイヤーネットをキッチンに設えることと路上に設えることはどう違うだろう。ずばり家の中か外かだ。キッチンの物は(ブログで公開でもしない限り)他人からは見えない。一方で路上の物は通行する人に常に見られる。

 

私が書いてるこのブログは街歩きがテーマだ。街歩きというのはひとまず「街でおもしろいものを見つける遊び」と定義できる。では実際に街で見つけられるものとはなにかというと、1 土木インフラ(道路や橋など)、2 建築物(ビルや店や民家など)、3 物(車やパンや張り紙など)、4 自然(川や公園など。人の手で管理されたものも含む)と分けることができると思う。

 

ワイヤーネットという同じ物を設えているのに、片方は街歩きの対象になり、片方はならないのがおもしろい。

 

京都でのDIYの1作目。モニターアームを机にクランプ式で固定している様子。机の作り的に当て木が必要だったので、ヒノキの角材をホームセンターで買ってきてつけた。

 

モニターアームに取り付けたモニター。ここでブログ記事を書いているわけである。横のスピーカー台は5年前くらいに豊洲のホームセンターで材料を買ってきて作った。

 

路上園芸は、先の定義でいうと「4 自然」だろう。実はこれまで路上園芸についてあまり関心を持っていなかった。目には入っていたけど、ぜんぜん意識してこなかったのだ。

改めて考えるとそういうものってけっこうあるなと気づく。私の場合、たとえばゴルフや香水についてはほとんど考えたことがない。これまで関心のなかったものというのは、逆に捉えるとそれだけ新しく楽しむことのできる領域が残されているということなのだ。

 

意識して街を歩いてみると実にいろいろな路上園芸があっておもしろい。きっとそれぞれの家ごとにどういう植物が好きとか、どういう雰囲気にしたいとかあるのだろう。これってとても素敵な表現活動だ。

 

背の高いの低いのいろいろ。増えていった歴史が気になる。ビュッフェで食べたいものを全部盛り付けるときみたいだ。

 

ミニマルの美。侘びと寂びの違いがいつもわからなくなる。

 

園芸について、ランドスケープ(地上学)を専門とする石川初さんは本のなかで次のように述べている。

 

園芸の特徴は、栽培される植物が一つひとつ個別であることだ。それは、ここには統一的なビジョンも目指すべき本来の自然も正しい種類の選択ガイドラインもないからである。園芸を営む人は、たんにその場で植物を育てるために植木鉢を置いたり、造園の植え込みの隅に球根を埋めたりする。

石川 初『[新版]思考としてのランドスケープ 地上学への誘い:歩くこと、見つけること、育てること』鹿島出版会、2025年、209ページ

 

 

街路樹や施設などに設置される産業としての「造園」に比べて、「園芸」は個人的な営みであるというわけだ。

 

なので京都御所のこれは園芸ではなく造園。たしかに規模も目的も管理も違う。

 

京都の街を歩いていてなんか穏やかな感じがするのは、一軒家が多く低層高密度な街並みであるのが大きい。その理由には、町家が建てられてきた歴史的な経緯もあるし、建物の高さを規制する制度の存在もある。

 

中心部である四条烏丸のあたりでも、少し路地へ入れば民家が立ち並んでいる。そこには住人たちの路上園芸がある。京都は街角で人々の設(しつらえ)を鑑賞できる街なのである。

 

読みます

引っ越しと暮らし - 食篇

引っ越しは恐竜の絶滅と似ている。

冷蔵庫のなかの食材目線で大げさに言うとそんなかんじだ。

 

前回の記事で京都に引っ越してきたことを書いた。

 

 

読み返すと京都とメディアと映画がテーマだったので、もっと個人的な引っ越しについても書きたくなった。とはいえ住んでいる町について詳しく書くのはすこし抵抗がある。それならば部屋のなかについて書くのはどうか。それならよさそう。

 

近所にスーパーのフレスコがある。京都の地場スーパーである。

 

京都にしかないと思ってたら大阪や兵庫にもあって驚いた

 

いまは引っ越しで空になった冷蔵庫の中身を買い揃えているところだ。RPG序盤の仲間を集めるところみたいで楽しい。

 

せっかくの新生活&京都なので、これまで買わなかったようなもの、京都ローカルなものを買うことにしてみた。

 

米油。和っぽい。サラダ油とどう味が違うんだろうとずっと思っていた。

 

創味のつゆ。創味食品は京都の会社。市バスのラッピング広告をたびたび見かける。

 

引っ越してきた翌日の夜、米油とつゆを駆使して夕食をつくった。

パックご飯に、白菜と豚肉を炒めたものをのせた肉野菜炒め丼である。調理が簡単で、野菜が摂れて、洗い物が少ない。大学生の頃に完成したスタイルだ。

 

肉野菜炒め丼。水色のヨガマットが絶妙に食欲を…

 

調理中、料理酒をいれてフタをしたくなったがまだなかったので代用品を探した。すると、焼酎の一刻者 赤があったのでこれを使うことにした。

 

一刻者 赤

 

できあがり、一口食べて、豊かな芋の香りがした。米油もつゆも脇役になったというかどこか遠くへ行ってしまった。ここはもう一刻者の独演会場。自分はいったいなにをしているんだろうと食べながら考えこんでしまったので、YouTubeで匿名ラジオを流して聴覚で味変してどうにか箸をすすめた。

 

 

創味のつゆはその後うどんや丼物で使ってみると、自分の料理が数段階上手になったと感じるほど美味しかった。上品で奥行きのある出汁の風味。リピ確だ。

一方で米油はいまのところその真価がよくわからない。そもそも油ってどう味わうのだろう。揚げ物しないしな…と考え中である。

 

調理といえば、水道水がなかなか美味しい。飲用水やコーヒーが水道水でいいのは助かる。

これまで自分は、東京、茨城、大阪に住んだことがあるのだが、その中でも上位だ。ランキングにするとこんなかんじ。

茨城(県南) < 大阪(市) < 東京(23区) < 東京(多摩) = 京都(市)

 

茨城の原因はよくわからない。霞ヶ浦の水質かアパートの水道管か。東京がわりと美味しいのは浄水場の性能だろうか。京都は琵琶湖からの疎水のようだ。ありがたいのでそのうち琵琶湖まで水の通り道を歩いてみたいと思う。

 

 

この前京都に遊びに来てくれた友人と水の話をしたら、映画『マザーウォーター』がおもしろかったよとおすすめしてくれた。ジャストで京都の水の話である。近く観てみたい。最後にまた映画の話になった。

 

わたしはいざいざ奈良派~前編~

奈良が好きだ。

なぜ奈良を好きになったのか。

今となっては正直よくわからない。

好きになった理由なんていうものは大抵あとづけだ。

 

……なんて、何かが始まりそうな出だしの文章を思いつくまま書いてしまいました。

ご無沙汰してます、島鉄です。

 

先月ふと「旅行に行こう」と思いたちました。

ボーナスもはいったし、お盆シーズンは混んでるし、リフレッシュしたいし……。

ぼくらが旅に出る理由*1はいろいろありますが、何か居ても立ってもいられないというか、どこかに行きたくなったのです。

 

まあ、奈良県に赴くのは「奈良県連続訪問記録を更新したい*2から」、「近鉄株主優待券を使いたいから」という身もふたもない理由なのですが。

 

そんなわけで、新幹線に乗り込みいざいざ奈良。

my-butsu.hatenablog.com

↑前に奈良へ行ったときの記事です。なら、いい……。

 

いざいざ奈良、はJR東海の観光促進キャッチコピー。

わたしは奈良派、は近鉄の観光促進キャッチコピー。

近鉄のキャッチコピーのほうが私的にしっくりくる。

え、そもそもどちらのキャッチコピーも知らない……?

 

さて奈良県と一口にいっても、結構広い*3です。

寺社仏閣・旧跡は点在しているため、どのスポットに行きたいか事前に決めておくのが無難でしょう。

asukamura.com

↑たとえば、つい最近(2026年8月現在)世界遺産登録された「飛鳥・藤原の宮都」は奈良市から1時間以上かかる明日香村にあります。

 

今回の奈良旅は奈良市内だけを巡る1泊2日の小旅行。

ぶらぶら街歩きしながらお店に入ったり、名所を何か所かまわれたらいいかな。

なんてゆー軽い気持ちでした。

 

……暑すぎるんだが?*4

奈良盆地は熱が籠って暑い。そんなことは分かっていながら7月に来たのですが、冷房の効いた近鉄電車内で体も冷え切っているし、ちょうどええわなとか考えていた自分に喝を入れたい。

 

近鉄奈良駅前の待ち合わせスポットである行基さん像の後ろに、でっかく奈良監獄の広告が!

奈良監獄、以前は外観を見ることしかできませんでしたが、星野リゾートの手によってホテルに生まれ変わったそうで現在は内部も一般公開されています。

hoshinoresorts.com

これは行くっきゃない!

 

とゆーわけで灼熱の太陽の下、約2kmと少しの距離を歩いて向かいます。

なぜ徒歩なのか?

前も徒歩で行ったからです*5。前は雨が急に降ってきたんだっけ……天気に恵まれないなあ。

 

駅前の小さな商店街を歩いて北へ。

この近くに奈良女子大学があります。戦前の奈良女子高等師範学校時代から残る旧本館(記念館)が守衛室・正門とともに重要文化財に指定されているとのこと。

 

ちょっと様子を見に行ってみようかな。

おおー。白い漆喰とミントグリーンのコントラストが爽やかなハーフティンバー建築が目に涼し……いや暑い。

内装も見たいところですが、一般公開は春と秋にそれぞれ1週間のみ。

また文化の日の近くに奈良へ行こう。

 

そろりそろりと進みます。川を渡るとなにかこんもりした山のようなものが見えます。

これは東大寺・奈良の大仏建立で有名な聖武天皇の陵墓です。

せっかくなので立ち寄ってみましょう。

宮内庁の看板がなければ神社と勘違いするかも

……暑い(2度目)。木がないので強まる陽射しをモロに浴び、体力が削られていく実感アリ。

わずかな木陰で涼んでいるおっちゃんを見つけました。特に言葉を交わすことはありませんでしたが、同じことを考えていたと思います。

 

陵墓に遥拝し、なんとかしてあっちい奈良を冷ましてくれるようお祈りしました。

この辺りは住宅街なので、車道が整備されており照り返しで日傘をしていても暑いです。ただ、不思議なことに陵墓が近くにあり、木々が密集しているからなのか日陰に入ると途端に涼しく感じます。

木陰はすずし。この階段の上も陵墓です

試しに地面を触ってみると明らかに日陰は熱くなかったので、なるほど夏の暑さは地面からの熱も大きな要因なのだなあ、などと考えて監獄を目指します。

 

お、地蔵盆のポスター発見。地蔵盆は地域によって耳馴染みがないかもしれません。

かく言う島鉄も地蔵盆に参加したことはありません。

夏らしい楽しい行事ですね

地蔵盆を簡単に説明すると、地蔵菩薩の縁日(8月が多い)に町内にある地蔵堂・祠の供養をすることです。

地蔵菩薩は子どもと縁の深い仏様とゆーことで、地域の子どもたちが地蔵堂を清めてお供えをしたのちに、催しものを楽しみ最後にお供え物(やお菓子)をもらって帰る……という流れが一般的なようです。

 

夏を感じられていいな……、と日傘を首に固定してポカリスエットの蓋を開けるのに四苦八苦しながら思いました。

日傘を何とかして脇に固定したいのですが、そーゆーアイデア商品*6はないのでしょうか?!

 

閑話休題。

流れる汗もそのままに監獄へ歩くあるく島鉄。

寄り道したこともあり近鉄奈良駅を出発して1時間後、ようやく到着しました!

完全に星野リゾートと化している……!

駐車場の警備員さんから挨拶されて気持ちの良いひとだな~

などとのんきに考えていたのですが、旧奈良監獄正門がホテル宿泊者専用入口となっていることを知り、そら宿泊客に挨拶しないわけないか……と何とも言えぬ気分になった島鉄でした。

しかし私企業の監獄って漫画『カイジ』に出てくる帝愛グループの地下帝国(強制労働所)みたいですね。

 

ぐるりと回って奈良監獄ミュージアムby Hoshino Resortsの入り口へ。

あれ、なんか書いてあるぞ。

なんと、ここは完全予約制なのでした。当日分は売り切れ、なんなら明日も含め今月はすべて埋まっていました。

い、1時間歩いてきたのにそんな、そんなことって……あびゃー!!!

心のなかで奇声をあげたところでどうすることもできません。

仕方ないので、以前は中に入れなかったし……と気を取り直して写真をパシャリ。

とぼとぼと帰る道の途中、なんだかデカイ運動場を発見。鴻ノ池陸上競技場(ロートフィールド奈良)です。

サッカー少年たちが練習にいそしんでいました。親御さんたちも紫外線対策を完全にしつつ見守っています。

ロートフィールド横のアホみたいに広い未舗装の駐車場

この暑い中すごいなあ、駅から1時間歩いているくらいでへばっちゃだめだなあ、とエネルギーを貰いつつ、近くのバス停を探します。

これだけ大きな競技場があればバス停の一つくらいあるからです。

サッカー少年からもらった全エネルギーをバス停探しに充てた結果、最寄りのバス停から近鉄奈良駅まで10分で着くと分かりました。いままで歩いてきた時間って一体……。

未だに店名がドリームランド前のローソンで涼みつつバスを待ちます。

閉園のお知らせ

↑有志の方が残している奈良ドリームランドのミラーサイトです。

 

とりあえず疲れたので地元の神社で休憩。饅頭の祖神なんているんですね。

軒に座って釣り灯篭を眺める。これがチルってやつでしょーか。歩く元気も復活したので今晩の宿へ向かいます。

なんと以前いそのくんと訪れた喫茶店の2軒隣に宿がありました。偶然ってあるものですね。

 

少し休んでから奈良県立美術館へ。ここなら涼しいし楽しめるはず。

道中で県庁の中庭で草をはむ鹿、中央分離帯で草をはむ鹿に出会いました。

やっぱフリーダムやな、奈良の鹿。

 

県立美術館到着!

特別展示「都のかたち」がやっています。

一度は教科書なんかで見たことのある『洛中洛外図帖』が展示してありました。

個人的には西洋画の影響を受けた透視図法を用いた「浮き絵」の変遷が面白かったです。

江戸時代は鎖国をしていた、すなわち外国の文物が入ってこない時代だったイメージが強いかもしれません。しかし長崎の出島や清との交易経由で18世紀にも西洋文化が流入していたことが分かります。

お気に入りの小林清親の『隅田川小春凪』。夕焼けの風景が好きなので……。

水面にゆらめいて映る光と空に溶けるようなオレンジ色の太陽の輪郭が素敵。

 

閉館時間の17時ギリギリまで滞在し、帰りに東向北商店街にある珈琲屋エルムンドへ。

階段を登り、大音量で流れるクラシックレコードに耳を傾けながら珈琲を一杯。

これがチルってやつか……(2度目)。

ピントあってる写真が1枚もない……

キリマンジャロを注文しました。

キリマンジャロを飲んだ後にお冷を飲むとスッキリ感じるそう*7で……。

うーんたしかにコクがあって、酸味の強いとされるキリマンジャロを飲んだ後だとそう思うような気もしないでもない。

まあ私は深煎り(酸味小・苦味大)が好きなので完全に自己暗示なんですけどね。

なんか水が美味しく感じられるからこれでいーのだ。

 

すっかり身も心も休まったところで奈良の夜の街へ繰り出します。

昔は陽が落ちると店が全部閉まる(特に観光地に隣接する近鉄奈良駅周辺)などと噂されていた奈良市街ですが、いまやそんなことはありません。むしろ古民家を改装した飲食店なども多く、夜も楽しめる街といっていいでしょう。

地元の人と話しながら飲めるのは旅人的には楽しいです。

 

このあと訪れた居酒屋で翌日の奈良観光を決定づけるありがたい助言を貰えたのですが、それは後編にてご紹介しましょう……。

 

奈良みやげに高市早苗首相のクッキーが並んでいました。あとMEMちょも。

(島鉄)

 

*1:あ、今回は一人旅です

*2:島鉄しかこだわっていない記録、今年で15年連続訪問となりました。特に価値はありません!

*3:約3,700㎢、中南部はほぼ山

*4:2026年7月19日の奈良県最高気温は約35℃

*5:理由になってないですね

*6:調べたらカメラ愛好家の間で使われている商品がヒットしました。やはり同じようなことを考える人がいるのだなあ。夏が終わる前に購入しよう

*7:今はなき阿佐ヶ谷住宅近くの喫茶店マスターのお言葉

京都にお引越し

京都に引っ越してきた。

 

ずっと住んでみたかった。高校生の頃から憧れていた。

そしていまそれが可能になった。大阪で仕事をしていて、職場へは週に一度行けばいい。ならば京都から通うことができる。やらない手はない。

 

というわけで暮らして一週間経った。穏やかで満ち足りた日々を送っている。

 

ぼくは放送大学生で、京都に住んでいる。つまり京都の大学生。30歳過ぎてもなれるんですね。

 

京都に引っ越すと伝えたときのまわり人の反応は様々だった。おもしろそうだねと言う人もいれば、最近観光で混雑してるけど大丈夫と心配する人もいる。

 

美味しいパンを食べることができる

 

オーバーツーリズム。京都が観光客で混雑してるのというのは、一側面として真ではあるがすべてではない。

たしかに錦市場とか清水寺とか定番の観光地はそれはすごい混みようだが、逆に捉えるとこれらの場所が最大値なわけで、どの場所も等しくそれくらい混んでいるわけではない。

また移動手段としては混みがちな京都市営バスではなく、京都市営地下鉄を使うこともできる。京都で暮らすには、いかに観光客の導線からズレるかが大事になってくる。*1

 

鴨川に自転車で行くことだってできる

 

京都とオーバーツーリズムを多くの人が結びつけて考えるのは、メディアで発信されていることも影響していると思う。メディアは問題になっていることをニュースにするが、とくに問題のないことは報じない。ぼくの暮らしのほとんどは、この無問題のなかで完結している。

メディアというと、こうしてぼくも京都について書くときにその影響を感じないではいられない。またこのブログ自体もひとつのメディアだと気づく。

京都とはどんなところだろう?京都は、観光地であり、平安京の都であり、政令指定都市であり、任天堂や京セラのような企業のある工業都市であり、近畿の一都市であり、大学の多い学生街である。京都で暮らすにあたってはその多様さ複雑さを楽しみたい。

 

朝の街を散歩することもできる

 

最後にぼくの京都についてのイメージが刷新された経験について書いて終わりたい。相米慎二監督の映画『お引越し』である。もちろんこれもまたひとつのメディアでフィクションだ。

 

 

京都が舞台。主人公のレンは元気な女の子。京都弁を話す。母と父に軽口をいい、学校でも明るく過ごしている。しかしあるとき両親の別居が決まり、母との二人暮らしが始まる。母は自由を喜んでいるが、レンは父も含めて三人でいることを望む。しかし母も父ももう互いに一緒にやっていくことはできないと感じている。レンは自分の要望を実現するため徐々に過激な行動を実行に移す……というストーリー。

 

去年テアトル梅田で観て大いに揺さぶられた。映画館にギリギリに入って暗いなか席にたどり着けず後ろで立ち見だったから足がぷるぷるしていたのもちょっとある。

 

自分も経験があるのだが、親の別居というのは子どもにとってはなかなか堪えるものだ。世界が以前と変わってしまう感覚。それをテーマとしてくれて、レンの物語として描いてくれてうれしかった。

 

レンが母親と過ごす一軒家、父のマンションと職場、通う小学校、琵琶湖。ずっと関東で暮らしてきた人間として、京都での暮らしのイメージがなかったので、市井の人々の人生を通じて自分と深く関連づけることができた。深く心に刻まれた。

 

ストーリーだけでなく、宣伝のポスターでも使われてる冒頭のカット(三角の机に家族が座ってる)のように、映像が抜群にいいのも伝えておきたい。

学校で男子に自分の境遇を伝える廊下奥のカット、父と琵琶湖の段差の上下で語るカット、家の風呂場に籠城したあと屋根裏部屋で階段の父と語るカット。画面を分割する構図が美しく、人物の心情も反映していてどれも印象に残る。

 

自分の暮らす場所をこうして自分で決められるようになったことのありがたさと切なさを噛み締める。日々を大切に過ごしていこうと思う。

*1:これらはあくまでぼくのような外から来た人間だからできる選択であり、元々暮らしていてオーバーツーリズムに困っている人のことは常に意識したい

渋谷・新宿・アナーキー

最近暑いですね。

6月は適度に雨が降り、日中は暑くなりすぎず、朝夜は風が涼しい理想的な梅雨でした。

 

6月の後半はしばらく東京に滞在していました。友人や家族と会ったりして地元で落ち着いた時間を過ごすことができました。そのときのことを書きます。

 

 

ワールドカップの日本 vs チュニジア戦の日、私は渋谷にいました。ちょうど昼に試合に勝ったばかりだったからか、スクランブル交差点はすごい人の数でした。規制線を張る警官、青いユニフォームを着たサポーター(騒いでいる人&静かな人)、観光客、勤め人、近所の人、たまたま用事があって来た人(私を含む)、よくわからない人…

 

写真を撮り、バス停へと歩く道で、ふとこの異様な状況を楽しんでいる自分に気づきました。職場がこのあたりだったら大変でしょうが、あまり来ないので、レアなお祭りに参加できたとポジティブな評価になっています。街はタイミングや人によって違う見え方がするものですね。

 

夕方、用事が終わり渋谷に帰ってきました。この状況を共有しようと島鉄くん(ブログの共同執筆者)を召喚します。

 

Ado(平面)

 

Ado(立体)

 

MIYASHITA PARKで近況を話したりして、ぶらぶら夜ご飯の店を探すことに。

 

具体的すぎて詩的な味わいもある警告

 

島鉄くんが探し求めていた、以前一度入って名前も場所を忘れてしまった居酒屋を見つけることに成功しました。ミキプルーンのあたりでしたが、あの特徴的なビルは解体されて大きな更地になっていました。

 

 

圧倒的なメニュー数

 

六代目百合を飲みながら鯨料理を食べ、2026年春クールのアニメは『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』がよかったという話をしました。

 

場所を変えて、センター街のバー「八月の鯨」でしっとりとカクテルをいただきました。ここは映画のタイトル名のカクテルを出してくれるバーで、『吉原炎上』とか『グラスホッパー』とか注文ができて楽しいです。

 

吉原炎上。炎上にちなんでアルコールを燃やす粋な演出も。

 

前に書いた感想↓

 

ビルから地上に降りるとき、クマリフトのエレベーターだったのが珍しかったです。荷物用のイメージがありますね。これまで乗った記憶があまりない。

 

 

調べてみると、クマリフトは大阪の会社なんですね。

 

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別の日、私は新宿にいました。

西武新宿線沿いの友人のマンションをあとにして、カプセルホテルに泊まるためです。ずっと実家の団地にいてもよかったのですが、気分転換がしたくなったのでした。

 

時刻は夜23時。宿は歌舞伎町のど真ん中で、渋谷とはまた違ったカオスが広がっています。トー横界隈、ホスト街、バッティングセンター、大久保病院。ホストと女性、観光客、騒いでいる若者、巨大なネズミとそれに驚く人…

 

私は飲みたい気分だったので、ゴールデン街に行きました。友人とは何度か入ったことがありますが、ひとりでは初めてでした。

外から見てなんとなく居心地がよさそうな店に入ってみると、ほんとうに居心地がよくて、気がついたら午前3時になっていました。

 

ゴールデン街、いいですね

 

なにか塩気のあるものが食べたくなって検索すると、なんと営業中のラーメン屋が何店舗もヒット。この時間にこれだけのバリエーションのラーメンが食べられる街、歌舞伎町。すごい。

 

「貝出汁中華そば くらむ 歌舞伎町」に決めます。あさりの入った貝出汁のラーメンで、たいへん美味しかったです。

 

 

帰りは行きにも増してカオスになっている歌舞伎町。この時間ここにいる人たちはなにをされているんでしょう。そう思う私自身も含まれているわけですが…

 

夜は眠るべき、ゴミは持ち帰るべき、お酒はほどほどにすべき。こうあるべきという社会の規範から自由であること。いますごい自由だと感じて楽しい一方で、写真を撮ったらだれかに絡まれそうと感じて撮れない不自由さ。

 

最近、『リバタリアンが社会実験してみた町の話』という本を読みました。リバタリアンは自由至上主義者のことで、政府のあらゆる規制に反対して、自らの権利の最大化を目指す立場の人々です。

 

 

この本では、アメリカのある町にリバタリアンたちが移住してきて、町がどのように変わっていったのかが描かれています。彼らは銃を持ち歩き、課税を拒否し、消防署への支出を減らし、やがてゴミが回収されなくなり、クマが町に現れます。

 

深夜の歌舞伎町はリバタリアンというよりはアナーキー(無支配また無政府)でしたが、私は以前からそういった「自由」へ憧れを持ってきました。去年豊田市美術館の展示を観て以来、関連する本も読んだり考えることが多くなりました。

 

 

支配に従いたくない。権威なんか嘘だ。自律して自由に生きていきたい。ただやはりあまりにも行き過ぎた自由(の行使)はそこで生きる人々を幸福にはしないとも思ってもいます。

 

自由と秩序のどちらにも惹かれながら、まだ夜の明けない道を歩いてカプセルホテルに帰るのでした。