どういうつながり? と意味を考えてみる。こんなかんじになるだろうか。
アップル社はEV開発を断念した。原因はジブリがジブリランドに「魔女の谷」を新設して、若者向け破格物件の提供を開始したためだ。いまやEVのメインターゲットである若者の9割は破格物件に住んでおりジブリランドから外に出てこなくなってしまった。そうなるとEVはもはや必要とされない。
— いその (@isonofumihiko) 2024年2月28日
これは「編集者が選ぶニュース3本」というシリーズらしい。他のもいくつか見てみる。
意味の洪水だ。いつまでも情報が完結しない…!
というのはネタで、「編集者が選ぶニュース3本」は以下のようなテーマでやっているコンテンツだった。
日経の編集者が厳選したニュース3本を平日夕刻にまとめて紹介します。ニュースチェックにお役立てください。
最近自分のなかで、こういう風に言葉が並列されている状況におもしろさを感じている。おそらくNHKの「100分de名著」でリチャード・ローティの『偶然性・アイロニー・連帯』がテーマになったことも影響している。
中点で言葉をつなげること。
並ぶ単語同士には意味が込められていることもあれば(ローティ)、まったく無関係なこともある(日経)。
しかし人は意味があろうとなかろうと、まずは意味を見出そうとする傾向があるらしい。Xのトレンドに並んでいる単語同士に意味を見出してしまうのも似たような現象だろう。
その中間的なものとして三題噺がある。
三題噺はもとは落語の話芸のひとつで、観客から3つお題を募って即興で話を考えて披露するというものだ。無理やり意味をつくるおもしろさがある。
さて近いつながりの言葉同士はすぐに意味のつながりがわかる。
たとえば
・湖と池
・光と闇
・紙とハサミ
上の事物の関係は次のどれに当たるでしょうか?
類似の概念、反対の概念、関連する動作の概念
就職活動の試験でよくこういった問題を解いたような気がする。
一方で遠いつながりもある。たとえば
・鉛筆とまなざし
・スピーカーと宇宙
・ランチョンマットとたぬき
一瞬で頭に意味のイメージが浮かばない。
しかし意味のつながりが近い場合と違って、かえってより深く言葉と事物をイメージできているかもしれない。頭が言葉からその周辺に探索範囲を広げているかんじ。
短歌には読むと(あるいは聴くと)立ち現れる情景があって上に書いたことと似ている。
たとえばこんな歌がある。
このラジオはいつか鳴り出す公園の鳩たちみんないなくなったら
呼吸することで世界に参加する/白い紙では飛行機を折る
新しい服をくぐった風のなか梅は花ひらくこと思い出す
いずれも平岡直子の歌集『みじかい髪も長い髪も炎』(本阿弥書店、2021年)より「みじかい髪も長い髪も炎」
ここでは言葉と言葉の距離が遠い。
そして遠いからこそ生まれる情景がある。
歌いはじめと歌い終りは──初句と結句は、無限の距離にあるべきです。(中略)初句にはじまって、第二句、第三句と進んでいくうちに、予想外の言葉があらわれてくる。そのたのしみにこそ、短歌のすべてがあります。短歌は、たったの三十一文字ですが、三十一文字の一行詩ではなくて、五つの句をもった文節的な詩であります。
『今はじめる人のための短歌入門』、角川ソフィア文庫、2011年、p.67
詩的な言葉として短歌もあるけれど、いちばん身近なのは曲の歌詞だろう。
Plastic Treeというバンドがある。
姉の影響で小中高のころにハマっていて、最近思い出してまた聴いている。
そのなかに「星座づくり」という曲があって、メロディも歌詞も好きだ。
そっと つなげて 新しい星座作るよ
ずっと変わらない想いが 夜空に残ったら 残ったら
なんかラッキー
ぜひ聴いてみてほしい(のだが配信に載っていない…!)
詩的な言葉、あるいは言葉が強さをもつ瞬間というのは音楽以外にもある。
3月という季節柄スピーチを聴く機会が増えているが、やはりジョブズのこのスピーチは好きだ。
スティーブ・ジョブズの「Connecting the dots」。
大学の頃知ってから人生観に影響が大きいように感じる。今回の記事を書いているときも自分がここから意味を汲み上げ続けていることを意識した。
いろいろ書いてきて、テーマがどんどん移り変わっていったけれど、ずっと意味を見出すことの話をしてきた。
ぼくたちが楽しみ、そしてこのブログで書いている街歩きも、その営みのひとつであるのだと思う。街の風景に勝手に意味を見出して語ることのおもしろさ。続けていきたい。
最後に「星」に関連して『ぼっち・ざ・ろっく!』のライブ『恒星』を聴いていたらとてもよかったのでおすすめ。