埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

陰陽の旅~出雲編~

島根県といえば縁結び、縁結びといえば出雲大社

とゆーわけでやってきました!

 

出雲大社です。

島根県の誇る、神話の世界から続く広大で歴史の長い神社ですね。

岡山→米子→境港→松江→出雲。

ようやく陰陽の旅、完結です。

↓↓前回の記事↓↓

my-butsu.hatenablog.com

一畑百貨店

いざ出雲へ!

……と、その前に。

前回の松江編でもちらっと触れた、島根県唯一の百貨店(だった)である一畑百貨店でお買い物をしました。

www3.nhk.or.jp


www.youtube.com

記事を書くにあたって、あらためてもう無いのだな……としんみりしている島鉄

 

入店早々、65年のご愛顧ありがとうございます、の文字が目に入ります。

島鉄は一見さんなので、ひいきにしている店があるわけでなしフラフラと店内を歩きまわります。

学生服が売っているのを見て、百貨店にボーイスカウトの制服を買いに行ったことあったっけ……と懐かしい気分にしばし浸ります。

こーゆー売り場も無くなるわけで寂しくなりますね(今はもう百貨店に連れて行ってもらってもワクワク感ないかもしれませんが)。

 

実は旅行中に百貨店でサスペンダーを買った思い出があるので、島根でも買おうと企んだのですが、丁度良いサイズの在庫なし……。

親切なスタッフの方で、離れたフロアまで探していただき何だか申し訳ない気分になりました。

 

このまま何も買わないなんて勿体ない! それに何だか悪い気がします。

エスカレーターで各フロアの雰囲気を探りつつ、気がつけば最上階の催事場にいました。

初めてのお中元体験

絶賛お中元フェア開催中です。

取引先に送る、という風習も現代社会では廃れた感があります。

お世話になった方……といってもいきなり贈るのも気がひけます。

 

お中元・お歳暮に慣れてるであろう(?)祖母に贈ることにしました。

遠い山陰の名物を贈れば喜ぶはず。多分。

これぞ島根、宍道湖シジミ

「日持ちする&味噌汁の具に使える」と祖母の心理を見事に推理し「宍道湖シジミ」をチョイス。

わざわざ島根県の百貨店からお中元を贈る……不思議な体験ですね。

あのときの爽やかな若い職員さんは今もどこかの百貨店で働いているのかな……。

たまには使おう百貨店、そう思い駅へと足を運びます。

 

一畑電車~ばたでん~で行こう!

さてお買い物をした一畑百貨店はJR松江駅の目の前なのですが、JRは無視して一畑百貨店の親会社である一畑電車に乗ることにしました。

せっかくの旅行、地元の私鉄は乗っておきたいので。

路線・駅のご案内|運行のご案内|ばたでん【いちばたでんしゃ】

神殿っぽい松江市庁舎と宍道湖

松江市役所は建て替えでピカピカの新庁舎*1のため驚きました。各階層によって突き出している床面積が異なり、不思議な外観です。

宍道湖を臨む位置に建ち、ここから出雲路が始まるのだなあ、と思わされます。

 

ここが起点となる一畑電鉄松江しんじ湖温泉駅

道中に温泉タンクがあり、宍道湖のすぐ近くは温泉街であることを思い出しました。ペットボトルに温泉を詰めて車に載せる地元住民や、温泉旅行に来たであろう浴衣姿の人などを見かけました。

出雲に行く前に温泉へ寄るのもアリだったな~、と今更思った島鉄でしたがそこは我慢です。

代わりに松江しんじ湖温泉駅前の足湯に立ち寄りました。

7月に足湯を利用している人は皆無だったので、貸し切りです。やったね。

タオルなどは置いていないので持参しましょう

……暑い日に熱い湯に足を突っ込む、って何をやっているんだろう。

でも心なしか疲労が取れて血行もよくなった気がします。

出雲大社へお参りする前に足湯で穢れを祓っておく、おススメです。

 

懐かしい感じのホーム。銚子電鉄など千葉のローカル私鉄と似てる印象

島根のゆるキャラ、ピンク一色のしまねっこ電車が鮮やか……ですが島鉄はいたって普通の5000系電車*2に乗りました。京王電鉄からの改造・譲受電車だそうで、京王線に多少縁のある島鉄はちょっと懐かしく思います。

このままのんびり1時間ばかり揺られ、出雲大社へ。

 

宍道湖に緑の稲田、魅力的な車窓

1時間は長いか、短いか。人によって感覚が異なるでしょうが、車窓を眺めているとすぐに感じられます。

ここで注意! 

一畑電車出雲大社へとつながる大社線出雲市中心部へとつながる北松江線に分かれているので乗り換えが必要です。うっかり忘れないよう……。

おっ! ピカピカの新しい電車だ。

乗り換えると新造の7000系電車がお出迎え。ちょっとだけ気になっていたのですが、まさかフツーに乗れるとは(たまにしか走ってないのかと思っていました)。

最新設備で旅行客をおでむかえ

Wi-Fiも自転車置き場もあるなんて、これはたすかる。

しかも! なんと! この電車には!

神さま感ある

しまねっこが鎮座しています。

どうでしょう、乗りたくなってきましたか?

この理屈で言うと志摩スペイン村のドンキーが鎮座しているから近鉄特急に乗りたくなる、ってことになりますが。

 

終点の風情を感じる出雲大社前駅

乗り換えを挟み、1時間と少し。終着駅の出雲大社前駅へと着きました。

この駅はホームだけでなく、駅ナカの雰囲気がとっても素敵なんです!

 

ドーム状の高い天井に、昔の鉄道員の道具がズラリ

ステンドグラスから淡い光が漏れ、天井が高いお陰か涼しく感じます。

駅の外観はこんな感じ。

小っちゃくてかわいい。こう見えて鉄筋コンクリート造(1930)なのもギャップがあって(?)いいですね。実は国の登録文化財でもあります。

隣には現代的な雑貨屋さん「導(しるべ)」もあり、暑さ寒さの厳しい時期はまず出雲大社前駅でのんびりするのもいいでしょう。

 

駅前の通りは出雲大社への表参道。土産物屋から出雲そば屋さんまで、なんでもござれです。

島鉄が行った時は平日だったので結構お休みの店舗が多かったですが、それはそれで観光客が少なくて歩きやすいのでヨシ!

ちなみに、持ち前の方向音痴を発揮した島鉄出雲大社と反対側の出雲物産館に行ってしまいました。

ここはここでイイのですけどね。

お土産も買えちゃう

神事から足湯、土産、ランチ……あれ? 

これ出雲大社に参拝してから寄る施設じゃない?

ようやく自分が出雲大社と反対方向に歩いてきてしまったことに気づきました。

お土産を物色して涼んでいられたのでいいですけど。

www.izumo-bussankan.jp

そう、観光に順番なんてないんですよ。

行先は未定、それが旅の醍醐味(言い訳)。

 

出雲大社

表参道を歩いて着きました! 

出雲大社です。この大鳥居をくぐって長い参道を森林浴気分で歩いていくと御本殿にたどり着きます。奈良の大神神社と比べるとやや明るいかな。

my-butsu.hatenablog.com

御本殿までの道は長いですが、大社の森陰を歩いていけばそれほど暑くは感じません。

そうそう、出雲大社大国主大神を祀っており、「因幡の白うさぎ」の神話で有名です。そのためか境内にはたくさんのウサギ像が安置されています。

izumooyashiro.or.jp結構な数なので、お気に入りのウサギに出会えること間違いなしです。

島鉄的には御本殿の裏にいた祈るウサギ像がすきです。

出雲大社は前述のとおり大国主大神を御本殿で祀っていますが、その他にも神様を祀っています。たとえば日本初の力士と呼ばれ、相撲の神様として崇め奉られる野見宿禰神社

土俵とはっけよいウサギ(勝手に命名

すぐ近くには土俵があり、小さな社殿の横には狛犬ならぬ狛兎がいました。

かわいい。

しばらく参道を歩くと川が流れ、いよいよ聖域に近づいたと感じます。

izumooyashiro.or.jpさて、橋を渡り手水で身を清め、先へ進むと見えるのが拝殿と宝物殿(神祜殿)です。

まずは拝殿にてお参りしましょう。

かなり立派ですが、御本殿はまだ奥にあります

注連縄ふっと!

……取り乱してしまいました。出雲大社らしい太い注連縄がこの目で見られてだいぶ満足しています。

楽殿にある注連縄が日本一の大注連縄だそう。

jocr.jp

また、出雲大社の注連縄は太いだけではなく、縄の綯い方が通常とは異なり「左方が綯い始め、右方が綯い終わり」となっています。このことについて質問されることが多いのか公式サイトでまとめられています。

神社神道では、神様に向かって右方を上位、左方を下位としますので、一般的に神社では上位の右方が綯い始めで、左方を綯い終りとする張り方となっております。 しかし出雲大社では古来、他の神社とは反対に神様に向かって左方を上位、右方を下位としていました。(中略)古く出雲大社では一般的な神社とは反対に、向かって左方を上位、右方を下位とする習わしがあり、よって注連縄を張る際には上位である左方が綯い始めで、右方を綯い終りとする張り方となっています。

 

引用:出雲大社公式HP 「なぜ出雲大社の注連縄は左右が逆に張られているのですか?」 https://izumooyashiro.or.jp/archives/faq/7902 (参照2023年2月26日)

 

単に大きいだけではない、出雲の独自文化を感じますね。

出雲大社で祀られている大国主大神は、この地上世界の「国造り」*3を行ったのちに、天空から降りてくる天照大御神の御子に「国譲り」をしたという神話が『古事記』に残されています。

www.jinjahoncho.or.jp

また、出雲大社の境内には教派神道の一派である出雲大社教や、すぐ近くに出雲教*4もあり、出雲の地の独自性が感じられます。

 

歴史に思いを馳せつつ、御本殿へ向かいましょう。

上手く隠れている

御本殿へ向かう途中、室外機が巧妙に隠されているのを島鉄は見逃しませんでした。

だからどーした。防火用の赤いバケツも可愛いですね(←だからどーした2)。

 

拝殿からとことこ歩くこと数分。御本殿に着きました。

あれ……? 

大国主大神を祀っていると聞いたけれど、なんだか社(やしろ)多くない?

 

izumooyashiro.or.jp

いっぱいいる

御本殿以外にも周囲にいくつか小さなお社があり、御本殿内においても天之常立神・宇麻志阿斯訶備比古遅神・神産巣日神高御産巣日神天之御中主神別天神5柱の神をお祀りしているのだそうです。

なるほどね。大国主大神だけではないのかあ。

 

ここで少し補足をしますと、別天神(コトアマツカミ)は『古事記』において天地開闢の時代からいる神様です。神産巣日神高御産巣日神はどちらもムスヒノカミと呼びますね。

 

「結び」の地として出雲大社は知られていますが、神様もムスヒ……。

そして御祭神も大国主大神にくわえて、天地開闢の頃からいる別天神五柱で歴史が長いのだ、ということを感じさせます。

天之御中主神 – 國學院大學 古典文化学事業

神産巣日神 – 國學院大學 古典文化学事業

なかでも神産巣日神(カミムスヒノカミ)は『古事記』では大国主大神の国造り・国譲りの章にかかわる神様で……といった風に、御祭神について考え出すとなかなか面白いので、「神名データベース」で神様の関係性について思いを馳せてみて下さい。

 

ただ真夏に行くと思いを馳せているうちに倒れるかもしれないので、適宜木陰で休んでください。木に囲まれた御本殿の周囲はそれほど直射日光は当たりませんが。

おきにいり

なかでも島鉄の気を引いたのは彰古館と御本殿をぐるりと囲む瑞垣の檜皮葺の屋根です。

 

彰古館とは宝物殿のことで、建物は登録有形文化財に指定されています。土日祝日など特定の日は開放されており、拝観料200円で大黒・恵比寿像や出雲大社信仰の資料などの展示を見ることができます。

島鉄が訪れた日は開放されていませんでした。残念。

木造2階建ての風格ある建物を間近で見られる(休日なら中にも入れる)のは魅力的です。

 

そして「檜皮葺の屋根をじっくり見られる」という同じような理由で本殿を囲む瑞垣も好きです。たしかに檜の皮が使われておる……! 

ところどころ草が生えている檜の皮で葺かれた屋根をまじまじ見られる経験はなかなかないですよ。

もちろん、御本殿やそのそばにある素鵞社なども檜皮葺なので「きれいだなあ」とは思うのですが、近くで見られる点がいいな、と。

nittokusin.jp

さらば御本殿

さて御本殿をぐるりと一周して、島鉄はもう一つの宝物殿(神祜殿)に向かいました。

ここは前述の彰古館とは違って開放されていたので嬉しい。しかも冷暖房完備です。

ますます嬉しい。

ここは300円

2017年リニューアルオープンしただけあって内装はとても綺麗で、中でも目玉展示の「古代御本殿心御柱」は杉を3本まとめた巨大な柱です。

うーむ、古代出雲大社高さ48mある巨大建造物だった説のロマンを感じますね。

www.kokugakuin.ac.jp

他にも勾玉などの装身具・祭具や国宝「秋野蒔絵手箱」など美術工芸品が展示されています。境内を出てすぐ近くには古代出雲歴史博物館もありますし、夏冬の厳しい天候の日はこういった施設に立ち寄るのも悪くありませんね。

宝物殿は写真禁止なのが辛いところですが……。

 

出雲市へGO

てなわけで、島鉄は東京へ帰る前に、ばたでん*5に乗って電鉄出雲市駅を目指します。

別に出雲大社から空港までバスは出ているんですけど……。

せっかくだから一畑電車全線乗りたい!!

とゆー気持ちがあったんですね。大社線から北松江線へ乗り換えて……。

終端駅(ターミナル)感あるな

出雲の中心として栄えるJRも乗り入れる一畑電車ターミナル駅出雲市駅へ着きました。

松江ではJRと一畑電車は離れていたのでなんだか不思議な気分。出雲では一緒になるんだなあ。

 

出雲市駅は出雲大社を思わせる壮麗な入口でお出迎えしてくれます。

これで出雲大社の最寄り駅だと間違える人いそうだなあ。

川が流れてる。最高

ま、でもなにより島鉄のハートをがっちり掴んで離さなかったのは、この出雲市駅の高架下にある土産屋兼ショッピングモールのアトネスいずもなんですけどね。

sakurahonten.com↑↑冒頭から「神々の地出雲へようこそお越しくださいました。とあるのがツボ。

いずもハッピー情報局に、富士通のパソコンは出雲生まれ*6という謎のアピールをする看板、高架化後の出雲市ジオラマ……。

謎空間

地元愛に溢れている素敵な空間じゃないですか!

しかしその一方で土産物もフツーに売られている。なんなんでしょう、このギャップ。

観光客と地元民が両方楽しめる施設……。明らかに地元民向けの東館(暮らしの広場)の方が大きいですが、少し古くて安心感のあるゆるーいショッピングモール。

個人的には落ち着きます。すき。

 

地元のラーメン

そんな出雲のエキナカでラーメンを食べてお別れです。出雲そば食べてないんかい、と言われそうですが完全に忘れていました。また今度食べます。

でもほら、ラーメンをよーく見て下さい。

出雲のヤマタノオロチを倒したときにドロップした*7草薙の剣を模したかまぼこが入っているんですよ!

出雲要素を感じますよね。

 

うん。じゃあ。

ありがとう、出雲。

ありがとう、山陰。

山陽(岡山のみ)もありがとう。

縁ができてよかった。

~陰陽の旅・完~

 

野良キャラまとめ

はい。松江~出雲で出会った野良キャラ*8を上げていきます。

ポ〇モンみたい

ポケ〇ンみたいなうさぎ。出雲大社にて採取。進化すると面影が無くなるやつですね。

 

バス停に貼られているのが素敵だな

サンマにスイカ入道雲、桜、かき氷、雪の結晶……を背景にバスの車内で吊革をつかむセーラー服の少女。

一見、夏っぽいですが、春夏秋冬すべての要素が詰まっています。

通年でバスを利用する学生と四季折々を描いたよい野良キャラですね。

バス停クリーンアッププロジェクト 〜こどもたちの絵をバス停に!〜-プロジェクトゆうあいからのお知らせ

↑↑こーゆー取り組みの一環なのかしらん。

 

何者なんだ……?

お湯かけ少女です。

これは小泉八雲さんの紹介してくれた妖怪……ではなく、工藤夕貴のCM「お湯をかける少女」のリメイク版でもなく、松江しんじ湖温泉のお湯かけ地蔵尊にちなんだイラストもとい野良キャラです。

ここまでくると野良キャラと呼んでいいモノか悩みますが、野良にいたのでいいでしょう。

そういえば島鉄の浸かった松江しんじ湖温泉駅前の足湯にひっそりとお地蔵さまが祀られていました。ちらっと映っています。

 

温泉娘*9の「松江しんじ湖しじみ」とゆー名前がなんかアレなキャラも温泉を盛り上げています。松江二大温泉看板キャラと呼んでも差し支えないでしょう。

 

なんだかノスタルジックな気分になるいい野良キャラです。

 

野良キャラとゆーか神ではないか

ヤマタノオロチスサノオノミコト。かっこいいので。

野良キャラとかそんなどーでもいいじゃありませんか。かっこいいんだから。

 

最後は縁で締めます

最後は高架下に突如出現する「縁」です。

神話の国出雲っぽさが感じられていいですね。縁キャラ。

帰りの空港連絡バスに乗る直前に出会えたのも縁を感じます。

縁ってなんでしたっけ……。だんだん分からなくなってきました。

 

こうして縁ができたし、山陰・山陽にはまた今年(2024)も行きたいな。

一畑電車の魅力はこういう駅にあるのかもしれません

エニシング縁。

*1:2023年5月8日に第一期工事完了

*2:柱のミラーに若干映ってます

*3:ちなみに奈良の大神神社にいる大物主神と共に国造りを行いました。大神神社出雲大社、どちらも古く歴史のある神社です

*4:出雲大社神社本庁所属、出雲大社教出雲教は単立宗教法人……詳細な歴史的経緯は省きますが別法人なのです

*5:おなじみ地元私鉄の一畑電車のことですね

*6:富士通グループの工場の一つである島根富士通がある

*7:ゲーム脳

*8:なんか街中にいるキャラクターたちの総称

*9:温泉をモチーフにした擬人化キャラクター。調べてみると土地神様設定。意外と壮大……