写真集『BACON ICE CREAM』を買って読んだ。
代官山の蔦屋書店に特設コーナーが設置されていたのだ。今度新しい写真集が出るらしい。
著者の奥山由之は映像作家でもある。
米津玄師の「感電」や星野源の「想像」などのMVのほか、ポカリスエットのCMなどを手掛けている。見たことがある人は多いのでは。
2020年代の文化のなかでこの人の存在はとても大きい。
フィルムの淡い色調やカラフルでポップな色遣いはとにかく映えてエモいし、一度見たら忘れることのできない強い印象を与える。
『BACON ICE CREAM』は2015年に出版された。
この写真集からいまのMVにつながる彼の作家性を感じる。
色の美しさや光の明暗へのまなざしの鋭さに驚く。
長時間露光で描かれる抽象的な光の軌跡、闇の中でストロボに照らせされて浮かび上がる物の形と色。
タイトルになっているBACON ICE CREAMは、表紙の写真のことだろう。
丸くて白いアイスクリームのように見える雲と、四角くて紅白のグラデーションのあるベーコンのように見える光の軌跡。
私はこれまで写真に情報や意味をもたせようとして撮っていたけれど、そうでないあり方もあるのだと気づかされた。実際本人はこの本についてインタビューで次のように語っている。
何万枚もの写真をネガからプリントし、部屋中の壁に貼って毎日見て、言葉が浮かび上がるものは外していった。
言語を超えた感性に訴える写真表現の可能性を探っていきたい。