埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

【小説】さんぽ・まち・かんさい 第7話「堺・でかい・ユカイ」①

前の投稿が半年前になってました。ウラ天王寺を紹介してましたね。

今回は天王寺よりもさらに南、大阪市立大を紹介(ってほどでもないか……)します。

(↓前回の話)

my-butsu.hatenablog.com

(↓最初の話)

my-butsu.hatenablog.com

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頭が痛い。ズキズキと痛む頭と、グルグルと鳴る腹にキリキリと締めつける胃袋。
人生初の二日酔いに悩まされ、自主休講を早速かました自分はフラフラと力なくキッチンに行っては水を飲み、ベッドへと体を沈めるルーティンをかれこれ3回は繰り返していた。
時計の針を見ると時刻は11:30。

やはり朝まで飲むのはやりすぎた。
せめて夕方の一コマは出なければ……。
山奥のキャンパスへ向かうバス内で滲み出る冷や汗を拭いて教養科目――買わせた教科書を使わずレジュメだけ配る教授の――を90分1コマだけ受け、そのまま帰路についた。

移動時間の方が講義時間より長いかもしれない。
頭の痛みは引き、消化器の不良も幾分か落ち着いた。


15時近くの摂津富田駅前。ぼんやり色々な層の人間が歩いている姿を眺める。
帰りしのK大生に主婦、授業が早くも終わった低学年の小学生、外回りのサラリーマンに暇そうなタクシー運転手……。
次の電車は何時だったっけ。

手に取ったスマホからピンポーン、と大音量で何かを告げる通知音が響いた。

周からだ。それにしても心臓が止まるかと思った。なんなんだこの音の大きさは。

この爆音は朝に主人を起こせなかった忠義に厚いスマホの自責心からなのか、はたまたスマホのアラーム以下あらゆる音量を最大にして床についた自分のせいか。
なんしかLINEのメッセージを読むと「うしろ、うしろ」と書いてある。

ゆっくりと振り向くと……誰もいない。何の変哲もない駅前の風景が視界に入る。
「??」
どこか店の軒下にでもいて手を振っていたりするのだろうか、と目を凝らして見ようとしたその時、両肩をバンバンと叩かれた。

「おぉぉおるふぁああ*1!!!」
 

よくわからない叫び声をロータリーに響かせて後ろを思い切り振り向くと周がいた。
怖い。

「なんかぼけーやと歩いてスマホ見てたから気づけへんかなぁ、と思って」
「つぎ背後から肩を叩くときがあったら、予告してね」
「今から肩たたきます〜、って言うたらええん?」
「……やめてほしい、ってこと!」

しかし何故わざわざ摂津富田駅まで?
周の通うK大文学部のキャンパスは千里山で、我が社会安全学部のある高槻キャンパスとは別だ。定期券外にワザワザ足を運ぶ用でもあるのだろうか。

「いやー、会長から部室で会議やるからメンバー集めて、って頼まれてんけど全員から断られて……。コーくんなら来るかなぁ、と」
「……正直すぎ。お察しの通りこのあと予定ないけどさぁ……」

そもそも部室がどこなのかも知らない。
K大のキャンパスは前述の通り、新設学部のある高槻キャンパスと、手狭な都心キャンパスから多くの学部が移転した千里山キャンパス、いまや夜間学部のみとなっている都心の天神橋筋六丁目キャンパス……通称天六学舎の3つだ。

サークルの長である我孫子会長は夜間の法学部在籍なので天六学舎。
ということは天六なんだろうか。
K大のメインキャンパスである千里山から天六までは阪急電車で20分。
ここ摂津富田から行くと乗り換えも合わせて40分はかかる。
面倒くさいなぁ……と思ってため息をつくと周はもっと衝撃的な事実を教えてくれた。

「部室は市立大にあるからだいたい1時間ちょいあれば着くと思うわ」
「えっ、部室K大じゃないの?!」
「うん、ちゃうよ。なにせ天六は部室とかないし、ウチみたいな弱小サークルは活動実績ないから千里山にも部室ないんやって」

「えっと……市立大のキャンパスってどこにあるんだっけ?」
「JRで言うと杉本町駅が最寄りやね。地図によると……はー、川越えたら堺市!南のはしっこかぁ」

と、遠い……。


「そしたら行こぉか。会長もう居てはるらしいし」
「え?早くない?!あ、夜学だからか。今日の講義受ける気あるのかな会長……」
「自主休講するんとちがう?ほら、コーくんも午前中ずっと寝てたやろ」
「まぁ人に言えた義理じゃないのは、そうなんだけどさ……」
浪人のうえ留年もしてるのに自主休講するとは、会長はなかなかの傑物だ。

ものすごく速くて驚いた新快速――なにせドアがガタガタいうのだから――に隣の高槻駅で乗り換え、1時間ほどかけて市立大キャンパスまで向かうことになった。


ようやく駅に降りたころには陽がやや傾いていた。

小学校低学年の頃を思い出す陽射しが色んな意味で眩しい。


「ここやね、市立大の杉本キャンパス」
現代的な建物だ。国公立というと歴史的な建物、やや古い校舎のイメージがあるけど、ここはそんなことないのかな。


「コーくん、部室まだ先にあんで」
つい足を止めてしまった。まぁ自分の大学で部室がない弱小サークルが、こんな綺麗な建物を貸してもらえるわけないか。

ズンズン進み、道路を渡る。伝統を感じさせる時計塔が目の前に建っている。
市立大学本館(1号館)だ。白い箱型のモダンな建物。


「コーくん、まだ着いてへんよ。グラウンドのほうにあんねん」
「え?うちのサークルって運動部じゃないよね?」
「うん。でも、そこしか空いてへんから。隣のとなりにもサークル入ってるけど、文化系やったよ」

そんな話をしながら、時計塔を尻目にグラウンドへ出ると、ノックを受ける爽やか野球青年たちがいた。

なんとも青春を謳歌する大学生らしい。
さらに野球青年たちの後方には男女混合で楽しげにテニスをする一団が見えた。

青春だ。しかし、部室はどこにあるのか皆目見当がつかない。


そして……視界に入れないようにしていた一番手前にある謎のブロック塀でできた場所……。
「着いたよ」
「どのへん??」
最後までやってみるもの悪あがき。

「ここやけど」
そう周が指さした先は、率直に言って倉庫のようだった。

「うちのサークルは角取れへんかったけど、エアコンも置いてあるし便利やと思うよ」
角でも、真ん中でも同じような気がする。
なんて口に出すわけにいかない自分は、不安を押し殺すように小さくうなずいた。


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「なんやぁ、えらい時間かかったなぁ。まあ入り、次の活動の案考えてんねん」
ゴミ捨て場から出てきた住民……のような会長は不敵な笑みを浮かべながら、どことなく嬉しそうだった。ずっとここで一人、活動について考えていたと思うとなんだか申し訳ない。

「さーて、そろそろ夏を迎える前にどーんと一発派手に活動しないとなぁ」

そう言い放って部室の壁に掛けられたホワイトボードに大きく「世界遺産」と書いた会長は、関西一帯は世界遺産の宝庫で、わがKKKKとしては何としてもその魅力をPRせねばならない、と熱弁を振るった。

「というわけで、なんかある?周くん」 
なんか、って雑すぎないか。

「うーん……奈良ですかね」
「奈良か、周くん高校まで奈良やったもんなぁ。よう知ってるんちゃうの」
「いやぁ、あんまり世界遺産巡りみたいなんはしたことないですね。高校時代一番通ったの、間違いなく大和西大寺イオンモールですし」

地元の人は意外と名所旧跡に訪れない。東京出身の自分も東京タワーに登ったのは一度きりで、実家から近い『耳をすませば』の舞台として有名な聖蹟桜ヶ丘も駅を降りたことすらない。

「乗り換えで、みんな大和西大寺寄るもんなぁ。周くんの学校って奈良公園近いんとちゃうかったっけ?あの辺は世界遺産やけど観光客と地元の散歩してる人がうまいこと共存しててええよなぁ」
奈良公園……修学旅行で寄ったのが最初で最後だろうか。鹿に噛まれそうになった思い出がある。

「言うても、奈良女から奈良公園まで20分ちょい歩かなアカンのであんまし寄らないですけどね」
「奈良女!!」
会長は唐突に大きな声を出し、キャップを外したホワイトボードマーカーを指揮者のタクトのようにこちらへふるった。周は漂う独特な溶剤の匂いに顔をしかめた。

……おそらく自分も。

そんな自分たちを一顧だにせず会長は話を続ける。
オープンキャンパスの日ぃ、周くんから奈良女です、って聞いて女子高の子や! って勘違いしてもーたんや。懐かしいわぁ」
「奈良女って略すからアカンのですかね。大学以外は共学なんですけど」


「ま、周くんが詳しく知らないなら奈良はアカンな。紹介できひん上にド定番で新鮮味ないし」
たしかに新鮮味は大事だ。外国人観光客相手に東京タワーや浅草寺ではなく、地元の神社を紹介してウケる場合があるらしいし。

世界遺産も、なんとなく定番を選ぶより意外性のある所を選んだ方がいいかもしれない。定番のところは多くの雑誌がとりあげているだろうし。

「あ、あの!定番を外す、って言うと奈良や京都ではない世界遺産……」

「そやね」「そうなるわな」
まだ言い切ってないにも関わらず食い気味に二人とも返事をする。


「つまり、コーくんはこう言いたいんやね。日本の自然も文化も両方知ることのできる高野山へ行こう……って!」
力強く頷きながらこちらを見られると畢竟そうです、としか言えなくなる。
まぁ、いいか。自然と文化どちらも楽しめそうではある。


「じゃあ、それで……」


それまで目を閉じて無言で聞いていた会長はカッと目を見開いて叫んだ。
「ええんか?!それで」
消極的な賛成姿勢がよくなかったのだろうか。


「なんか世界遺産というものを勘違いしてへんか?」

もしや会長は広島の原爆ドームのような負の遺産、ダークツーリズム的な場所にスポットライトをあてたかったのかもしれない。

以前に会長はウラ天王寺で王道よりヘンなとこいきたい、とダークツーリズム精神を思わせる話をしていた。


たとえば奈良の大仏の鎮座する東大寺大仏殿は世界最大の木造建築で大仏も壮麗なものだけど、同時に労役に苦しむ庶民の様子が木簡から読み取れる。みたいなことなのだろうか。


「会長、高野山がアカン、となるといよいよどこが候補としてふさわしいんか分かりません。ぼくは意外性だけで高野山を上げたんと違います。麓から伸びる町石道を使って高野山に登ったとき、昔の人と同じ道を辿って聖地に近づいている気持ちがして……それは」
ス……、と周の顔の前に手のひらを出して遮ると会長はバラスイシ、とだけ言い残しくるりと回れ右をしてホワイトボードに対峙した。

バラスイシ、ってなに? さぁ?会長の造語かな……?
お互い顔を見合わせる他ない。

アルコール臭を思う存分撒き散らしていたホワイトボードマーカーを使って世界遺産の下に書いたのは意外な街の名前だった。

「堺」
わずかに一文字。

自分たちは顔を見合わせて、この意味を考えた。堺は国際交流都市であり、戦国時代には独立した都市として栄えた反面、絶えず権力からの圧力にさらされた。
自治と権力、繁栄と抑圧……そんなテーマがこもっているのだろうか。

 

「堺って、ザビ公ですか」

周がポツリとこぼした。そう、堺には国際都市であったことを感じさせるネーミングのザビエル公園がある。
ザビ公という、どことなく某機動戦士ガンダムを彷彿とさせるネーミングで一部界隈に知られている。

 

……えーと他はなにかないのか。
自分も周も堺に関する情報がこれくらいしかなかった。
そもそも世界遺産……あったっけ?

「堺は中世に栄えた歴史はさることながら、もーっと昔から栄えててん。勿体ぶってもしゃーないから、言うわ。日本最大の古墳が……大仙古墳が堺にはあるっ!!」

あぁ〜、と声が漏れる。アレ?世界遺産だっけ?

「いい質問するなぁ、神路くん。大仙古墳ふくめ百舌鳥古墳群世界文化遺産として立派に世界へ羽ばたいてんねや」
せやから、応援したろうや、そうニッコリ笑う会長は何だか不気味だった。

「え、えっと……古墳ってあのこんもりしてるやつですか?」
奈良でさんざん古墳を見てるであろう周はやや低いテンションで会長に確認する。

「うん、あのこんもりしとるやつよ」
待てよ、大仙古墳ということは……。


「日本一大きい古墳を見られるってことですか?!」
教科書で見た古墳を間近に見られるのは嬉しい。

「うん、見られるらしいわ」
ただ、世界遺産とはいえ、古墳は地味だ。
考古学専攻や古代史に興味のある人なら食いつきそうだけど……。

「二人とも不服そうやな」
「あ、いやっ別にそういうわけじゃ……!」
「最初世界遺産を勘違いしてへんか、言うてはったんでどういう意味なんかなぁと」

「世界基準、世界品質……言葉に踊らされずグローバルを考えるには、グローカルすなわち地球規模の広い視野を持ちつつ、地域の視点を持つことが必要や」
会長は芝居がかった様子で手を広げると、そのあとホワイトボードになぜか「SAKAI 」と書き殴った。

「マクロとミクロの複眼的視点のために、我々は会いに行ける世界遺産……堺の街を歩かねばならんっちゅーこっちゃな」
やはり芝居がかった声でなぜか右にやや首を傾げて話しかける会長。

その理屈で言うたら僕の地元、奈良なんやけど……、と周がボソリとつぶやく。
たしかに。
「それに、今年の同好会活動目標は世界遺産に行き、観光案内ガイドを作成することです、って話してもーたからな」

先程よりも右に首を傾けて話す会長。

「「いや、結局理由それなんですか!!」」

ダンディ坂野よろしく、こちらに両人差し指を向けお茶目に笑う会長。そそそそ。

なんてことはない、この部室から近くてすぐに行けそうな世界遺産だから「そうだ、堺行こう」という案がでてきたわけである。

さすがに呆れ返った自分と周は、「とりあえず行く日付だけ後で教えてください。今日は帰ります」とだけ話しウサギ小屋のような部室をあとにした。

こういう部室ならよかったのに

もう少し広くてアクセスのいい場所に部室があればいいのにな、と改めて感じる。

いや、堺までのアクセスならここは最適かもしれないけど。

「ちょお、待ってぇな、そないに怒らんでもええやーん、早めに世界遺産行って実績作りたいてだけで、他の世界遺産行かんわけちゃうし〜!」
会長、とりあえずあとで予定だけ送ってください。

「判断が早い、はやいてェ……。このあと暇やろ?ちゃっと話つめよぉや」 
すがる会長を無視し、ザラザラしたドアノブを掴み、室内にも関わらず色の落ちたドアを開ける。

生暖かい風が部室内に入ってきた。
部室に残っていても仕方ないと思ったのか、安っぽいアクリルのキーホルダーがついた鍵を持った会長も含めて、3人とも外に出た。

「なんで、ここにおんの」

アベノの新宿ごちそうビルで聞いた声がする。
「あ!」

と周は驚いてみせ

「げっ……」

と会長は声を漏らす。


「はぁ〜」
超嫌そうな顔をして溜め息をつく副会長と目があってしまった。気まずい。

「ここあんまし使わんといて、って去年の暮れにお願いしたやろ」
「他に部室ないんやし、しゃーないやん」
「なんでK大あんな広いのに部室借りられへんの?ここやなくても空き教室くらいあるやろ」

たしかに、なんでわざわざ市立大のキャンパスを使ってるんだろう。副会長を除けば全員部外者なわけだし。

「そんなん言うたかて大学生協の人にも頼み込んで、なんとかこの部室を確保したんやないかァ。ちょっとくらい使うの許してェなァ」

別に部室をつかわなくても文化部だし活動自体はできそうな気がする……と言ってはいけない雰囲気だった。

「そんでまあ、部室を使うに値する文化会公認の健全な同好会、サークルとして認められるよう策をここで練ってるわけなんやし」

なるほど。それで先ほどの世界遺産を紹介する……サークルの名前通り「関西観光案内」のイメージがすぐに思い浮かぶ話を会長はしていたのだな。

部室をゲットするために部室で策を練る……。

ん?なんだか大いなる矛盾を抱えている気がする。深く考えるのはよそう。


「堺の古墳で公認もらえるのかな?」
思わず周に耳打ちする。

あったね、そんなのくらいの反応しかもらえなさそうじゃない?
大体、公認にならないのはサークル結成から日が浅いのと会長が変なビラを配ったりするからなのではないか。

「意外性と専門性を高めないと難しいやろね。ところでぼく気になってることあるんやけど」
「多分同じこと気になってると思う」

「あの、なんで副会長は弓もってはるんですか……?」
「あぁ、向こうにアーチェリー場あるから、たまにこっそり練習してんねん」
「え、そんなとこあります?」

部室に鍵を締め、大阪市堺市を分かつ大和川方向にキャンパス内を移動するとたしかにアーチェリー場があった。
グラウンドの端っこということもあり、この時間帯に人がいる気配はない。

弓道場借りるのメッチャめんどいんやけど、ココは時間さえ合えば借りられるし」
これ、ヒミツにしといてな。副会長はそう言うと人差し指を口につけるジェスチャーをしてみせた。

会長は間違いなく豪傑だけど、副会長もなかなかの傑物かもしれない。

「ゲリラでアーチェリー場つこーて迷惑やないんか?」(※ゲリラはよくないです)
会長はまったくもって遠慮というものがない。
副会長は、許可とってるしゲリラちゃうわ、と遠慮なく会長に返事をする。

「ま、他の大学のクラブハウスつこてるのと同じくらいの迷惑度やろな」
「弓持ってる人に言われるとはなァ」
「たのむからゴミは部室に置かんと、ほかしといてな」

「ゴミちゃうわ!袋にまとめてるだけで、アレにはまだトキメキ感じてんねん」

こんまりメソッドだ。

対する副会長は困り顔。


「私はトキメキ感じんし、ゴミにしか見えへんから綺麗にしといてな」

「ほな袋から出してキレイに並べとくわ」

「……嫌がらせかっ!」

 

夫婦漫才のような二人の問答をさておいて、自分と周はフェンス越しに大和川の向こうに広がる堺の街を見つめていた。

とりあえず週末の予定は空けておこう、と二人で約束し、堺デカイ古墳、とスケジュールを入れる。

よし。
そうして自分と周は、部室のゴミ問題について終わりそうにない議論をしている会長と副会長の間に割って入ったのだった。

 

堺行きましょう、ゴミ捨てましょう、部室探しましょう……そんな調子で。


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大阪市立大学 杉本キャンパス

 1880(明治13)年に五代友厚氏――2015年放送の朝の連続テレビ小説『あさが来た』でディーン藤岡さんが演じていました――を筆頭に大阪の財界有力者たちが阿波座に設立した「大阪商業講習所」が源流です。

 この「大阪商業講習所」は商法学校として東京に次いで設立されたそうで、商都大阪を感じさせます。こののち、学校は先物取引所の先駆けとして有名な米市場のあった堂島に移り、市立大阪高等商業学校・大阪商科大学と名前を変えて財界へ卒業生を輩出しています。

www.jpx.co.jp

 ちなみに、杉本町には大阪商科大学時代に戦前からキャンパスが形成されています。

白い箱型の時計塔、大阪市立大学本館(1号館)は1934(昭和9)年に建造され、2002年に登録有形文化財に指定された歴史ある建物です。

国指定文化財等データベース

そして戦後大阪市立大学に名前を変え、総合大学として今に続く……というわけなんですね。

 

2022年4月からは前述の歴史ある市立大学の名前がなくなり、大阪府立大学と合併して公立としては規模がかなり大きな「大阪公立大学」となり、2025年度には大阪城の近くに森之宮キャンパスという新たなキャンパスができるようです。

www.youtube.com

歴史ある市立大学の名前がなくなったのは個人的にちょっと寂しく思います……。

この小説内では現在マンションとなり跡形もないK大の天六学舎も、大阪市立大学も存在することにしておきます。

 

 

*1:ご存知、折る刃式のカッターナイフを世界で初めて発明したオルファ㈱は大阪市東成区の企業です