埋物の庭

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街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

はにわ通信 第14号「春と短歌、ゆらゆら帝国とふわふわタイム」

春。桜が咲いたり年度が変わったりした。

 

先日近所にできたカレー屋でゆらゆら帝国が流れていた。

なぜだろう『3×3×3』はスパイスと相性がいい気がする。

 

わかってほしい

わかってほしい

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隣の友人に「ゆらゆら帝国だね」と言おうとして、「ふわふわ帝国だね」といい間違えた。「ふわふわ時間」に引きずられた。

 

 

最近『けいおん!』のアニメシリーズを観た。

山田尚子監督の『平家物語』を観て過去作を遡りたくなったのだ。

 

けいおん!』は傑作だった。

放映当時はキャラクターの可愛さにだけ注目していたけど、今はアニメーションとカメラワークのすばらしさ(雨の降る1日がそれだけで1話になってしまうすごさ)、日常とその終わりというテーマを正面から描いていることに感動した。すべての瞬間が青春の輝きを放っていた。

 

すっかり山田尚子に魅せられて、『たまこまーけっと』『響けユーフォニアム』と連続して観ている。

 

 

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短歌に興味をもって歌集を読んでいる。

 

①宇野なずき『最初からやり直してください』はタイトルに惹かれて手に取った。

 

 

 

自嘲的でユーモラスな歌がおもしろい。

以下すべて『最初からやり直してください』より。

 

深海に住めばあいつは光るだろう僕は両目がなくなるだろう

 

雑草にだって名前はある名前なんて僕らは気にしないのに

 

自身の人間社会でのうまくいかない境遇を自然界の深海魚や雑草に仮託して詠んでいる。卑屈さが想像力によって羽ばたいて作品になっているのだ。

 

一方で恋の歌もある。

そこでは暗い(けれど孤高の)世界に留まりきれなかったことへの後悔、妬んでいたはずの普通の人生を送ろうとしていることへの戸惑いも見てとれて沁みる。

 

ありふれたポエム製造工場の現場責任者になっていた

 

暗いから電気つけなよわたしたち深海魚にはなれなかったね

 

 

②永井祐『広い世界と2や8や7』。不思議なタイトルだ。

前作『日本の中でたのしく暮らす』もよかった。現代の短歌界では有名人らしい。

 

 

以下すべて『広い世界と2や8や7』より。

 

一人カラオケ わたしはなぜかしたくなく君はときどきやっていること

 

二年間かけて一回お茶するぐらい仲良くなれてよかった

 

閉店したペットショップを見つめてる青年サラリーマン まだ見てる

 

仕事するごはんを食べるLINEする 百均のレジに列ができてる

 

日常をそのままの空気で歌にしているという印象だ。

こういうことってあるんだよなという気分になる。

 

短歌っておもしろい。