埋物の庭

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街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

はにわ通信 第6号「日記代わりの近況報告」

どうも、島鉄です。

はにわ通信がわりと続いていることに驚いています。

そんなことはどうでもいいですね。本題にうつります。本題の内容もどーでもいいかもしれませんが……。

 

(最近読んだ漫画)

『ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション』

こないだの“はに通”に書いたとおり、『ストップ!!ひばりくん!コンプリート・エディション』を買いました。

わたくし島鉄はアニメ『Sonny Boy』にドハマリしてしまいまして、キャラクターデザイン原案をつとめた江口寿史氏の80年代ど真ん中な絵柄の怪作『ストップ!!ひばりくん!』を買おうと思ったのでありました。

 

もともと『ストップ!!ひばりくん!』自体は読んだことはあったのですが、未収録原稿が載っているとゆーことでコンプリート・エディションの購入を決意。

 

 


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一番好きなコマ。気持ち悪い、って言われたらこう返そう。エピキュリアンでいこう!

きもちいーもん、とかわゆく言えるかはともかく。


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ぶっせん』にも人間はエクスタシーによって突き動かされるとゆーコマがあったなー。

気持ちのEことはよいことなのだ。

エクスタシー最優先は問題も孕んでいますが、周囲に否定されそうなときに自己肯定感を醸成するにはそういう考え方もありかなぁ、なんて。

 


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話の内容は美少女だと思ったら男だった、とゆーギャグ漫画(注:少女漫画にしばしば見られる女子だと思ったら男子だったというのとは少し違う扱いですね)。

 

この上記2コマは、いまや主人公の耕作くんのほうがどうして?(性的指向と嗜好をごっちゃにするな、異性愛だけが許されるのか)と問われそうですね。

 

それは変だ!と言われたくらいで、すごすご引き下がってはいけないわけです。時代が変われば価値観も変わる。

普遍的な価値観も当然ある……でしょうけど。

 


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そんなギャグ漫画なのですが、回が進むにつれて段々とラブコメちっくになっていくのが面白いです。

 


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ひばりくんは美少女、のような少年なのですが、ときおりカッコいい(男らしいとゆー言い方は嫌いなのでこう書きます)性格を見せる場面もあってステキ……。


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ちなみに末妹のすずめちゃんにもカッコいい一面が……。

 

個人的に昔のギャグ漫画(時事ネタや作者が出てくる、くだらない)のノリは嫌いではないので、フツーのギャグ漫画としても楽しめました。

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ただ、笑いのツボは人によって様々なので、オススメとは言いませんが……。


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家族(どころか飼い犬も)みんな同じ顔の上、大学進学してからも高校に来ては首を突っ込む、ガタイの割に弱気な梶先輩だいすき。

 

今だと掲載できなそーなギャグも……。f:id:haniwakai:20211014223455j:image


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(これギャグ扱いですけど、けっこーいいこと言ってますよねえ)

 

ひばりくんは元祖男の娘キャラ、なんて紹介されているのを見かけますが実際どの漫画が初出なのでしょう。

少女漫画なんじゃなかろーか、と睨んでいるのですが、これは今後の宿題とゆーことで。


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『11人いる!』のフロルは男の娘ではなく両性類だし、ちょっと違うかなー。

 

 

漂流教室

これもアニメ『Sonny Boy』の原案となっている作品です。作者はご存知、自邸が色彩の暴力&グワシのまことちゃん、でお馴染みの楳図かずお先生。

小学生と先生(そして給食の出入り業者)がいきなり学校ごと荒廃した謎の世界に漂流し、サバイバルするという内容の漫画です。

 

アニメ『Sonny Boy』はサバイバル、というよりはセカイ系であり青春モノなので、もちろん『漂流教室』とはストーリーがまったく異なります。

 

主人公が漂流の原因ではないかと糾弾される場面が『Sonny Boy』にもあるのですが、『漂流教室』にも同じようなシーンがありました。

共同体内の悪に祀り上げられてしまうさまは恐ろしいです。

 

母の愛、大人を含め人間が信用できない、飢えの恐怖、未来は明るいとは限らない……こういったテーマが『漂流教室』では見て取れます。

gaerial.hatenablog.com

まさしく楳図かずお先生や少し上の世代が経験した、戦中と戦後の大幅な価値観の転換、飢え、人間不信

といったものがこの作品には盛り込まれているようです。

 

もっとも、楳図かずお先生は一族が教員、と恵まれた家系かつ奈良県の山間部に育っているので都市部ほど「飢えの苦しみ」に悩んでいたかどうかは定かではありませんが……。

 

私の祖父母も配給制や金属などの物資不足で悩んではいたものの、田舎暮らしで都市生活者ではないため、「飢えていた」話は聞いたことがありません(だから田舎に飢えた子供がいないとは限りませんが)。

 

しかし、物が不足していたという話は聞いたことがあります。日本軍含め精神論が盛んに言われていた背景には、圧倒的な物質的不足があるのでしょう(九段下の昭和館に、戦時中に増産された物は下駄のみ、その他殆どの物資が不足していたことのわかる資料が展示されていました)。

 

奇しくも漂流した子供たちは平和な時代に生まれながらにして、戦時中と同じ「物の不足と飢え」、子供だけで生き抜く、という難題に立ち向かうのでした。

 

しかし、楳図かずお先生が奈良県に縁のある方(注:本籍は奈良県五條市、産まれたのは和歌山県高野町だそう)だったとは不勉強ながら知りませんでした。

 

また、この作品には楳図かずお先生の幼少期の経験だけではなく、作品の執筆された70年代の高度経済成長の終焉、環境問題の露見、科学技術の発展による薔薇色の未来はありえない、という時代背景が巧みに盛り込まれており、厳しい環境の中でときに争い、協力しながら子供たちが生きていくさまは人間というちっぽけな存在が一つの社会、共同体を営む苦しみを表しています。

 

主人公の母親が子供を思うあまり、周囲から狂人と思われようとも、工夫をこらし、時を越えて(あっ、これネタバレになってしまいますね)薬やナイフを託す場面は、絶望の中でも人を信じる心が不可欠だと感じさせられます。(もちろん親子愛、もなのですけど必ずしも親子の絆が強いかというと、古くは『東京物語』や前述の『Sonny Boy』に至るまで親子関係が利他的で愛に満ちたものとは限らないですしね……)

 

人を信じることは難しく、対立することはいとも容易い。

 


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個人的には最終巻での皮肉たっぷり(に聞こえてしまう)な未来コンピューターとのやり取りが好きです。


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この回がなぜ印象に残ったのかといえば、似たようなテーマの本をつい最近読んだからなのでした。

 

(最近読んだ本)

『人新世の「資本論」』

 

マルクスの著書『資本論』は有名ですが、ソ連崩壊や、共産主義大国の中華人民共和国は実質的に市場経済を受け入れていることから「共産主義=失敗」と思われがちです。

 

この著書では近年の全世界規模の環境変動とそれに対して資本主義では対処しきれないこと、前述の『漂流教室』で未来コンピューターが示唆したような科学技術の発展により、危機を乗り越えられる、というのは幻想である、と述べています。

 

そしてこの環境変動、格差拡大する社会を変えられうるのがコミュニズム(ひいてはコーポラティズム)であると結論づけています。

 

こういうと「はいはい、いつものマルクスバンザイ!論ね」と簡単に片付けられそうなのですが、モノを消費するのではなく自分たちでモノを生み出す力を取り戻すという観点や、国でも個人でもなく共同体の所有物とすることで、一見不自由なようで資源の浪費を防いでいた、という指摘に「自分は消費社会にどっぷり浸かっていたなぁ……」と思い返しました。

 

消費、ってエクスタシいんですよね。

でも、それは結局ムダなモノを作って使って捨てるサイクルに乗っかってしまい、そのモノが安ければ安いほど、生産している人に対価が払われていない(=搾取している)ということですから、よーく考えてせめて賢い消費をしなければなぁ、と反省しました。

 

つい最近、「海岸に漂着したプラスチックでお皿を作ってます、SDGsに貢献してます」なんてニュースを見て違和感を覚えてしまったのもこの本を読んだ影響でしょうか。

我々は多彩なエコバッグ購入や消費エネルギーを考慮していないリサイクルに目を奪われることなく、そもそもの消費社会のありように対して疑念を持つ必要がありそうです。

 

なんか、私の備忘録みたいになってしまいました。忘れっぽいから丁度いいですね(読者満足度を一切考慮しない記事……)。

 

読んだよ、見たよ、知ってるよ

って情報を綴るのって楽しいですね。

そろそろ文フリの季節だなぁ……。

 

ではまた。

(島鉄)