埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

はにわ通信 第5号「庵野秀明展と『Sonny Boy』」

◇2021-10-18

最近は朝ドアを開けて外に出ると部屋のなかとだいぶ温度差があり季節の変化を感じる。冷たくなる頬と吸い込んだ空気の清涼さにまだ冬ではないけれどまるでスキー場にいるような気分になる。来年はスキーをするのもありだ。

 

庵野秀明

国立新美術館でやってる庵野秀明展を観てきた。

 

庵野作品は好きなのだが、正直庵野の内面にフォーカスする風潮には距離をとっていたので、今回の企画展に最初あまり乗り気ではなかった。

しかし展示を観るとそんなことは杞憂で、展示品の圧倒的な物量によって『エヴァ』や『シン・ゴジラ』に至る創作の流れがわかり大満足だった(観終わるとすごい疲れた)。このひとはずっと爆発とかメカニックとか怪獣を好きで描き続けてるんだなと。

 

庵野の描き方はオタク的だと同行の友人が言っていて納得した。物事を抽象化してその本質を端的に描こうとするアーティスト的な創作と比べて、庵野はどこまでもディテールを追求して情報量をぶつけてくる。

エヴァのオープニングなんかも改めて見るとサビの盛り上がりに合わせてカットの切り替わりが速く激しくなっていることに気づく。庵野は構図も卓越しているので、その速さと合わさって気持ちのいい映像経験が生み出されるのだ。

 

◇『Sonny Boy』

Sonny Boyはその点で庵野と真逆の映像だった。漂流世界は現実とかけ離れた抽象的で象徴的な背景によって表現されている。

 

f:id:haniwakai:20211018000115p:plain

公式サイトより。闇のなかで手をのばす希。

 

f:id:haniwakai:20211018000058p:plain

公式サイトより。第8話『笑い犬』。

 

物語の説明も最小限に抑えられていて毎話いきなり想像もつかなかったような話が始まる。余白の大きさのおかげでどこまでも飛躍していく物語が成立していた。

 

最終話については、3年前くらいの自分だったら納得いってなかったかもしれないが、今の自分にはこれでよいと思えた。ぼくも成長しているのだと信じたい。