埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

【小説】さんぽ・まち・かんさい――清水の舞台から

  ノロノロ谷町六丁目という地下鉄駅まで向かう二人の若者。

 

 たんぽぽのような髪の色と綿毛のような髪型の二人が歩くさまは、遅れてやってきた春という風でどこかおかしかった。

ちなみにこれは、5月半ばとしては「観測史上最高の31度を記録したあの日」の大阪を飛んでいたカラスの感想であるから、道行く人からすると「並んで歩くなや、ボケ」という感想以外は特にないだろう。

 特に谷町筋は車道こそ広いが、歩道は御堂筋と違って*1それほど広くもないので、並んで歩かれるとそれはそれは顰蹙を買うことになる。

 暑いんだから外にでなくてもいいのに、そういう日に限っておじいちゃん(タンクトップが駱駝色なのか元々は白だったのか分からないファッションスタイル)がフラリフラリ、と歩いているのだから困る。

 

「なあ、それにしてもなんで5月にもなってサークルどこも入ってへんの?もしかしてどこか体験したけどやめたん?」

「その事情は周もよーく知ってるでしょ、今頃ようやく引っ越し先が決まったんだから」

 いささか冷たい口調だったかもしれない。周は少し眉を下げると、せやったねゴメン、と呟くように返した。

 

 私は3月の上旬、ギリギリまで補欠合格あるいは3月入試の合格を狙っていて「神路くんは浪人してもなお、あきらめない心を持っているね」と予備校講師からも感心、というか呆れられていたのだが、お陰様でK大進学が決まったころには引っ越し準備が間に合わず、マンスリーマンションを借りて奨学金手続きからガイダンス、シラバス説明・前期講義登録とすべてのかたが付いた頃には放心状態となっていた。

 

 辺りを見渡してもサークル新歓などもう終わってしまっているのではないか、というだけではなく、この高槻(山奥)キャンパスで大手を振って歩いているのは「体育会所属」のいわゆる軟弱サークル*2とは一線を画す、ガチガチ本気の部活動の方々なのであった。

なにせキャンパス内に3つのグラウンドとアイススケートリンクなんかが完備されているのだから、スポーツに取り組むのにはうってつけの環境だし当然と言えば当然だ。

 

 私はスポーツとほぼ無縁な人生を送ってきた。常に通信簿は3だった。出しゃばりすぎず、変に目立ちすぎず。

小学校ではスイミング、中学でキツくて水泳部を退部し、そのまま帰宅部、高校で卓球を始めるも6月には幽霊部員という輝かしくない経歴の持ち主だ。

 

 そして体育会の人たちほど本気でなくてもALLラウンドサークルや、和気あいあいとバレーボールを楽しむサークル(私は高校時代にレシーブで失点、トスはやや後ろにいき、サーブはネットに阻まれ、最終的にスマッシュを顔面に受ける係と化していたので、とても入れないけど)もあることが分かったのは4月の終わりごろ、ようやく従弟のアパートに引っ越しが決まり、GWに東京に帰ってホームシックを解消しようとでも考えていた時分であった。

なので、当たり前ながら5月にもなるとサークル勧誘はすっかり終わっていた。これは高槻キャンパスか千里山の本キャンパスより小規模なことも影響してるだろうけど。

 

 

「ボクはオープンキャンパスの時点でもう入りたいゼミもサークルも決まってたから、あんまし分かれへんねん。ゴメンね、変なこと聞いてもうて」

「いいよ、別に。もう少し前からしっかり大学生活について考えておけばよかったんだし」

 この機会を逃したら、もしかすると所属サークルなし、キャンパス内友人なし(今だって同じ講義を何個か受けている知り合いが一人、二人いるばかりだ)、高槻の山奥と松屋町を往復するだけの、人里に高頻度で降りてくる山猿状態になってしまうかもしれない。

それだけは避けたい。なんとしてでも避けたい。

この先、入るサークルがカルトであったとしても。

というかこの場合、アパートを貸してくれる従弟がカルトサークルに入っていることになるから、どう頑張っても逃れようがない。終わった……詰みだ。もう人生終わりだーー!!むしろ、清々しい。

 

 そんな思いを胸に抱えているうちに谷町六丁目駅に着いた。しかし階段を下っていくと心なしかダウナーな気分になってくる。位置エネルギーと同じく私の精神エネルギーは下がっていった。

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あ、餃子美味しそう。単純な私の精神エネルギー。

 

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 二駅ほどで「四天王寺前・夕陽丘」というえらく長い名前の駅に着いた。どうやらここが待ち合わせを約束しているカフェのある場所、そして清水の舞台の最寄り駅のようだった。

 

「それにしてもなんで、周は新入部員なのに早速勧誘なんてしてるの?」

 上級生が勧誘して、同学年の新入部員に初めて会う……という形が、一般的な気がする。これは浪人せず大学で青春を謳歌している高校の同期から聞いた確かな情報だ。

 

「いやまぁ……うちの部活めっちゃ小規模やねん」

 よくよく聞いてみると、部活動の要件、5人以上の部員数を割ることがないよう、新入りだろうと何だろうと、5月末までは手当り次第声をかけているのだという。

 

「ホントにね、ボクもなんやかんや高校まで奈良に住んでたし大阪のことあんま詳しないんやけど、このサークル入ったら友達もできるし関西中の色んなとこ行けるし、ええことづくめやと思うわ。コーくんもアパート来る前、ブラブラ歩いてたし、気に入るんとちがうかなあ」

 そんなバラ色の未来が待ってます、というようなセリフを聞くとどうしても疑い深くなってしまうのが人情というもの。

やはり一寸先は闇。怪しいサークルなのかもしれない。カフェは軽く軟禁するのに都合がいいし。

 

「勧誘、うまく行ってるの?」

「あはは、恥ずかしながら今のところ3人誘って全滅しててん。」

 ええことづくめなサークルの勧誘なのに3人中3人が入部を断る……怪しい、怪しすぎる。ぶらぶら歩く人が役立つ非合法事業……自爆テロあたりか。流石にそれは大仰だし、ピンクチラシや分譲マンションの広告を電柱に貼り付ける作業だろうか?

単純に周の押しが弱いのかもしれないけど。

 

「そしたらちょっとだけ歩こぉか。大体、駅から5分くらいかな?谷町筋を南に下って角曲がったらすぐやから」

 こんな閑静な住宅街でピンクチラシなんて貼ってる姿を見られたら大変なことになりそうだ。いや、この辺なら分譲マンションのツートンカラー印刷のチラシをこれでもかと電柱及び壁にペタペタ作業のほうだろうか。

 

「なぁ、ボーッとしてるけど人の話聞いてんの?」

 四天王寺近くは名前の通り、四天王寺があるのはもちろん、お寺が多い。

 さらにいうと学校も多く――これはあとから知ったことだけど――どの学校も頭の良い、いわゆる「かしこ」*3な地域らしかった。

 

「んー、あぁなんかこの辺はお寺多いらしいね」

……やっぱり話聞いてへんなぁ。この近くはたしかにお寺多いけど。そろそろ着くんと違うかな、清水寺

「あ、あった!!ここ!ここが清水寺やねん」

 

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 たしかに清水寺と石碑に書いてある。

「んー、京都のなら修学旅行で行ったけど、やっぱりここは知らないな……

 

 そういえば北海道名物の「白い恋人」を真似た「面白い恋人」というパクリの上に自分から面白いと言っている土産があったな。

いまに清水寺から「この狼藉者!堪忍しておくれやす~」とでも言われるのではないか。

「パクリやと思うてるやろ。ちゃうよ、ココは大阪夏の陣で焼失した後に京都の清水さんにあやかってつけたんやって。本尊も清水寺とおんなし観音さんやし」

 

 周はそれに……と続けて清水寺清水寺たる所以を話してくれた。なんと、この大阪清水寺には本家の音羽の滝のように「玉出の滝」があり、清水の舞台もあるというのだった。

 

……ということは本家よろしく登るのか、坂を。

「大丈夫だいじょうぶ!ウチの実家から行くんやったら坂登らなアカンけど、夕陽丘は名前の通り丘の上やから、むしろちょい下るくらい」

 それを聞いて安心した。下り坂なのか。これから下り坂というワードは本来大学生活をこれから始める者にとって不吉極まりない言葉だが、それより坂を上り下りする無益さのほうが精神的にきついのだから安心するのも仕方ないだろう。

 

「わざわざ来たし、清水坂下ってみる?」

「登らなきゃいけないの面倒だから、そのままお寺に入るよ」

 

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「えぇ〜!そーゆーとこが散歩の醍醐味やんかぁ」

 1ヶ月前に入部したにもかかわらず、一端の歩き屋(造語)の顔をしている。

人生は谷あり山あり。下ったら上る。ある意味ポジティブに捉えれば良いことなのかもしれない。

 

位置エネルギーの浪費とも言うけど」

「もう、またそんなこと言うてアホやなぁ。このあとカフェでカロリー補給するんやから、ええやんか。な、行こ」

 ついグチが口に出てしまった。清水坂は階段の「踏み板」が2.5歩分ほどの長さで非常に歩き辛い。大体カフェでカロリーを補給できるのは嬉しいが、奢ってくれるのだろうか。大阪人はケチ*4だから奢ってくれなさそうだ。人にタカる前提の人間が人にケチをつけていいかは分からないけど。 

 

「ちょうど、この近くには料亭があったらしいねん。松尾芭蕉さんも来はったらしいわ」

 清水坂を降りていく途中、ちょうど右手側の石垣の上に、かつて『浪華百景』として名高い《料亭 浮瀬》があったらしい。

明治にはその隆盛もなく売却され姿を消してしまうものの、あの松尾芭蕉も来たというから、往時とても賑わったであろうことは想像に難くない。

 

「よく知ってるね、そんなこと。国文学専攻だっけ?」

……いや、実は清水寺行くからには紹介しとこー、と思ってさっき調べてん。ボクは芸術学美術史専修。16も専修あるから、わけわからんくなるけど」

 地元の人は誇りに思ってるけど、案外知られていない史跡は多いものだ。《浮瀬亭》の場合はそこにあった跡すらほぼ残っていないから、なおさら人々の記憶から忘却されるのも早かったのだろう。

 

「美術史かぁ。いいなー、文学部は色々あって。こっちは専門科目に分かれるとはいえ一つだよ。災害マネジメント、とか何するのか全然分かんないし」

「何するんやろね?でもええやんか、12回生の時は皆で同じような講義受けるんやろ?気の合う友達すぐ作れそうやん」

そういうものだろうか。山奥に籠もって自然災害について学んでいくうちに芽生える友情、恋、青春……

 

アリかもしれない。大アリではないか。

危機について学ぶのだから、吊り橋効果というやつのご加護も得られそうだ。

 

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「ほな、清水坂の下まで来たし登ろか。」

 え……早々とまた登るのか……

そう思い、清水坂から来た道を見返すと、右手に寺の石垣と塀が並び、緩やかな坂が続いているさまが見える。 

大阪都心とは思えぬ静謐さを湛えたこの場所はなんだか不思議だった。

そして、京都の清水寺ほど有名にならなくても、街中にひっそりとある良い風景だと思った。静かなのは高校生の行き交う平日でなく、休日の14時過ぎでほとんど人も歩いていないからだろうか。

 

「少しだけ写真撮っていい?」

 もちろん、これは坂を登る気力を回復するためでは断じてない。

ちょっと足が疲れてはいるが、そういうわけではない。

ただ、この景色を残しておきたい、それだけだった。ほんとだよ。

 

「よかったやろ?清水坂降りて」

「うん……よかった。清水寺寄って間に合う?」

 時刻は1425分、5分前に集まることを考えると約束まで30分しかない。

 

「急ご、走るで!」

「え?!」

 言わなきゃよかった。

静謐な空間をダッシュで掻き乱すことは本意ではなかったが、正直隣の高校生もよく部活でダッシュしてそうな坂(高校生とは学校の近くに手頃な坂があればダッシュする・させられる生き物なのだ、これは日本全国共通なはず)なので許してもらいたい。

 

 とても20歳そこそこと思えぬほど息を切らしながら、清水坂を駆け上がり境内に入ると驚くほど見晴らしがいい。 

 通天閣も見える。それどころか日本一高いと噂のあべのハルカスも見えるではないか。

「見晴らしめっちゃええトコやろー。真夏は行く気せぇへんけど、春秋の晴れた日に行くと気分よぉなる気ぃすんねん」

 

「今日の気温、ほぼ真夏と変わらなくない?」

 正午を過ぎ、3時に近くなっているとはいえ気温29℃

 

「いやー、風が気持ちええわぁ」

 意図的に無視されている気がしてならない。

「周がすっかり健康体になって安心したよ……。もうこっちはヘロヘロ……

 

「小さい頃はコーくんのあとついて回ってたもんなぁ。あのときの元気はどこいってしもたん?」

小学生くらいまでは病気がちな周と私は、よく比べられて伯母さんに羨ましがられた記憶がある。居心地の悪さを少し感じて、いい気持ちではなかったけど、今思えば私の取り柄は健康というくらいで他には何もなかった。

「人間なんて言ったって達者が何より」とはいえ、20代にして衰えきった自身の体力から唯一の長所が無くなるのではないかと空恐ろしくなった。

 

「昔はこっから海が見えてたんやって。今以上に眺め良かったやろなぁ」

「今でも十分じゃない」

 周囲が完全に墓地であることを除けば、小ぶりで可愛らしい寺の鐘と通天閣あべのハルカスを写真に収められる、ここはちょっとしたフォトスポットといっていい。油断すると写真に墓石が入ってしまうけど。しかし、ジメジメした墓地よりこういう見晴らしのいいところに埋葬されたい、と思うのは分からないでもないな。

小さいながら存在する清水の舞台からの見晴らしは本家同様に抜群だ。

 

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「ねぇ、ところで音羽の滝……みたいな滝はどこにあんの?」

「んー、そこにあるよ」

 指さす方向を見ると……何も分からない。

どうやら本家より勢いが明らかにないが、お堂から3手に分かれて樋から水の落ちる、京都清水寺音羽の滝にそっくりな滝があるようだ。

見えない……ということからわかるとおり、滝のある場所はここより低い。階段を降りていかねばならないようだ。うへー、また降るのか。

しばらく石段を下っていくと、たしかに京都の清水寺で見たことのあるような滝があった。

なんだか優しい水量の滝だ。名を玉出の滝というらしい。

「なんか滝の元気なくない?」

「うん、いつもあんな感じやけどね。昔はもっと流れが強うて江戸時代なんかは涼み料ってお金取ってたらしいわ」

 なんかお金を取るあたり、そこらへんは商売上手な大阪らしいな、なんて思った。でも境内を開放して、庶民の憩いの場にしたのだからある意味素敵な話かもしれない。

 

「せっかくだからお水取りする?」

「せやね、水貯まるの時間かかりそうやけど」

 たしかにあのチョロチョロ具合では相当時間がかかりそうだ。京都の清水寺では柄杓を落としてしまうか、と思うほどの勢いだったけど、ここは今にも流れが止まってしまいそう。

 

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それでも大阪市内唯一の自然な滝だというから、このチョロチョロがいつ止まってしまうかもわからない玉出の滝は貴重な滝に違いない。

 

「あれ?なんか奥の方に人おらん!?」

「あ、ホントだ。滝行してる」

 驚くことにここ玉出の滝は滝行できるのだ。

プールの腰洗い槽に浸かり滝行〜、とかフザケたこと(大阪なら確実に吉本行ったほうがいいと勧められるイチビリなヤツだ)をぬかしていた同級生がクラスに一人はいた。

それと同じくらいのことを大真面目に山伏の格好でやっているのだから少し面白い。

でも真剣にやっている方を笑うのは流石に悪い。

……そう思うと余計に笑ってしまいそうになる。

 

「やっぱり今日暑いから、滝行しはったんやろか」

「冬やるよりいいよね、滝行は。滝行って夏のほうが健康に良さそう」

 失礼ぶっこいてる二人*5

大阪府には箕面(北の方)に立派な滝があるけど、市内で滝行するにはココしかないから仕方ないのかもしれない。

 

スパワールド*6の滝のほうが勢いあった気ぃするなぁ」

「まぁ滝行は滝の水量が問題ではないからいいんじゃない」

 やっぱり失礼極まりない二人。

 

「時間も時間やし、とりあえずカフェ行こか」

「そやね」

 あ、関西弁がうつってしまった。

「そしたらまた階段ダッシュ!!」

「え?!また?!?」

 位置エネルギーの浪費、しんど。

 

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 表通りの谷町筋に出ると、先ほどの静かな清水寺の境内が嘘のように騒がしい。

お寺に入る前まではこの谷町筋も静かな通りだと思っていたのに。

 

 来た道を戻り、あべのハルカスめがけて谷町筋を南に行くと細長い茶色のタイルに覆われたビルが見えた。一階に大きく《Cafe 百花》と看板がある。

 

「あそこ、あの喫茶店で新入部員面接してん」

食べログ評価3.3……。信用に足りる数値だね」

「そんなんわざわざ調べてんの?」

「そこまで気にしてないけど、2とか4とか極端な評価されてる店は怪しいからね」

 

 私はこういう情報収集能力に関しては自信がある。もっと自分にとって大切な情報を収集しろ(高槻キャンパスが山奥に存在してる、とか)と言われそうだけど。

そんな自分のことが……嫌いになれない、でも十分じゃない。いつでも自分のこと一番見えない。そんな歌もあった気がする。なかったかもしれない。

 

 しかし、どんな人が中に待ってるのだろうか。

笑顔なのに目が笑ってない人、断定口調の人、とにかく早口でまくし立てる人……これらの人たちでなければよいのだけど。

 

 少しの不安を胸に抱え、アビー・ロードよろしく横断歩道を渡る*7と、こちらが店に入る前から手を振っている人が見えた。

だ、大丈夫。多分、いい人。いいんだ。行けばわかるさ。坂道を歩いてきたせいか元気はあんまりないけど。

 迷わず行けよボンバイエというよか、人生迷走、早くも家に帰りたい気分*8だ。

 

 右手と右足を同時に出す無意識なナンバ歩き*9をしつつ、私と周は手の振るほうへ誘われ《café百花》に入っていった。


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~訪れた場所~

 

 清水寺

客番札所 有栖山 清水寺 / 新西国霊場−新しい巡礼の旅

 正式な山号は有栖山(この山号、実に乙女チック)清水寺といいます。

 この一帯は夕陽丘と呼ばれ、寺町として四天王寺を中心に数々の寺社があります。閑静な雰囲気から学校も多く、大阪市内きっての文教地区です。

 文中にある玉出の滝、樋を流れる三筋の滝はそれぞれ「現在・過去・未来」を表し、商売繁盛の寺として尊崇を集めています。名前の通り(?)夕陽丘のため、高いビルが建つ前は夕焼けを眺めつつ淡路島や瀬戸内海を一望出来たとか。大阪湾、瀬戸内海方面は西であり浄土(は天竺のある方角と同じく西)信仰の隆盛から寺も大いに栄えたといいます。

 中興の祖である延海阿闍梨が近世に入って観音菩薩のお告げから京都の清水寺を模したことから今日の姿となったそうです。けっしてパクリ、ではありません。

 個人的には近代文明によって近世の遺産である「玉出の滝」が失われそう(実際、江戸時代に隆盛を誇った浮瀬亭は面影もありません)になるのを守った、という歴史が好きです。

 たしかに地下開発の影響で水流は弱いし、自然の滝なんて都会になくても困りはしない、のかもしれませんが、行政を動かして水脈が保たれていることは少し嬉しく思います。江戸時代の『浪速百景』の名所図会の構図が現在もそのまま残されている、なんて貴重ですよね。

 

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ぼちぼちでんな、とゆーギャグ(おもんな)を思いついてしまうほどにお墓に囲まれています。死後は鬱蒼とした木々に囲まれて誰も墓参りに来ない、なんてとこより駅近で見晴らしのいいところに埋葬されたいものですね。

 

 

 

 

*1:大阪都心を南北に貫く、大幹線の国道25号線。車道は全6車線の一方通行でアホみたいに広い

*2:除草剤が年々増えて置き場に困っているテニスサークル等

*3:関西弁では「賢い=かしこ」だと聞いたことがありますが、今も使われてるんでしょーか?!「お金持ち=ぶげんしゃ」と愛媛では呼ぶ、並みに廃れた方言ではないかと思っているのですが……

*4:偏見。ちなみにZOZOTOWNの送料自由化で購入者が自由に送料を設定した結果、関西2府4県は40位からワースト47位までにランクイン。軒並み安値を付けたみたいです。大阪府は46位。1位と47位の差は25円程度でしたが……。

*5:実際に滝行は可能で、冬場の寒い時期にされる方もいるそうです。予約が必要なので興味のある方は寺務所にTELしてみて下さいネ

*6:ドヤ街で有名な西成あいりん地区のほど近く、通天閣のまたぐらを抜け、新世界と合わせてプールと世界の温泉浴場を体感できる一大テーマパーク。夏場は子連れのプール利用客が長蛇の列を作るくらいには人気スポットーーそのすぐ近くで日雇い労働者が集う光景はなかなか貴重だと思うーーです

*7:これアビー・ロードに触れる必要がまったくないですね

*8:ちなみに高槻キャンパスは最寄の高槻駅まで徒歩40分と、講義を抜けて途中帰宅なんて不可能に近い。恐ろしいところですね

*9:実際にあったか分からないが、近代以前の日本人は同じ手足を同時に出して歩いていたという。いわゆるロボット歩きですね