徐々に春めく季節、気温も幾分か暖かくなってきました。
島鉄です。
さて3月の節句……といえば雛まつり。
というわけで去る日曜日、島鉄は人形のまちとして有名な埼玉県さいたま市岩槻区へと足を運んだのでありました。
もちろんアーバンパークラインで!!!
なんで田園都市線じゃないんだろう(東急と被るから?)
そんな東武野田線……じゃなかったアーバンパークラインの七不思議はさておき、1年ぶりくらいにさいたま市へ赴く気がします。
実は岩槻に行くのはこれが初めて。
埼玉はなんもないと言われがちですが、観光スポットは案外あります。
有名な埼玉の観光スポットといえば、川越・秩父がそれぞれ二大鉄道会社の東武と西武の推すスポットなのですが、ここ岩槻も名の知れた観光地です。
さっそく情報を集めに改札口すぐに位置する観光案内所へ。
まねきねこばとん、という埼玉県のキャラクターこばとんと猫招きの概念をフューチャーさせたグッズが置いてました。猫要素は概念なのでありません。
いや、正確にはもうかりやっこがそのグッズよりも目立ってました。もうかりやっこってなによ(※さいたま市商工会のキャラです)?
しかし、このもうかりやっこ、目の焦点があってません。
儲かりすぎて上も下も見ちゃうよ〜ん、ってなことでしょうか。不動明王の天地眼のごとし。
語尾やんすなんだ……。なんかしっくりきますね。
もうかりやっこに脱力して駅を出ると、幟が見えます。どうも駅前のビル前で催し物をしているようです。
人形のまち、に来た感じする〜!
横で小さいフリーマーケットも開かれており、小物や雑貨で溢れています。
お雛様も一万円とお手頃価格(たぶん)なものが売られてました。
さっそく町の雰囲気を掴んだところで、どう観光するかドトールで作戦会議と洒落こみました。
客層はアッパーミドル層、いやアッパーアッパー層とでも呼べそうな人たちがゴロゴロいます。ゆるい時間が流れている。
このアッパー層は年収ではなく、年齢を指しているので悪しからず……。
岩槻人形博物館に直行しようと思っていましたが、どうやら愛宕神社に大規模な雛壇飾りが展示されているようなのでそちらに行ってみましょう。
住宅街の細い路地を通り、着きました。ここかな。
ちなみに、駅前〜愛宕神社〜人形博物館に至る途中で、人形問屋や一般民家にて飾られている色々な雛人形を見られます。
これまた人形のまちって感じがしますね!
このように素敵な喫茶店にも雛飾りがあるのです。
さて、お目当ての愛宕神社の雛壇飾りはというと……圧巻でした。
ズラーッと社殿の上から階段下まで雛!ヒナ!ひなひなひなひな……!
こんなに大勢の雛人形を見たことがないのでビビってしまいました。
本格的な一眼レフをお持ちの方もいました。
雛人形を撮る列ができているので、連写はできませんが、とにかく圧巻の雛壇を写真におさめられました。
社殿にお参りをして、上から見てもなかなかのスケール。
結構な高さがあるんですよね。
もともと、この愛宕神社には岩槻城の土塁が築かれていたそうな。なるほど、それで結構な高さの上に社殿が鎮座しているのですね。
人形とはちょっと違いますが、愛宕神社の宮彫りは見事なものでした。
あたごドラゴン。社寺の彫刻で有名といえば、日光東照宮の眠り猫(左甚五郎作)とかでしょうか。
さて、路地をてくてく歩いていくと大きな通りにぶつかります。
ここは平成ロード430というそうです。
なんとも言えないネーミングセンス。
しかも、この道に設置されてる時計の時間が全然あってない!
全部時間がズレてる、ってある意味すごいですよ。
実は、時の鐘が岩槻にはあります。時刻を知るすべとして今でも現役なのかもしれませんね。
気を取り直して平成ロードを渡り、いざ岩槻人形博物館へ。
人形博物館の前に新鮮な岩槻野菜の直売所が賑わっていました。
なんでもヨーロッパ野菜を売ってるようです。
ヨーロッパ野菜??
東京ドイツ村(千葉)並みにわけわからんくなる気もしますが、美味しい野菜の前にはそのような疑問は消えゆくのでしょう。
日本らしいな〜、と思ったのがヨロ研カフェとゆー、このネーミング。
もうなんの略なんだか分からなくなってます。ヨロ研部長とかいそう。
そんなツッコミをいれつつ、いざ人形博物館へ。
入ってすぐの部屋には、人形職人の道具や人形の頭部に装束……。
動画も流れており、伝統的な日本の人形がどのように作られているのかが分かります。
昔と今で製法や人形を作る材料が変わっていることも分かります。
雛人形の白い顔は胡粉(貝殻由来の伝統顔料)で塗られていますが、現代ではスプレーで吹きつけている、なんて人形博物館にに来なければ知らなかったなぁ。
職人の世界を抜けると、日本の人形の歴史を学べるコーナーへ。
なにも雛人形だけではありません。
郷土玩具の這子。ハイハイする子供をモチーフにした魔除け……なのですが、魔除けとゆーより、ホラーよりなビジュアルに見えます。
飛騨高山の吊るし雛、さるぼぼも這子人形の一種だとか……。
女児の健康を祈る犬筥。
顔は犬ではなく、幼児です。いわゆる人面犬ですね。
人形博物館では犬筥キットが販売されていますので、世界に一つだけの犬筥が作れます。
じっと見てるとユーモラスで可愛く思えます。
雛人形といえば、この小さな調度品も忘れてはいけません。『枕草子』のうつくしきもの(かわいらしいもの)、にも「雛の調度」として挙げられていました。
か、かわいい。ミニチュア好きとしては飾って眺めたくなります。
特に、ガラス製の調度品は洒落ていますね。
さて、肝心の雛人形ですが……色んな種類のものが飾られていました。
シンプルなお顔立ちの次郎左衛門雛。これは公家などの上流階級に好まれたものだとか。
そして享保雛。面長で細長い指が特徴的ですね。夜に目があったら怖いかも……。
豪華な京雛。向かって右側にお内裏様、左側にお雛様が並んでいます。これは内裏の立ち位置と同じく、向かって右側(左側)が一番格の高いところ、という東洋の伝統に沿っています。
関東雛のお内裏様とお雛様の位置が逆なのは、大正天皇の即位の礼(西洋式の向かって右に后、左に王という並び)からきているのだとか。
なるほど、立ち位置で歴史が分かるものですね。
他にも京雛と関東雛では容貌(近年は差異がなくなっているようですが)や持っている道具が違ったりします。間違い探しではないですが、よく見てみると面白いです。
こちらは駅前の施設で飾られていた関東雛です。ちょっと顔が違う……かな?
展示室からでると、飾られていた人形の歴史や文化、変遷が伺えます。
上の写真にある『桜梅の少将人形(平田郷陽作)』をみて、久方ぶりに『平家物語』の儚くも美しい悲劇の将、平維盛*1を思い出しました。
しみじみした気分で、ちょっとベンチに座り休憩します。
新型コロナウイルス感染症対策なのかベンチの真ん中には貼り紙……ならぬ貼り人形があります。
……こわいよ。
これ家族連れで来たら、子供は人形(首だけ)に怖いイメージがつくのでは……。
でも安心してください!
なぜならば『その着せ替え人形は恋をする』、通称着せ恋の二人が出入口付近に飾られてるからです!!
これで、お子様も人形=怖い図式から解放されるはず。おそらく。たぶん。
写真の向かって左、の五条くんが人形職人を夢見る好青年。
向かって右がギャルで読モながらコスプレイヤーの海夢(まりん)ちゃん。
と紹介しつつ、話題になっているけど全くこの作品を読んでない島鉄。
……すみません。
岩槻は人形の街として『着せ恋』作者から取材を受けるなど交流があるため、こういったコラボイベントがあるんですね。
ためになったなぁ。
さて、岩槻人形博物館を満喫した島鉄ですが、時の鐘を見に行くのも忘れてはいません。
どうやら平成ロードを歩いていくと時の鐘があるみたいです。
博物館を出て、鎮座いや屹立する太田道灌像に挨拶をしつつ向かってみます。
同じく埼玉の観光地、川越では時の鐘が大々的な観光スポットとして紹介されており人だかりができていたイメージがあります。
が、岩槻の時の鐘はどうやらひっそりとしたところにあり、時を教えてくれるようです。
こんな住宅街にあるのかな……などと思っていたらありました!時の鐘。
現在でも自動鐘つきマシーン(正式名を知らない……)がゴーンと鐘を鳴らしてくれるようです。
さらに、時の鐘以上に(失礼)島鉄がおぉー、となったのがこの季節を代表する花。
見事な白梅が咲き誇っていました。
天気はあまり良くなかったのですが、晴天なら更に綺麗だったろうなぁ……。
メジロが何羽か枝に留まっていたのも春の訪れを感じさせてよかったです。
残念ながら写真におさめられず……。
そして、時の鐘から岩槻駅へ帰る途中、平成ロード430を歩いていくと……バーンと近代的な建物が目に入ります。
これは、旧中井銀行の岩槻支店だった煉瓦造の建物です。年代でいうと大正レトロな地方銀行。
現在では東玉大正館という名前で日本人形の専門店である東玉が建物を使っています。
ここからは見えませんが、屋根は瓦葺きなのだとか。面白いですね。
うーむ、岩槻は人形の街……とは知っていました。
しかしながらそれだけでなく、岩槻城址のある歴史の街でもあり、街道は平成ロード430を名乗り、立派な日本家屋にレトロ建築にうらぶれた昭和の建物もある……なかなか街歩きが楽しいところです!
東武アーバンパークラインに揺られて帰路につくなか、そう思いました。
ちなみに乗り継ぎで大宮に降りたのですが、大宮は都会ですね。いまだに岩槻も大宮も一つのさいたま市になったことが未だにピンときてません。
でもそれぞれの街の良さを生かしてるからいいのかな。
それでは岩槻駅前に鎮座するすべての人形の始祖、みみずく型土偶の写真でお別れです。
人形は奥が深いなぁ。
(島鉄)
*1:維盛の別名が桜梅の少将なのです