埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

長崎空港まで最寄り駅から歩く

長崎に行くことが度々ある。

数年前から長崎市内に親類が住んでいるのだ。

 

東京からの交通手段としては安いジェットスターが飛んでいて便利だ。

そして長崎空港からはバスで市内まで40~50分で行ける。

空港から市内へのアクセス方法は他になにがあるだろうか。サイトを見てみる。

 

 

 

連絡船というのがある。

そう、言っていなかったが長崎空港大村湾のなかに浮かぶ海上空港なのだ。

 

Wikipediaより ブルーノ・プラス氏撮影 

 

ただ船はハウステンボスには行くが長崎市内へは行かないらしい。

では、車(バス)以外の手段はないのだろうか?

グーグルマップを見る。

 

 

鉄道が東を走っている。

JR大村線諏訪駅が近そうだ。

距離は?4.5kmらしい。

 

歩けそう。歩いてみた。

 

歩く

諏訪駅

 

19:21、諏訪駅に着いた。

無人駅だった。

 

4.5kmなら1時間ちょっとで歩けるはず。

21時台の飛行機の最終便に乗る予定だ。

 

単線だ

 

電車が通り過ぎるとあたりは静かになった。

想像以上になにもないところだ。不安になってくる。

 

不安だ

 

けれど降り立ったからには歩かなければならない。

飛行機の時間もある。先を急ごう。

 

住宅街

 

住宅街を歩く。夜にひとりで知らない住宅街にいるとすごい孤独を感じる。

まわりを見渡してもだれも空港まで歩いている人なんていない。

これは空港のアクセスに載っていないのも納得だ。だって夜暗いもん。

 

電柱が続く

電灯で照らされてはいるが、住宅街は暗かった。

空を見ると星が輝いていた。

 

電柱と電線と星

 

不安と孤独感を写真を撮ることに集中して紛らわせる。

長時間露光で星が写り嬉しかったがこれを撮るために10分以上かかってしまった。

目的を見失ってはいけない。時間がなくなってきている。

 

大通り

 

残り時間に焦りながら早歩きで大通りを歩く。

 

大きな病院

 

ひたすら歩くことにだけ心を傾ける。

なくなってきている時間への不安、夜道にひとりでいる不安。

しかし不安に囚われてはいけない。ぼくにできることはただ歩くこと。

 

長崎空港の看板

 

長崎空港の看板がやっと見えた。

少しだけ不安が薄れる。歩き続ければたどり着くのだと自分を鼓舞する。

 

只今の風速

 

4m

 

やっと空港手前の橋まで来た。

あとはこの橋を渡れば空港だ。

 

あとはこの橋だけなんだ

 

暗すぎる

 

歩くことは”行”だと思う。

一歩に集中し、呼吸を整えているうちに意識が自己から離れていく感覚がある。

ここに来るまでに乗ったバスや電車、ホテルや食事のサービスを提供してくれた人たち、橋を走っていたランナーへ感謝の気持ちが不思議なくらい高まる。

 

大丈夫、もう不安はない。

 

箕島大橋。長さ970m。

 

約1kmの箕島大橋も半分を過ぎた。

 

光だ

 

空港の灯りが見えてきた。

時間は20:10。なんとかなった。

 

長い橋だった

 

渡り終えた。

家に帰ろう。

 

長崎空港

 

振り返る

というわけで約1時間かけて諏訪駅から長崎空港までを歩いた。

人にはおすすめできないけれど、ぼくのなかでは得たものは大きかった。

 

実はこの企画は2021年の春にやっていて、ちょうど1年前のことになる。

黙々と歩いているうちに変わっていく自分の心の変化がおもしろくて、秋の大阪横断(同人誌『埋物の庭vol.2』の企画)につながった。

 

これからも長い距離を歩いていきたいな。

 

2022年春撮影