埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

「2018」「ニルヴァーナ鈴木」ほか

こんにちは。いそのです。

最近春っぽいですね。

え、全然感じない?そんなことはない。もう春はすぐそこまで迫っているのです。

 今回は都内の散歩記事です。不忍通り~春日通りを歩きました。

 

「2018」

まずはこの写真をご覧いただきたい。

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おわかりいただけるだろうか…

 

これは不忍通り護国寺近くで撮影した。

画面まんなかに紺色の建物がある。それをじっと見てほしい。 

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拡大してみた

 

そう。確認いただけただろうか。壁に描かれた「2018」の文字が。

驚くべきことにこの建物は今年が西暦2018年であることを主張しているのである。

 

正直、目を疑った。だって普通建物にそんなこと描かない。ずるい。

一戸建てに住んでいる人が家の周りを飾り付けるならわかる。

でもそれにしたって文字は描かない。しかもこれ壁だし。なんか道路にアピールしてるし。

 

しばらくの間しみじみとこの世の不思議に感じ入っていた。

やがて手前の建物から店主らしき人物が出てきたので、怪しまれたら困るし、その場を後にした。

 

それでもやはり気になるぼくは、数歩進むと電柱の重ならない角度からもう一度、2018物件を見る。

するともう一つの事実が明らかになる。

「2018」の左隣の面には「2019」と描かれていたのである。

 

 

 

ニルヴァーナ鈴木」

護国寺を過ぎた坂の途中に春日通りと並走する坂下通りの入り口がある。

この通りには神さびた吹上稲荷神社があり、なかなか素敵だ。

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鬱蒼とした森の反対には立体駐車場が在しまして、結果独特の空間が醸成されている

 

このあたりは住みやすそうだなあと考えてあたりを見ていると、こんなマンションが現れた。写真をご覧いただきたい。

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表札からあふれ出る優しさ

 

ニルヴァーナ鈴木」

そう、このマンションは解脱をしているのだ。

これを建てた鈴木さん(たぶん大家)はいったい何者なのだろう。

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緑色の板のDIY風ベランダと可愛らしい三角窓が気にいっている

 

家に帰ってから調べたら「ニルヴァーナ鈴木」にはなんと月7,7万円から住めるようだ(2018年2月調べ)。

南向き、駅近、物件の雰囲気もよいので、これはもう引っ越し先候補に入れておこう。

 

さて、マンション名に話を戻す。

世の中にはこの「ニルヴァーナ鈴木」のように、注目に値する物件名が数多く存在している。

ぼくはこれからこれら物件を積極的に評価していきたいと思った。なぜなら今回はたまたま遭遇することができたが、いつ物件が本当にニルヴァーナしてしまうかはわからないからである。

というわけで、散歩はにわかに素敵物件名捜索に突入する。

 

素敵物件名捜索篇

2つ収穫があったので報告しよう。

 

(1)「第27宮庭マンション」

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 タイル張りのハイソな雰囲気の物件

 

「第27宮庭マンション」

これは春日通りの大塚公園近くに建っている。

「第27」と番号が付いているのがおもしろい。

団地であれば「~号棟」となるはずであるから、これは「虎ノ門35森ビル」のように「ナンバービル制」を採用していると考えられる。ちなみにナンバービル制、森ビル史は「みつちメモ」さんの記事がとてもわかりやすい。

 

実際、家に帰って調べてみるとその推測は正しかった。 「第27宮庭マンション」は「宮庭マンションシリーズ」の一員であったのだ。

 

 

多くは北参道〜原宿界隈に点在しているらしい。原宿駅の皇室専用ホーム「宮庭ホーム」に名前の由来があると知りちょっと感動した。他物件もレトロで素敵なのでぜひ訪問したい。

 

 

(2)「ケルン大塚台」

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 Ich möchte nach Köln gehen.

 

「ケルン大塚台」

これは春日通りの都電向原駅近くにある。

Kölnというドイツ都市名が採用されるている点がよい。gutだ。

フランス語はたまに見かけるが、ドイツ語はけっこうレアではないだろうか。

そしてこの表札のアスキーアート風のケルン大聖堂がいい味を出しているんだな。

関連して下の建物正面写真をご覧いただきたい。

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 アスキーアートは離れてみるとサーバルちゃんの耳に見える

 

そう、建物の壁は基本タイル地なのだが、正面だけは石造り風になっているのだ。それもまた今度はドット絵的な仕方でケルン大聖堂を表現しちゃっている。なんともこだわりが感じられるではないか。schön!

 

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 名前を知らなかったらたぶん気付かない

 

この物件を見ていてぼくはまたこんなことを思った。

住民のなかには家族で住んでいる方もおられるだろう。するとここで育つ子供もいるということだ。

彼は小さい頃からケルンを意識して成長する。住所を書いたり話したりするときには必ずケルンが登場するからだ。そうしたらその子はある日

「ところでケルンってなんなんだ?」

と疑問に思うのだ。

その瞬間、彼はドイツと繋がる。

そのまま関心が続くなら彼はいつかドイツへ旅行することになるだろう。もしかしたらゴシックなマンションに住んでいるからゴシック建築に関心を持つかもしれない。はたまた思索的な子だったらドイツ神秘主義なんかに惹かれちゃったり。

 

物件名はきっといろんなところにいろんな影響を及ぼす。

 

上に挙げたような子は現れないかもしれない。しかし少なくともこうして物件名に思いを馳せて想像を羽ばたかせる人は現れる。

 

物件名観察、あなたもしてみませんか。

 

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造幣局東京支局跡地。都市に現れた広い空間。ここにはなにができるのだろう

 

 (いその)