埋物の庭

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街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

はにわ通信 第3号「ショッピングモール」

ショッピングモール

夏にアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観てからショッピングモールについて考える時間が増えた。

 


映画の舞台が、周囲が田んぼの巨大なショッピングモールなのだ。

 

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ティザームービーより引用加工。とてもいい夏映画なのでぜひ観てほしい。

 

田んぼと巨大なショッピングモール。私はこの組み合わせを知っている。大学時代に住んでいた茨城県だ。

 

茨城県つくば市。そこはショッピングモールの密集地帯であった。

とくにイーアスつくばは私のいた頃まだ周囲が広々とした田んぼや空き地で、突然モールが現れる光景はまさしく映画そっくりだった。

 

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イーアスつくば

 

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イオンモールつくば

 

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LALAガーデンつくば


私は東京出身で大学入学時につくば市に引っ越して、その車社会っぷりに驚いた。

 

幅の広い道路がまっすぐとどこまでも続き、人々は基本的に車で移動する(しかし私は最後まで自転車の民だった)。商業施設といったらショッピングモールか道路沿いの店舗。

 

それに対して東京に住む人は駅近くや新宿などの繁華街の商業施設を利用していて、徒歩移動が主。まるで違う生活スタイルだ。この違いは知っている人にとってはなにをいまさらという話だが、東京や大阪などの都市部から一度も出たことのない人には案外実感が持てないことだと思う。

 

徒歩社会と車社会、都市部と郊外。人口的には後者のほうが多いはずなのだが、アニメや漫画や映画の舞台では前者が多く描かれてきた。私にとって車社会を象徴する存在がショッピングモールで、映画はまさにその点をテーマにしてくれたのでとても嬉しかった。

 

ショッピングモールの本

改めてショッピングモールについて文章を読んだり考えてみると多くの発見があった。

 

1冊目。

日本のショッピングモールについての複数の著者による社会学・都市論・建築論の論集。

ショッピングモールについての分析が進むうち、00年代以降、日本の商業施設全体がモール化していることが判明して興味深い。

たしかにいまはどこもかしこもモール的な思想で空間が構成されている。どこにいっても無印良品がありユニクロがある光景、それはモール的な均一な多様性だ。

 

2冊目。

世界各地のショッピングモールの写真集。この出版社「パイ インターナショナル」の「世界の風景」シリーズで他に橋とか家とか公園とかも出てておすすめ。

ショッピングモール起源のフランスのパサージュに始まる。一つの様式として成ったアメリカ、ド派手なドバイや中国など世界中のモールが載っている。

 

3冊目。

哲学者の東浩紀とフォトグラファーの大山顕がショッピングモールについて好き勝手に語り合う対談集。

連想ゲームで話題が広がっていく様子がおもしろい。モール性気候、ショッピングモールのエデン/オアシス説、宇宙船はショッピングモールになる説。

 

この本を読んだあとネットサーフィンをしていると、なんと『サイダーのように言葉が湧き上がる』はこの本から着想を得たとのこと。

 

監督のイシグロキョウヘイ×脚本の佐藤大×大山顕の3人でゲンロンで鼎談していた。

 


旅行できるようになったら阪急西宮ガーデンズとかキャナルシティ博多に行ってみたい。