埋物の庭

埋物の庭

街中にあるつい見落とされがちで埋もれてしまっているもの(=埋物、まいぶつ)を紹介します。

長野満喫のたび

おひさです。島鉄です。

信州よいとこ、一度はおいで。久しぶりに長野に行ってきました。

 

 

 

はじめに

 

久しぶり……というのも島鉄は長野県松本市で働いていたことがあります。

特にそれまで深い縁はなかったのですが、信州人だった経歴(おおげさ?)があるわけなんですね。

 


最初に同人誌『埋物の庭』を書いたときも、松本から山梨県境まで歩くという企画をやりました。

 

そして今回は、松本時代の先輩から新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか会えなかったけど、久しぶりに会って長野を観光しよう、と誘われ長野県を訪れました。

上司の車で。

 

フツー、後輩が車を出すものなのかもしれませんが、運転好きな上司で助かりました。
お車代をもっとお包みしたほうがよかったかな……。
あと松本時代に一緒だった人が前述の上司も含めて誰一人松本はおろか、長野県にいなくて笑いました。

ただの長野観光ですね。

 

〜1日目〜

かしこい島鉄は前日から集合場所の大宮で前泊しました。
泊まったのはカレー24h食べ放題マンガ24h読み放題、というマンガはともかくカレーそんなに食べたいかな……?
という推しポイントのズレを感じられる駅前のカプセルホテル。


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大宮のアーケード街はなかなか魅力的です。
あんまり大宮に行く用事ないけど、たまには足を運んでみようかな。

さて、早朝6時半。上司に朝から松本まで運転させる*1というドキドキな旅が始まりました。

 

まず向かったのは須坂の手前にある東信・高山村の誇る雷滝です。
正直なことを白状しますと、雷滝の情報0で向かいました。なんなら、今も教育委員会の設置した銘板の写真を撮り忘れたので情報0です。

雷滝 - 信州高山村観光協会shinshu-takayama-onsenkyo.com

ものすごく大きな滝、ではないのですが別名裏見の滝のとおり裏から滝を見ることができます。

間近に滝を感じられるのもさることながら、裏から滝を見るなんて初めてなので面白かったです。


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水しぶきが冷たくポツポツ降る雨も相まってマイナスイオンに溢れた……潤いを身にまとって……平たく言うとそこそこ濡れた状態で、次のスポットへと向かいます。

それにしても穴場なのか、連休にも関わらずそれほど人はいませんでした。
もったいない!でも滝のキャパ(?)的に大人数が押し寄せるわけにもいかなさそうなので、仕方ないですね。


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ランチは信州名物蕎麦と本わさび(自分ですって使えました)を使ったわさび丼。
そば大盛りをたのんだこともあり、満腹を通り越してまんぺこになりました。

まんぺこ……?


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さて、ここからは隠れた穴場スポットから定番スポットへとうつります。
この季節にピッタリの栗の名産地、小布施です。


車から降りてそぞろ歩くと、あちこちで行列ができていました。
栗が焼けるのを今かいまかと待つ人たちです。他にも栗を使ったスイーツを出すお店に人だかりが。

そんな栗待ち人を見て怖気づいた……というわけではありませんが、小布施は栗だけでなく芸術の街でもあります。


マロンよりロマン(???)を優先した一行は小布施の三美術館巡りをしたのちに栗を食べることにしました。

中島千波について - 小布施町

 

若干『メイドインアビス』作者に顔が似ていることであまりにも有名*2な、中島千波氏……の日本画を中心に展示しているおぶせミュージアム・中島千波館や浮世絵で世界的に有名な北斎館など鑑賞できました。

 

なぜ北斎が小布施に……?
と最初頭にクエスチョンが浮かんでいました。が、その疑問に中島千波館から北斎館までの通り道にある高井鴻山記念館が答えてくれました。小布施の豪商である高井鴻山が晩年の葛飾北斎をここ小布施に招いたのです。

www.obusekanko.jp

高井鴻山はここ小布施の地で舟運を元手に栄えた豪商で、北斎の弟子としての一面とパトロンとしての一面を併せ持つ人物です。


展示されている作品も、構図が北斎のものを参考にしていると説明書きがあり、北斎館で答え合わせ(?)できます。

 

個人的にはここが一番気に入ったかもしれません。
なぜなら元蔵屋敷の書庫に入ることができるからです。
美術館内ですが、縁側に座ってぼーっとできるのはお金で買えない価値がある、とゆーやつではないでしょーか。f:id:haniwakai:20221031154031j:image

書庫は二階も登れるので、そこから記念館もとい屋敷を一望できます。なかなか苦しゅうない景色。
恥ずかしながら高井鴻山のことを何も知らなかったのですが、館内の年表によると幕末の信濃で有名な佐久間象山とも交流があったようで、商売だけでなく文化芸術に思想と幅広く交流を続け、京都や江戸から離れた小布施の地の文化教育に寄与した人物なのだと分かりました。

それにしてもお屋敷は立派だなぁ。ものすごく広いわけでも大きな建物が残っているわけでもないですが、そう感じました。いま見ているものはお屋敷のほんの一部なんでしょうけど。ここが300円で入れるんですから、小布施に訪れるなら入館はマストですね。

 

ただ、私が一番「おおっ!」と感じ入ったのは……これです。


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画狂老人卍!!

どうした?いきなり。


これは葛飾北斎の晩年のペンネームです。
北斎館ではもちろん晩年の作品は画狂老人卍表記ですし、前述の高井鴻山記念館でも漢詩内で鴻山から卍老人と呼ばれています。

北斎といえば生涯の引っ越しが93回、雅号もコロコロ変えてます。
もっともすみだ北斎美術館の記事を読むに、雅号が変わっているのはそれだけ他流派の画法を学んだことにも由来しており、ただの奇人ではないようです。

www.cinra.net

現在の漫画にも繋がる北斎漫画や西洋の遠近法も貪欲に取り入れようとした北斎
北斎館ではそんな人物像にも触れられます。

でもやっぱり画狂老人卍は字面で笑っちゃうなぁ……。を普段あまり目にしないこともあって、うおっ?!となるのは否めません。


北斎館の入り口にあった北斎漫画をアニメとして楽しめるロトスコープ(のぞき窓)はよかったなぁ。

 

じゃん。


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北斎館をでたあとは地元の栗を使ったスイーツに舌鼓を打ち、穴場の温泉を経由し一日で長野大満喫!
プランを考えてくれた先輩に感謝しつつ松本にて夜が更けていきました。

 

~2日目~


翌日、帰り道でどこか寄りたいところはないかと問われ、同人誌企画の「県境ウォーク」では、惜しくも素通りした諏訪大社の下社春宮と上社前宮に詣でてきました。

最初駐車場への渋滞で難儀しましたが、比較的早い時間帯に訪れたおかげで無事参拝できました。

立派な御柱が拝殿横に建っています。
じつは諏訪大社に本殿はなく、代わりに杉の木などをご神体として拝んでいます。


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祀っているのは主にタケミナカタノミコト(諏訪大社HPでは諏訪明神)といわれています。
国譲りに反抗してここ諏訪の地へ降り立ち
(とゆーか、タケミカヅチに投げ飛ばされて)国をつくったのだとか。
茨城県行方郡の夜刀神のように中央政権に抗する現地の豪族を仮託しているのかもしれませんね。


諏訪大社HPでは諏訪明神となっている通り、タケミナカタノミコトを祭神とする前から杉の木やイチイの木を神木として素朴な自然信仰を行っていた可能性もあります。

www.suwataisha.or.jp

そんな、自然と一体化した社殿でマイナスイオン(ってホントにあるんですか?)を全身に浴びつつ、辺りを散策します。

 

おっ?これは??
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少し歩くと、浮島社なる拝殿の外に祀られている末社があることを発見。

名前の通り中洲にぽつねんと小さな社があります。

 

流れる川は綺麗で夏場とても気持ちよさそう。さすがに10月は寒そうなので手を清めるだけでご勘弁をば。


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伝説曰くこの浮島社はどんな水害があっても無事だったのだとか。
現代にはいってからガッツリ護岸されていることは無視します。

 

まぁ、一応ね。行政のアレとかあったのかもしれませんしね。形だけは護岸しとかないとですね。水流による浸食を避ける、という意味合いも護岸にはありますし……。


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そんな浮島社の橋を渡ってみると、あまりにも大らかなお顔だちをした万治の石仏(肩幅エグ……)とご対面。


なにやら三周するのが礼拝の作法のようです。
お寺というより、商工会議所と観光協会による勧めでしたが……。

きらびやかな本殿を建てることをよしとせず、古風を守る諏訪大社のすぐそばには、同様に大らかで民衆に愛された石仏が安置されている、ということでしょう。

 

にしても、お顔と身体のバランスがどーかしちゃってるよーに見えるのですが。
私のような凡夫には真の美は分かりかねるのかもしれません。

 

この万治の石仏は元々下社の大鳥居を造ろうとしたところ、石から血が流れたために石工が阿弥陀仏を彫った、との伝説が残されています。
そのおおらかな造形と神秘性から岡本太郎氏や新田次郎氏が礼賛し、有名になったとか
岡本太郎曰く、こんな面白いものは見たことがないとのこと)。

 

三周すると若干ふらふらしてなんだか健康にいい気もします。皆さんもお百度参りは難しくても、お近くの石仏の周囲をグルグルしてみてはいかがでしょうか?

 


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ちなみに下社の方が諏訪湖の近くで天気によっては諏訪湖を一望できます。また行きたいですね。さて諏訪湖と言えば、有名なのが鰻。

 

そこそこ待ちましたが空腹に鰻が染みました。美味しすぎる。脂ののった身は当然ながら肝も骨(せんべいにしてくれました)もおいしい。
年に一度の諏訪詣で少し贅沢するのも悪くないですね。ほとんど上司に払ってもらいましたが……。ごちそうさまです。早くおごりびとになれるよう精進したいですね。


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諏訪湖をあとにして向かうは上社前宮。
前が名前についているとおり、こちらは祭神が最初に居を構えたことから諏訪信仰発祥の地とされています。
四本の御柱が見られるのは前宮だけ!
とゆープレミア感につられて行くことにしました。


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めちゃくちゃシンプルなつくりの社殿に雄々しい御柱


御柱の後ろには長野県民大好き(偏見)マレットゴルフ場に、畑。

ちいさなせせらぎが辛うじて境内と外界を分けています。


下社春宮は大型の観光バスが境内すぐそばの駐車場に乗り付けていました。
が、こちら上社前宮は温泉施設のマイクロバスが止まっているだけ。

 

境内が小規模なことも相まって、観光客が社殿内外をそぞろ歩くというより囲んで御柱を眺める会といったおもむきでした。

なかには、里山風情の中に屹立する御柱と社殿の姿をスケッチする方もいました。
諏訪湖に近く観光スポットとしての面が強い下社に比べて、上社は地域に寄りそう長い歴史をもつ神社、といった感が伝わってきます。


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雲行きが怪しくなるまえに一礼して上社をあとにします。
諏訪大社は他にも下社秋宮と上社本宮があります。また行かないとなぁ。
冬は諏訪湖御神渡りもありますし、見所はまだまだあります。

御神渡り | 諏訪市観光ガイド|諏訪観光協会 公式サイト

後ろ髪を引かれる思いで長野県をあとにします。


帰りは山梨県の富士山が露天から見られるという絶景スポット、ほったらかし温泉へ。


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ここを教えてくれた後輩は、入る時間や季節を変えて、何度もほったらかし温泉へ行っているとのことで、それだけ人を魅了する景色が待っているのでしょう。
温泉は、あっちの湯とこっちの湯(正式名称)の二つに分かれています。
見える景色や広さも違うのだとか。

 

……が、雨でなんっっっも見えない!
あっちもこっちもどーにもブルドッグ状態。
(↑ふる……フォーリーブス


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この写真では辛うじて近くの建物がポツポツ見られるのですが、露天風呂に入ってからは近くの草しか見えませんでした。
麓の建物すら見えない。遭難しそうな景色でした。

 

幾度となくほったらかし温泉を楽しんでいる後輩も、この天気と景色は初めてだったらしく、ある意味レアなのかもしれません。
あとなぜか湯桶が草むら(それも露天風呂などではなく、入場口の横)に落ちてました。


ほったらかしてんなー。

 

ほったらかし温泉の名誉にかけて言うと、天気はあいにくでしたが温泉の人気はものすごく、駐車場もほぼ空きが見えませんでした。

 

ただ、あっちの湯・こっちの湯とゆー分け方はどーにかならないものでしょーか。
諏訪大社みたく上下で分けた方が分かりやすい気がします。

そんなことをグチりつつ、大渋滞にハマりながらも*3無事に帰ってきました。


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一泊二日でこんなに満喫できるとは。
すぐ足を伸ばせば信州も近いものです。
11月は祝日が二回ありますが、小旅行はいかがでしょーか?

 

*1:いつの間にか新車に変わっていて、「ルーフから空が見えるんだよ」と話していたのが、少し自慢げで可愛かったです。あいにく曇天でしたが……。

*2:そんなふざけたことを抜かしているのは島鉄だけです。度し難いですね

*3:上司に長時間運転してもらいました。有り難い限りです。