久しぶりに夜行バスに乗った。東京から大阪へ。
夜行バスにはたくさんの思い出があって、眠れない夜の間記憶をふりかえっていた。
安い夜行バスは快適さとほど遠い。
席は身動きがとれず眠りが浅くなる。腰も痛い。現地へ着くころにはいつもクタクタになっている。もう乗るものかと心に誓う。
けれど夜行バスでしか味わえない経験もあるのだ。
旅の始まりの気持ちの高ぶり。暗い車内でカーテンから漏れ入る高速道路の灯り。サービスエリアで吸う空気の美味しさ。そして闇のなかでイヤホンの音楽に身を委ねるあの時間。
それでは私が夜行バスで聴きたくなるアルバムを紹介しよう。
1 坂本真綾 『30minutes night flight』
30分のコンセプトアルバム。
表題曲は目を閉じて聴いていると空を飛んでいるような夢幻の感覚になる。それでいて日常の美しさを歌うバラードもあってじんわりくる。
高校生のころひとりで京都の大学へキャンパスを見に夜行バスに乗った。
カーテンの外を見るとバスはどこか知らない街の坂を登っていた。ふだん住む街を離れて遠くへ向かっていると思った。
街や国の あらゆる境界線を 越えていくよ 今夜あなたを乗せて
2 空気公団 『夜はそのまなざしの先に流れる』
静かな夜が始まるアルバム。
夜行バスでは家にいるときよりも夜を強く感じる。明かりをつけられないからだ。
闇のなかでじっと時を過ごしていると、夜が身体に染み込んで、頭は普段考えないようなことを考え出す。時間は遡り、自分が生まれてから今までの記憶を辿っていく。引っ越す前に住んでいた街や家の風景。小学生のころの友だちとの会話。
記憶の時間旅行から帰ってくると、こうして旅行をしている今この瞬間がなんだか誇らしい。
天空橋に夜が落ちた ぼくは今すぐ迎えに行くよ
天空橋に
3 パソコン音楽クラブ 『Night Flow』
夜のグルーブに身を委ねよう。
記憶はやがて郷愁へと変わりもう取り戻すことのできない輝きを放つ。
こうして旅をしている今もやがては追憶されるのだ。かけがいのない一瞬のなかに永遠を想う。
静まる街を彷徨い 揺れる煙を追うよ
Yukue
歌詞は批評目的で引用しました。
夜行バスの中では適度な音量で音楽を楽しみましょう。それでは!