何も言わずまずはこのMVを見てください。
ミツメのエスパーという曲です。
私は特にこの曲のイントロ、アウトロの不協和音混じりの音がとても好きです。
マイフェイバリットソングと言っても過言ではないでしょう(有頂天の君はGANなのだ、も好き!と隙あらば宣伝しておきます)。
歌詞から「どんなに長く過ごしても他人は他人であり、完全に理解することはできない、結局のところ人は孤独である」というメッセージが伝わってくる、のですがけっして不快ではないといいますか。恋の終わり、寂寥感がじんわり広がる曲だと思います。
ここでバンド、ミツメのご紹介。
東京インディー三銃士、と呼ばれてたのはブログ記事執筆をしている今知りました。
有頂天がインディーズ御三家と言われてたのと同じ感じでしょうか。知らんけど。
もうですね、私はこのミツメ……というよりエスパーのファンでして(不用意にファンと言うと詳しい人から怒られそーなので)、このMVが千葉県の某ニュータウンで撮影されたと聞いて「いつか行ってみたい〜!」なんて考えていたのでした。
そもそも千葉ニュータウンってどこじゃ?
と思ってスマホで調べますると……
千葉県白井市、印西市、船橋市にまたがるニュータウンだそうです。
……広すぎません?あとWikipediaがイオンに検索順負けてる。
inzaiparque.com何となく夢破れた街、というイメージがある千葉ニュータウン。
あまりにも広くてこれではMVに使われた場所がどこなんだか分からないな……、とガックリきていました。しかし、私の街MVで使われたよー!と言いたい人(失礼)はどこにでもいるもの。探してみると印西ニュータウンが合致しそうと判明します。
ミツメの新曲「エスパー」のMV撮影地の一部が印西市でした。
— まつおか (@matsuokujyaku) December 10, 2017
ミツメ - エスパー https://t.co/DCoAYgUVY5
あとなぜかこれ私だけなのかもしれませんが、「ミツメ エスパー ロケ地」と検索するとなぜか『アクマイザー3』のロケ地探訪をしている方のサイトがしょっちゅうヒットします。記事文中の"ミツメドーサ"に反応してしまうみたいですね。
showalocations.blog.fc2.com違う、そうじゃない(でも記事のロケ地は聖蹟桜ヶ丘とかすすき野とかニュータウンだから当たらずも遠からじ?)。
どれどれ印西ニュータウンまで乗るとなんぼくらいかな?千葉県だし安いかなー?
と思って検索すると割と運賃がかかるんですね。あれ?なんでかなー、おかしいなーと思って経路を見てみると……そこには!
北総鉄道の文字が?!
www.hokuso-railway.co.jp"これ"のせいですよ、千葉ニュータウン事業が失敗したのは。いや因果関係が逆でした、北総鉄道の運賃が高いのはこのニュータウン事業の失敗が一因にあるのです。
……MVのロケ地に行くだけ、と思っていた記事が全然違う方向性にいってしまいました。
北総鉄道 北総線1日乗車券 発売(2020年10月17日~) - 鉄道コム
↑1日乗車券を買うと1000円ですが、京成高砂駅から終点の印旛日本医大駅まで行くと840円ほどかかります。た、高い。
toyokeizai.net他私鉄の沿線住民が自嘲気味に運賃が高すぎる〜と話しているのとは一線を画すのが、住民訴訟の存在です。都心へのアクセスに難があるという印象は依然として千葉ニュータウンの課題です。
えー、北総鉄道は置いておいて千葉ニュータウンについて調べてみましょう。
前述の印西パルケというサイトにニュータウンや印西市の歴史がまとめられていて助かります。
ニュータウンの概要としては千葉県のニュータウン事業についてのサイトを見るとふむふむ……。
事業期間:昭和44年(1969年)5月13日~平成26年(2014年)3月31日
計画の規模
- 計画面積:約1,930ha
- 計画人口:143,300人
- 計画戸数:45,600戸
ちなみに現在の千葉ニュータウンの人口は10万人ほど(2021年1月末時点)。
計画戸数から3602戸、計画人口は4万人ほど届かない計算になります。
当時の計画図で千葉ニュータウンの旅 ~現人口は計画の3割、新幹線も幻に。夢破れても光る街~ :: デイリーポータルZ
↑例によってデイリーポータルでも記事になっていました。ので、詳しく知りたい人はこれを見てください(省エネ)。
ブログを書いている現在見られなくなっていてショックなのですが、 「ちばにう情報館」という懐かしい感じのHPがあり、ニュータウンと信仰についての興味深いコラムがまとめられていました。まったく新しい都市であるニュータウンには宗教施設を地方自治体が率先して勧請するわけにはいかず、信仰の空白地帯が生まれるということ。
いや別にいいじゃない、特に信仰があるわけでもないし。と思われる方も多いでしょうが、初詣や夏祭りといったものは宗教施設がないと催されませんから、意外に住民から「初詣に行くのに電車に乗っていかなければならず不便だ」なんて意見が寄せられることとなるのです。面白いですね。
遠い昔、大学で私の研究した(と言いつつ全然詳しくないのですが)『日本霊異記』には村落の人々の要請により都から説法に呼ばれる高僧や、村の小さな庵を作るエピソードがあります。現代人も古代と重要性は違うにせよ、何らかの宗教的中心を求めているのは興味深いです。
そんなことを考えていたら着きました。道中が長い、ながすぎる。
千葉ニュータウンです!
大体東京都心まで電車だと一時間ほどかかります。うーん、これは人が計画より住んでないのもうなずけるかも......。
千葉ニュータウンにようやく着いたのですが思った以上に鄙びています。人口から考えると都会でないことは分かっていたのですが、どうしても都会に近接した千里ニュータウンや多摩ニュータウンのイメージがあるからでしょうか。
駅改札を抜けると案内があります。ところどころ消えかけているのが物悲しい。最新情報なのかもわかりません。
地図も年季が入っています。パーキング多すぎない?もっともこれは古い地図ですが。
しばらく歩くと駅周辺を取り囲む団地のような高層マンション群が立ち並び、さらに歩くと似たような外観の低層住宅群が現れます。
分譲住宅などで、全く同じ(あるいは近しい)デザインの住宅が立ち並ぶ様子を私は勝手にコピペ住宅と呼んで撮影しているのですが、ここはコピペ住宅の故郷と呼んでもいいかもしれません。
もちろん公団、現UR都市再生機構が施行しているだけあって巨艦団地もあります。
さてここからずんずん歩いていきますかね。
近所の子供たちでしょうか?道で思うままに遊んでいました。無機的なイメージのある分譲住宅地であっても子供たちは元気に遊びまわります。
団地などもそうですが、同年代の世帯が集まるだけあってエネルギッシュなのですよね。ただし同年代の世帯が多いということは街が若い時はいいけど一気に老いるということでもあります。過疎集落の問題は都市近郊のニュータウンで圧倒的に大規模になって再現されます。
もっとも新しい住民が流入すれば世代問題は起こらないわけで、子供たちが楽しく遊べる、家族にとって心地よい街づくりができれば千葉ニュータウンも「当初の計画より人口の少ない失敗した街」という烙印から「住民が定着し、それどころか再生産に成功した街」という180度異なる評価を受けるでしょう。
すぐ近くに公園があるにも関わらず、家の目の前の道でキックボードやなわとびをして遊ぶ子供たち。
道というものは交易だけでなく、道の交わる辻で市が開かれ人と人の交流地点として栄えた歴史があります。
子供たちの遊ぶ姿を見て、道端で話し、遊ぶ、道の交流機能が現代でも働いているのだと実感させられました。
さて、もう少し歩くと途端にあたりが寂しくなり、広大な畑が現れ郊外であることが否応なしに伝わります。
東京電機大のキャンパスも広大です。
現在は役目を終えており、左手に夕暮れと畑、右手に無人の大学キャンパス跡地という構図の道を歩いていると虚無感に襲われます。寂しい。
そんな美しくも寂しい夕焼けに包まれる街と自然の境界を歩いていたのですが、文明の匂いを発見しました。
ガソリンスタンド(ドトール融合)です。ガソリンスタンドって油売ってるイメージなのですが、コーヒーも売ってたりするんですね。ロードサイト文化に全く触れてこなかったので新鮮です。スタバでなくドトールなのもいい。
さらに歩くと何もない更地に建物がニョキニョキ建っていました。
分譲地らしく「フェアリー」とか「ハーベスト」とか名づけられています。ピカピカの道がくねくね張り巡らされ、事業は終わるもニュータウンは終わっていない、と見せつけてくれますね。
分譲住宅地を抜け、駅まで戻る道に突如として現れる団地群が千葉ニュータウン桜台団地。
印西市を歩いていましたがいつの間にやらここは白井市。分譲地と同じく道がクネクネしていて面白いです。同じニュータウンでも千里丘や多摩よりも後期だからかデザインがやや異なります。
千里丘も壁面の改装工事をしていましたが私の訪れたこの地域もほとんど外壁の工事中でした。まともに外観を撮れたのはこれくらいです。
階段室入り口のゲートがバブリーで好き。
管理棟に外壁工事の完了した暁にはこうなります、と外壁の色見本が。こういうのが見られるのはうれしいですね。
さてこのプロムナード桜台と名付けられた団地を抜けると目の前には千葉を代表するある巨大チェーンストアが。
かつてはダイエーしかなかった千葉ニュータウン中央も今ではこのイオンモール(当時はジャスコ)とジョイフル本田が双璧をなすショッピングゾーンとして君臨します。
便利ですね。みなさん晩御飯の時間ということもあってか、歩いている人も多数見受けられました。車もいますが、大きな駐車場と広い道路なので便利だろうな。
そういえば松本のイオンは城下町故に道は狭いし大変でした。街としての長い歴史がないかわりにニュータウンは現代の生活を送る上でストレスのたまりにくい合理的な設計がなされていると分かります。
すっかり辺りが暗くなったところで帰るとしますか。
なぜか駅前のショッピングモールアルカザール(80年代のセンスを感じます)にてお好み焼きを食べて帰りました。お好みはどこで食べてもうまいのだ、なんて。
千里ニュータウンはコナモン屋あったけか?そういえばアルカザールと似たよーな古いショッピングモール、千里セルシーは建て替え工事してたな……。
あ、ちなみにアルカザールにはデカデカと看板を出す書道教室や学習塾の幟、お好み焼き屋の信楽焼の狸がフツーにあって世界観ぶち壊しなのですが、ある程度世界観の守られている広場にブレーメンの音楽隊のオブジェが置いてあります。
しかしこれも斜めから見ると鳥だけ壁に磔状態で宙に浮いてました。一羽だけ仲間外れでかわいそう。
なんというか、このふわふわした外国のイメージだったり、ボンヤリした近未来感が詰まっているのでニュータウンって面白いんですよね。
未来に向けた漠然とした期待感やワクワク感というものは時代とともに色褪せていくんですけど、その名残のようなものが訪れた人の心に伝わる、といいますか。
ニュータウン見聞も悪くないですね。ミツメの曲もよかったら聞いてみてください。
時には君を知りすぎたつもりなのにー……。
(島鉄)